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犬神

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第四章

「住吉さんの方に行って明後日はね」
「明後日は何処ですか?」
「大阪の何処に行くんですか?」
「それで」
「都島、ここを案内するわ」
 自分達が住んでいるそこをというのだ。
「そうするわ」
「都島ですか」
「ここをですか」
「案内してくれますか」
「ここも面白い場所だから」
 それでというのだ。
「案内させてもらうわね」
「わかりました」
「じゃあ宜しくお願いします」
「そうさせてもらいます」
 三人は進次郎の妻に笑顔で応えた、進次郎はそんな彼女達を暖かい笑顔で見ていて三人を受け入れてよかったと思っていた。だが。
 ふとだ、思い出したことがあって妻に言った。その思い出したことはというと。
「都島っていうとうちの近所もだよな」
「ええ、案内するけれど」
「あの神社も案内するのか?」
「ええ、そのつもりよ」
「あの神社は早くないか?」
 妻に怪訝な顔になって言った。
「ちょっとな」
「この娘達にお参りしてもらうには」
「ああ、三人共まだ高校生だしな」
 それでというのだ。
「速くないか?」
「そうでもないでしょ」
 妻は夫にあっさりと返した。
「別に」
「そうか」
「今からお参りしてもらってもね」
「あの」
 二人のやり取りを聞いてだ、静流は進次郎に怪訝な顔になって尋ねた。
「その神社に何かありますか?」
「いや、そこ犬神の神社でね」
「犬神、ですか」
「ああ、あの犬神じゃないよ」
 高知の祟り神としての犬神ではないことはだ、進次郎は静流に話した。
「別にね」
「そうですか」
「あれは蟲毒じゃない」
「呪術で出来たものですからね」
「そっちの犬神じゃなくてね」
「文字通りの犬神ですか」
「そう、犬の神様を祀ってるんだ」
 そうした神社だというのだ。
「そうなんだ」
「そうですか」
「それでどんな神様ですか?」
 今度は陽向が叔父に尋ねた。
「一体」
「多産の神様なんだ」
「多産の?」
「そう、多産のね」
 それを司る神であるとだ、進次郎は陽向に話した。
「その神様なんだ」
「そうなんですか」
「ふうん、多産ね」 
 最後に愛が言った。
「じゃああたし達がお参りしたら」
「そう、子沢山になるかも知れないけれど」
「いいことじゃない」
 愛は叔父の怪訝な顔での言葉に笑って返した。
「それって」
「ええ、少子化が問題になってるし」
「いい神様じゃない」
 静流と陽向は自分達の妹の言葉に頷いて応えた。 
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