一つ目小僧
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第六章
それでだ、未佳はそのあかりの家に行く途中で彼女に言った。
「本当にいたらね、一つ目小僧」
「うん」
あかりも頷いて応えた。
「そうだったわね、そしてね」
「いや、まさかね」
「ラップやってるなんて」
「しかも住職さんと一緒にね」
「お経をそれで詠うなんて」
「踊りながらね」
こちらも当然ラップのものだ。
「いや、まさかね」
「そんなことしてるなんてね」
「私も想像してなかったわ」
「私もよ」
「まさにね」
「事実はよね」
「小説よりもね」
まさにというのだ。
「奇よね」
「本当にね」
「そうだよな」
未佳の兄も言ってきた。
「俺もな」
「全部見てね」
「それで、ですね」
「そう思ったよ」
二人と同じことをというのだ。
「本当にな」
「ええ、何ていうかね」
未佳は兄の話を聞いてまた言った。
「妖怪がいるだけでも凄いのに」
「さらに凄いことがあったな」
「そうよね」
「私この日のこと忘れないわ」
あかりはしみじみとした口調で言った。
「観たことをね」
「私もよ」
それはとだ、未佳も返した。
「本当にね」
「というか忘れられないわよね」
「ええ」
実際にと言うのだった。
「このことはね」
「どうもね」
「俺もだ、凄いものを観たよ」
最後に未佳の兄が言った。
「今日はな」
「ええ、じゃあ今日はもうね」
「家に帰ってな」
「寝ましょう」
「ああ、ただな」
「ただ?」
「チョコレート一枚な」
これだけだとだ、兄は妹に言った。
「今日の分は」
「それでいいっていうの」
「ああ、それだけだ」
今夜付き合ったことの謝礼はというのだ。
「それだけでいいからな」
「じゃあ明日買って渡すから」
「それでな」
二人で話してだ、そしてだった。
未佳もその兄と共に家に帰った、それで休んだのだった。
一つ目小僧 完
2018・3・28
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