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NEIGHBOR EATER

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EATING 7

殲滅戦が終了したと聞いて俺は拠点に戻ろうとしていた。

ネイバーの侵略は食い止める事が出来た。

しかし街は破壊され各所で煙が昇っている。

ビルは倒れ、家は崩れ、橋は落ち、アスファルトは抉れ…

まるで映画だ…

この三門市防衛戦…自らも参加したのにも関わらず、何処か実感が無かった。

これからこの街はどうなるのだろうか?

まぁ、どうでもいいか…

誰とも関わらない日常<平和な日々>を送れれば…それで…

そんなことを考えつつ、飛翔していると拠点に着いた。

「忍田さん!」

「む…翼君か…」

声をかけたら一瞬顔をしかめられた、昨日のことを気にしてるみたいだ。

「………」

「………」

「………」

「………」

無言で見つめ合ってると誰かが口を開いた。

「忍田さんってロリコンなの?」

「断じて違う!」

忍田さんが一喝したのは少女だった。

さっき迅と一緒に居た人だ。

「そうなの?迅やレイジさんが言ってたんだけど…」

「ほう?………ちょっと行ってくる…」

青筋と井形を浮かべた忍田さんが何処かへ歩いていった。

「おはよう、天使ちゃん…」

「貴女は?」

「私は小波桐絵」

この人はとても無邪気な感じがした。

俺よりも年上だけど俺よりも純粋だと思った。

「……刹那翼」

だから、名前を教えてもいいと思えた。

「翼っていうの?」

コクコク

「……」

「……」

「……」

「やぁん!可愛い!」

「わぷっ!」

いきなり抱き付かれた。

「むー!むー!」

「ふふん、暴れたって無駄よ~」

目線を合わせようと浮遊してたのが仇になった…

「むー!」

仕方がないので小波ごと浮く。

「あ、ちょっ、こらっ!」

思わず小波が手を放した。

近くに林道さんがいたので後ろに隠れた。

「ん?いきなりどうしたんだ翼?」

「むっふっふ~、逃がさないわよ翼」

「林道さんアレなんとかして」

と言って手をワキワキさせてる小波を指差す。

「そこを退いて林道さん!翼愛でれない!」

「あぁ…うん…小波、少し落ち着こうか」

「嫌よ、私は翼を愛でたいの」

「うーむ…翼?」

ふるふる

林道さんがこちらを向いたので首を横に振った。

「なんでだ?」

「いきなり抱き付いてきた」

すると林道さんは数秒考え

「二人ともこっち来い」

林道さんに連れられた所はパソコンやその他の機械類が置いてあるテントだった。

界境防衛機関臨時後方支援室とある。

「小波、そこに座れ」

そう言って林道さんは小波をパイプ椅子座らせた。

これから説教か、ざまぁ

なんて思っていたら林道さんに抱えられて…

「ふぇ?」

小波の膝の上に置かれた。

「小波、翼はいきなり抱き付かれたのが嫌らしい…そういう訳だ。
じゃぁな。あ、限度は守れよ」

そう言って林道さんはテントから出ていった…

は?

そして後ろから小波に抱きしめられた。

小波はご機嫌だ。

なんか納得がいかない。

「……」ニコニコ

「……」ムスー

「……」ニコニコ

「……」ムスー

「……」ぽふぽふ

「!」

「……」ナデナデ

「~~」ニコニコ

あ…そこ…もっとなでて…

「小波と天使ちゃんいるかー?」

何故かボロボロになった迅が入って来た。

「ほー?天使ちゃんを手懐けるとはやるね」

「……」フイッ

手懐けるって…俺は猫かよ…

「ありゃりゃ、邪魔しちゃったな」

「そうよ、やっと翼がなついてくれたのに」

「俺は猫じゃない」

「……」ナデナデ

「うにぃ…」

「猫だな」

「猫ね」

「はっ!」

「………」ニヤニヤ

「………」ニコニコ

「………」ムスー

「………」ニヤニヤ

「………」イラッ

ムカついたので迅に一発かます事にした。

掌を迅に向け、少しだけ力を集める。

「わー!待て待て天使ちゃん!悪かったからその手を下げてくれ!」

力を霧散させたる。

「で、何の用だ迅?」

「城戸さんが召集をかけた、いくぞ」

「わかったわ」

その言葉には小波が先に応えた。

「出来れば翼も来てくれ」

「わかった」

あ、そういえば

「迅はなんでそんなにボロボロなの?」

と、聞くと

「あぁ…忍田さんと少しな」

「あっそ」

俺と小波は迅に連いて行った。

ボーダーの隊員が集まっていた。

「諸君、此度の三門市防衛戦ご苦労だった。
諸君らの健闘によりネイバーを撃退、街は救われた。
しかし街の被害は莫大な物だ。
諸君には済まないが今後の復興作業にも尽力して欲しい。
とは言え疲れているだろう。
今日はゆっくり休んで欲しい。
以上だ」

先と変わらない業務口調の激励が終わり、隊員がそれぞれのテントに入って行った。

「翼、ちょっと来てくれ」

林道さんに呼び止められた。

「………………何?」

「怒るなよ…小波を怒らせたら面倒臭いんだ…」

と弁明する林道さん。

「ふーん、林道さんは保身の為に子供を差し出す大人なんだね」

と言うと…

「………」ズーン…

すげー凹んだ。

「ん?どしたの林道さん?」

「あ、迅」

迅がこっちに来た。

「過労ですか?林道さんは上の人間なんですからちゃんと休養も取ってください」

「ちがうんだ…おれはさいあくなおとななんだ…おれは…はぁ…」

「え~っと…天使ちゃん?何があったんだ?」

何…

「さっき小波に差し出された事について抗議した」

「あ、そう………林道さんはほっとこう、城戸さんが呼んでたぞ」

「そう、城戸さんは昨日のテント?」

「昨日の?…まぁ、同じ所に居るのは確かだろう。あと林道さんもお前を呼びに来たんだと思うぞ」

「わかった」

そして俺は迅に付き添ってもらって城戸さんの所へ行った。

「失礼します。迅悠一、刹那翼を連れて来ました」

「入りたまえ」

中には城戸さんと忍田さんが居た。

「迅は下がれ」

と忍田さんが言って迅が出て行った。

「刹那くん、今回の防衛戦で君は多大な尽力を果たした。我々はこれに酬いたい」

と、城戸さんに昨日よりも感情のある声色で言われた。

そして、これに対する俺の答えは

「なら…俺をボーダーに入れてくれ」

「いいだろう」

「城戸さん!いいのか翼君?ボーダーに入ると言うのは昨日今日のような事に自ら介入するという事なんだぞ!」

上等、俺はトリオン器官を喰いたい。

その為にはボーダーに入るのが一番だ、それに…

「俺に鈴を着けたいんでしょ?て言うかこの問答の結論自体、城戸さんには解ってたんでしょう?」

「賢いな…そうだな、君のブラックトリガーは貴重な戦力だ。それに、もしも君が我々の敵になったならば我々は君の前に敗れるだろう」

「そう、解った。他には?」

「今回の件で君に論功行賞を与えたい…親御さんはどちらかね?」

親?

「親は居ないよ、親の顔なんて知らない」

「な!?」

「それは悪い事を聞いた、保護者の方は?」

保護者ねぇ…今回の件で死んでくれてればいいけど…

「身分上の保護者なら。でもボーダーに入るなら家を出るし、今回の件で死んでくれてれば有り難いね」

「翼君、そんな事を言うものじゃない!」

「あっちも俺の事を鬱陶しがってたし、どうせ金目当ての遠い親戚さ」

俺が居ない所で俺を手放す算段を着けてるような連中だ、消えてくれた方がいい。

「いいだろう、もし君の保護者が存命の場合我々があらゆる力を持って君の親権を放棄させる」

「有り難うございます城戸さん」

「私からは以上だ」

そう、言って城戸さんは忍田さんを見た。

「私からも無い、少し城戸さんと話がしたいから翼君は退出してくれ」

「わかりました」

俺は言われた通りにテントから出た。

入り口の脇に迅が居た。

「盗み聞きはよくないぞ迅」
 
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