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真田十勇士

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巻ノ百三十 三日その四

「夜討ちはです」
「まだか」
「禄に知りませぬ故」
「それでは拙者と共にいてな」
「そうしてですな」
「見ていてもらう」 
 その夜討ちの様子をというのだ。
「そうしてもらう」
「さすれば」
「何、夜討ちはコツがあってな」
「コツですか」
「左様、そのコツを承知してもらいたい」
 治房、彼にというのだ。
「そして手柄を立ててもらいます」
「そうすればいいのですか」
「左様」
 その通りという返事だった。
「それならばな」
「それでは」
「うむ、今宵出ようぞ」
 塙がこう治房に言ったところでだ、十勇士達が彼のところに来た。そうして皆片膝を着いて彼に言った。
「今宵宜しくお願い申す」
「殿の命で来ました」
「塙殿と主馬殿おお助けせよと」
「その様に言われてきました」
「貴殿等が来られるとは有り難い」
 塙は彼等の姿を見て笑みを浮かべて言った。
「一騎当千の者揃いであるからな」
「有り難きお言葉、ではです」
「我等それぞれ千人の働きをしてみせまする」
「そして勝ちましょうぞ」
「この度も」
「必ずな、そしてじゃ」
 さらに言う塙だった。
「戦の流れをさらに固めようぞ」
「もう外にうって出てもいいと思いまするが」
 ここで治房が言ってきた。
「しかしです、兄上が」
「茶々様をじゃな」
「どうにも説得出来ず」
「それがしが思うに」
 塙も難しい顔で治房に答えた。
「修理殿は確かに見事な方、しかしな」
「茶々様にはですな」
「弱いのではないか」
 こう言うのだった。
「思うにな」
「はい、実は前からです」
 彼の弟としての言葉だ。
「兄上はです」
「茶々様にはじゃな」
「どうしてもです」
「言えぬのじゃな」
「逆に茶々様のお言葉はです」
 それが例えどうしたものでもというのだ。
「聞いてしまいまする」
「忠義の心がお強いな」
 茶々へのそれがというのだ。
「修理殿は」
「しかしその忠義が強過ぎて悪く出ることもありまして」
 それでというのだ。
「今の様にもです」
「なってしまうか」
「前より」
 これまでもというのだ。
「そうでしたが」
「今は危ういな」
 塙は治房の話から言った。
「実に」
「そう思われますか、塙殿も」
「うむ、戦の時はな」
「そうしたことがよりですな」
「出るもの、しかもそれが右大臣様でなくな」
「茶々様に対してとなると」
「危うい」
 実にという返事だった。 
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