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真田十勇士

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巻ノ百三十 三日その二

「必ずや勝って参りましょう」
「そうして頂けますか」
「それがし嘘は申しませぬ」
 絶対にという返事だった。
「ですから」
「それでは」
「はい、勝ちを手に入れてきます」
「わかり申した、では主馬よ」
 大野は次弟の治房にも顔緒を向けて彼にも言った。
「お主もな」
「その夜討ちにですな」
「共に行け、そしてじゃ」
「塙殿と共にですな」
「勝ち鬨を挙げて来るのじゃ」
「わかりもうした」
 確かな声でだ、治房も頷いた。こううしてだった。
 再び攻めることが決まった、後藤はそのすぐ後で大野に言った。
「修理殿、勝ち鬨のすぐ後にでも」
「茶々様にじゃな」
「お話して下されますか」
「わかっておりまする」
 大野は後藤に確かな顔で答えた。
「そのうえで」
「お願い申す」
「遅くとも明日には」
「そうしてです」
「すぐにうって出て」
「そして戦いましょうぞ」
「ですな、どうもです」
 大野も敵の動きを察していて言う。
「敵は大砲を持ち出して来て」
「それで攻めるつもりです」
「そうされては」
 とてもとだ、大野も言う。
「この城は陥ちずとも」
「城の者達が参ってしまいまする」
 その砲撃の音でというのだ。
「ですから」
「特に茶々様が」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「その前にです」
「城を囲む敵を退ける」
「そうせねばなりません」
「全くです、では」
「ここは」 
 こう話してだ、そのうえでだった。
 早速夜討ちの用意が進められた、ここで幸村は夜討ちを行う塙と治房に対して直接言った。
「この度もです」
「貴殿の家臣の十勇士をですか」
「向けて下さいますか」
「そうしましょうか」
 こう申し出たのだった。
「どうでしょうか」
「お願い出来ますか」
 塙がすぐに答えた。
「その様に」
「それでは」
「はい、そして」
 さらに話す幸村だった。
「思う存分活躍して下さい」
「それは必ず」
 塙も幸村に約束した。
「果たします」
「それでは」
「そしてですな」
「はい、さらにです」
 幸村の言葉は続いた。
「生きてお帰り下さい」
「夜討ちで命を落とさぬ」
「真の戦はそれからです」
「夜討ちを果たしてですな」
「外に出た時に」
 まさにというのだ。
「はじまりますので」
「この度の夜討ちはですな」
「はじめるきっかけです」
 それに過ぎないからだというのだ。 
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