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NEIGHBOR EATER

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EATING 3

<死>を狩り初めて半日が過ぎただろうか?

俺は翼と武器を手に入れた。

何処までも翔べる翼。

全てを貫く武器。

この二つを使い<死>を蹂躙する。

誰も彼もが逃げ惑っている。

「勿体無い、少し頑張れば殺せるのに」

そうすれば、板を奪えるのに。

そうすれば、気持ち良くなれるのに。

ふと下を見ると、一組の男女が逃げているのが視えた。

女が男の手を引っ張っている、姉と弟だろうか。

その後ろには巨体の<死>。

男の方が瓦礫に躓いた。

女が男の前に出て、大の字で庇う。

その姿はとても勇敢で、儚くて、美しかった。

あの女は殺されるのか、捕まるのか…

そう考えると、何故か胸が締め付けられた。

女に巨体の<死>が迫る。

胸が苦しい、もやもやする。

巨体の<死>が口をあける。

「ああ!もう!」

気付けば、巨体の<死>に向かって、珠を放っていた。

数百メートルの高度から光が落ちて行った。

珠は巨体の<死>の頭ごと眼を貫き、巨体の<死>は動きを止めた。

板を奪うべく、地上に降り立つ。

「貴女が助けてくれたの?」

女に聞かれた

「だったら何?そこに居ると邪魔」

女が離れたので巨体の<死>を解体する。

「そ、そのっ、弟と私を助けて頂きありがとうございます!」

女と弟が頭を下げていた。

「あっそ、早く逃げたら?」

「ほ、本当にありがとうございました!」

「………ねぇ、そこの女の人」

「は、はい!」

「さっきさ、そこの男の人を庇ってたけどさ」

解体しながら、続けた。

「もしもアンタが死んでたら、そこの男の人はどう思っただろうね」

女が息を飲んだ。

「ほら、早く行きなよ」

女と男は走っていった。

「でさぁ、さっきからそこで隠れてるクズ、出てきなよ」

上から視えていた。

「クズとは酷いね、天使ちゃん」

出てきたのは頭にバイザーを乗せた若い男だった。

「はぁ?何言ってんの?さっきの一幕を傍観してた時点でクズでしょ?その腰の剣は飾り?」

このクズが敵か味方かは解らない。

とりあえず手を向ける。

「一つ聞くぞクズ、お前…いや、お前等は何だ?」

「…………」

沈黙か…

キュゥゥゥゥン…

「わぁ!待て待て!話す!話すから撃つな!」

バシュォォォォォォ!

「うお!?」

男が剣を抜こうとするが…

「避けるな!」

珠は男の頬を掠り後ろへ飛んで行き

ズゥン…

光の<死>を貫いた。

「俺はこの<死>を狩る、お前達は<死>の仲間か?<死>を狩る者か?」

クズは一拍置いて返答した。

「俺達はボーダー、ネイバー…君が<死>と呼ぶ者を倒す為に来た」

「なら味方か?」

「ああ、勿論だ」

ところで

「さっき<死>事を何て言った?お前達はコイツらを知っているのか?」

「<死>か…天使ちゃんはなかなかに詩的だね」

コイツむかつくな…

「ふざけてないで答えろクズ!」

「はいはい、コイツらはネイバー。異世界からこの世界を侵略しに来た者達だ」

ネイバー…侵略…

怪しいけど、別にどうでもいい。

「あっそ、ありがと、クズ」

「俺の名前は迅悠一だ」

「そ、ありがと、迅」

「呼び捨てかよ…」

迅は頭を掻いた

「クズなんて呼び捨てで十分だ」

「はぁ…そうかい」

巨体の<死>……いやネイバーを解体すると板が出てきた。

「迅、喰うか?」

「は?何を?」

ん?喰わないのか?

「喰わないなら貰うぞ」

そう言って板を喰う

「あ、あ、お、お前!何してるんだ!?」

は?

「見てわかんない?喰ってるのさ」

二つ目を喰おうとしたら迅に腕を掴まれた。

「何さ?」

「お前、それが何か解ってるのか?」

コレ?

「さぁ?でも人間から取り出した何かってのは解るよ。さっきから<死>……ネイバーを解体したら胸に穴が空いた死体が出てきたし」

「今までも食べてたのか?」

「うん、食べたら力湧いてくるんだ。迅も喰うか?」

迅の眼には動揺が走っていた。

「いや、いい、少し、席を外す」

「あっそ、戻って来るの?」

「あ、ああ」

迅は少し離れて耳の機械をいじっている。

やがて板を喰った俺は翔び上がった。

迅は戻って来ると言ったので直上に翔ぶ。

「へぇ…アレが迅の仲間かな?」

遠くでネイバーを狩る集団が見えた。

日本刀みたいな武器や銃器、掌から出る玉で攻撃していた。

「へぇ、面白いなぁ」

眼に入ったのは掌から沢山の玉をだす迅の仲間…ボーダー

「やってみよ」

掌を天に向け力を集める。

やがてサッカーボール大になった。

「行け」

群がっていたネイバーに向け分割して放つ。

ズドドドドドドドドドォォォォン!

「あはは!コレいいね!」

side out








side JIN

俺の目の前の少女、差し出された光る板。

それは命の源で人なら誰しも持っている物。

奪われれば、命を落とす物。

そして、それを知っていて喰らう少女。

「いや、いい、少し、席を外す」

俺は猛烈な吐き気に襲われた、トリオン体でなければ嘔吐していただろう。
「あっそ、戻って来るの?」


「あ、ああ」

咄嗟に返事をしたが、正直戻って来たくない。

「ああ、忍田さんに報告しないと」

俺は気を紛らせるため、忍田さんに連絡を取った。

「忍田さん?迅です」

「『どうした?接触できたか?』」

「はい、彼女は味方です。ただ…」

「『ただ、どうした?』」

「彼女、トリオン器官を喰ってたんです」

「『………続けろ』」

「彼女はトリオン器官が人間から抜かれた物と理解しているようでした」

考えられるのは、ブラックトリガーの影響だが…

「『彼女は今何処に?』」

後ろを振り向く……居ない!?

見上げると、居た。

虹色の髪を靡かせ、その翼で空を翔る、

美しく舞う天使だ。

「今は俺の真上です」

「『そうか。ではお前は彼女を監視しろ』」

「……………了解」

彼女が掌を天に掲げた。

光が集まって行く。

そして幾条もの光が何処かへ放たれた。

ズドドドドドドドドドォォォォン!

「『何だ!何が起こった!?』」

アレは…

「バイパー……」

今のは確かにバイパーだ。

「彼女が放った攻撃です、そちらからも見えたでしょう?」

「『なんて事だ…』」

彼女がこちらを向いた。

彼女はとても嬉しそうに笑っていた。

やがて彼女が降りて来た。

「迅?話は終わった?」

「『彼女か?』」

「『はい、聴覚繋げます』」

内部通信をしながら会話を進める。

「いや、未だだ」

「誰と?」

「俺の上司さ」

「ふぅん……俺の事?」

「あ、ああ」

バレている、どうしようか?

「どーせ俺の事を監視しろとかでしょ」

背中冷たいものが流れた。

「好きにしなよ、上司にもそう言って」

彼女は全てを見透したようにいった

「だ、そうですよ」

「『罠だと思うか?』」

「『彼女がその気なら既に殺られてます』」

「『彼女を監視しろ、以上だ』」

通信が切れた。

「上司から天使ちゃんの監視をしろと言われたよ」

「あっそ…迅達は翔べるの?」

「無理だ」

「じゃぁ道路だね」

彼女はそう言うと、俺の目線位の高さに浮き、進み始めた。

「置いてくよ」

「あ、ああ」

今はとりあえず彼女に付いて行こう。
 
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