儚き想い、されど永遠の想い
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93部分:第八話 進むだけその十
第八話 進むだけその十
「一緒なのですね」
「はい、それだけで成り立つものではないのです」
「世界にはならない」
「森もまた。それに」
「それに?」
「人もそうだと思います」
彼等もだ。そうだというのだ。
「私は私だけで私にはならないです」
「八条さんには」
「他の多くの方々がおられてこその私なのです」
真理を見て。その目を見ての言葉だった。
「私が私になるのはです」
「御一人によってではなく」
「はい、多くの方の世界と共にあり」
「八条さんの世界ができているのですか」
「それは白杜さんも同じではないでしょうか」
「そうですね」
真理はだ。義正のその言葉に頷いた。これまでの話でだ。すぐに頷くことができるようになっていた。そうして実際に頷いたのである。
「私もまた」
「そういうことなのでしょう。何もかもがです」
「一つでは成り立たない」
「多くのものが同時にあってこそです」
「その一つの世界が成り立つ」
こう話してであった。
「そういうものだと思います」
「そうですね」
「はい、そうです」
また話す義正だった。
「私はそう考えるようになったのです」
「なったといいますと」
「最初は違うと思っていました」
そうだったとだ。義正はさらに話す。
「ただ」
「ただ?」
「それが変わったのです」
義正はこう静かに話すのだった。真理に対してだ。
「変わったのです」
「変わられたのですか」
「多くの人と交わり。そうしているうちに」
「そうですか」
「はい、変わりました」
笑顔で話す義正だった。それをだ。
そうしてだ。ここでまた海を見る。そのうえでの言葉だった。
「多くの人、素晴らしい人達と出会い」
「御自身だけではないとわかられたのですね」
「そうでした」
こう真理に話していく。
「私一人だけでは生きていないのです」
「では私も」
「そうだと思います」
義正は真理にもこう話した。
「貴女もまた。御一人だけではありません」
「そうですね。私もまた」
「一人ではなくです」
「多くの方と共にですね」
「そうです。そしてです」
「そして?」
「そのはじまりはです」
はじまりはどうか。話はそこにも至った。
「一ではなくです」
「一ではないのですか」
「二です」
それがはじまりだというのだ。
「人は一人ではないのですから」
「二人からはじまるのですね」
「そう考えます。はじまりは二なのです」
義正は己の考えを言葉にしてだ。真理に告げていく。
「一ではなくです」
「一人ではないからこそ」
「そう思います。人は二人からはじまるのです」
「それではですけれど」
「それでは?」
「それは」
真理は義正の顔を見ていた。義正も海から彼女にその顔を移していた。そうして見合いながらだ。そのうえでお互いに話すのだった。
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