地毛の金髪
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第一章
地毛の金髪
瓜割友美はアメリカ人の父の血で髪の毛は金髪である、アジア系の顔立ちであるが髪の毛の色はそうである。
このことは彼の二人の兄と弟も同じだ、だが。
友美はある時家族にこんなことを言った。
「昔染めてるのかって言われたのよね、髪の毛」
「いや、地毛だからな」
「そんなのすぐに言えるだろ」
二人の兄が友美にすぐに返した。
「もうな」
「何でもないだろ」
「そうだよ、お父さんが金髪だから」
弟も言ってきた。
「もうすぐに言えるじゃない」
「その時も言ったけれど」
友美は兄弟達に憮然とした顔で返した。
「先生がそう言うのよ」
「よくある話だよな」
上の兄がこう友美に言った。
「それ」
「そう、御前染めてるのかって言われて」
「違いますって言ったよな」
「地毛です、って。けれどね」
「信じなかったんだな」
「そう、嘘吐けって言われたわ」
「そんな馬鹿教師いるよな」
今度は下の兄が言ってきた。
「本当に」
「それでその先生にちゃんと言ったのよ」
「それで納得したか?その馬鹿教師」
「まあね」
友美は下の兄にも答えた。
「一応ね、けれどそいつそこで私に変に目をつけて」
「何かあれば言われたか」
「そう、今思い出しても腹立つわ」
「それ僕の知ってる先生?」
弟はこう姉に問うた。
「僕達中学は同じだけれど」
「ああ、私が三年の時に転勤したから」
「いないんだ」
「あんたが入学した時はね」
「そうなんだ」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「どうせ転勤先でも同じことしてるわよ」
ここでこうも言った友美だった。
「若し地毛で金髪とか茶髪の娘がいたら」
「同じこと言ってたの」
「相当に頭悪い奴だったから」
「学校の先生でもなんだ」
「だから今話に出ただろ」
「学校の先生でも馬鹿な奴は馬鹿なんだよ」
兄達は自分達の中では末っ子である弟に二人同時に言った。
「学校の成績とか仕事で賢いとは限らないんだよ」
「むしろ学校の先生は世間知らないから他の仕事よりむしろだよ」
「そうなんだね」
「そうだよ、覚えておけよ」
「学校の先生でも馬鹿は馬鹿だぞ」
「だからよ」
友美も弟に言った。
「その先生どうせね」
「転勤先でもなんだ」
「言ってるわよ」
「ハーフの子でも染めてるのかとか」
「言ってるわよ、というか見てわからない?」
その金髪を触りつつだ、友美は今度は怒った顔になって言った。
「染めてるかどうか」
「染めてるのってあるよな」
「ああ、独特の感じがな」
兄達はお互いの金髪を見つつ話した。
「ツヤとかあってな」
「ムラとかもなくてな」
染めていない部分もないというのだ、染めると相当にしないとどうしても地毛のままの部分が出てしまうのだ。
「それが出るよな」
「どうしても」
「そうでしょ、何でそれでね」
友美は怒った顔のままさらに言った。
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