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真田十勇士

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巻ノ百二十九 木村初陣その十

「拙者は最初から攻めたかったのじゃが」
「茶々様がそう言われたので」
「そのせいで、ですな」
「篭城になってしまいましたな」
「今の様に」
「今の篭城は下の下であった」
 幸村は苦い顔で言った。
「それはしてならなかった」
「全くですな」
「今の状況は」
「しかしそれをどうするか」
「それが大事ですな」
「そうじゃ、後藤殿や木村殿、長曾我部殿と軍議を開いてな」
 そうしてというのだ。
「何とかじゃ」
「茶々殿を皆で説得し」
「そうして」
「一気にですな」
「状況を変えますな」
「そうする、そうして勝つ」
 まさにというのだ。
「必ずな、ではな」
「はい、宜しくお願いします」
「殿には」
「そしてそのうえで」
「我等も」
「その時にまた頼むぞ」
 幸村は笑って十勇士達に言った、彼はこの日の勝ちから一気に流れを変えようとしていた。しかしだった。
 家康は旗本からの報告を聞いてだ、確かな声で笑って言った。
「よし、ではな」
「大砲達が着き次第ですな」
「その時にですな」
「一気に攻める」
「そうしますな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「そしてじゃ」
「砲撃ですな」
「それですな」
「それを仕掛け」
「そのうえで」
「戦に勝つ」
 そうするというのだ。
「よいな」
「一気に攻めるといっても大砲ですな」
「あれを派手に撃ちまくりますか」
「昼も夜も」
「そうしますか」
「そうじゃ、そうして攻める」
 ここは笑って言った家康だった。
「そうした攻め方もあるのを見せよう」
「大砲といえばです」
 傍に立っていた大久保が家康に言ってきた、見事な朱槍を立てて持っている。
「国崩しといいますな」
「国、つまり城を撃ってな」
「城の壁だの石垣だの櫓だのを壊しますが」
「それを狙うがな」
「しかしですな」
「今はじゃ」
「心を撃つのですな」
「そうじゃ、あの城はそうそう撃っても攻め落とせぬわ」
 その大坂城を見ての言葉だ。
「あの堀と壁を見よ」
「見ただけで」
 大久保も大坂城を見て言う。
「そうそうは」
「そうじゃな、だからな」
「大砲も役には立たぬ」
「城自体を攻めるにはな」
「だからそれには最初から使わぬ」
「心をですな」
「それを攻めるのじゃ」
 その大砲でというのだ。 
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