儚き想い、されど永遠の想い
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78部分:第七話 二人きりでその八
第七話 二人きりでその八
「御願いします」
「わかりました。それでは」
「はい、それでは」
こうしてだ。彼女もその珈琲にするのだった。まだ二人の傍にいたマスターに注文する。すると程なくしてであった。
もう一つ珈琲が来た。それが自分の前に置かれ黒い珈琲から白い湯気が出ているのを見ながらだ。彼女は微笑んで義正に言った。
「あらためてですけれど」
「音楽ですね」
「ここは音楽を聴くお店なのですね」
「はい、珈琲や紅茶を飲みながら」
そうする店だとだ。義正も微笑んで話す。
「そうするお店です」
「そうですか。やっぱりそうなんですね」
「そうです。それでなのですが」
義正は少しずつ自分のリードに戻してだ。真理に話す。
「先程の曲ですが」
「フィガロの結婚のですね」
「はい、序曲です」
その曲の話に戻った。先程の話の仕切りなおしだった。
「その序曲ですが」
「こう言う表現は大袈裟でしょうが」
真理は前置きの後でだ。曲について話した。
「モーツァルトの曲はああした感じですよね」
「多くの曲がそうです」
その通りだと答える義正だった。
「ああした感じです」
「天使の調べでしょうか」
そんな感じだとだ。真理は話した。
「そうした曲ですね」
「そうですね。モーツァルトはそんな感じですね」
「聴いていると心が弾んで」
真理はだ。聴いていてそう感じたのである。
「明るくなります」
「私もです」
義正もそうだというのだった。
「そう感じます」
「モーツァルトはいいものですね」
「はい。墺太利の音楽家でして」
「あの古い国ですね」
真理は墺太利についてはそう聞いていた。欧州の中では古い国だとだ。
「音楽の国だとか」
「モーツァルトがその代表です」
「彼こそがなのですか」
「モーツァルトが墺太利をそうしたと言うべきでしょうか」
音楽の国にだ。したというのである。
「そうした音楽家です」
「あの音楽で」
「はい。大きく言えば独逸の音楽です」
墺太利と独逸、言葉が同じこの二国をおおまかに文化圏で分類してであった。彼は言った。
「独逸の音楽です」
「独逸のですか」
「独逸の音楽は他にもあります」
義正は微笑んで話す。
「シューベルトもありますが」
「シューベルト?」
「そうです、シューベルトです」
「その作曲家は」
「御存知ありませんか」
「名前だけは聞いたことがあります」
真理が知っているのはだ。それだけだというのだ。彼についてはだ。
「ですが聴いたことは」
「ありませんか」
「残念ですが」
そうだというのである。真理はだ。
「その音楽家の音楽は」
「独逸を代表する音楽家の一人でして」
「独逸ですか」
「はい、モーツァルトとはまた違う国です」
ここでは墺太利と独逸を分けて話す義正だった。
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