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スウィートトラップ

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第一章

                スウィートトラップ
 文ノ里麻里子は酒が好きだ、その酒は甘い酒が好きでだ。
 この麻里子は大学の友人達と一緒に千日前のある食べ放題飲み放題のある居酒屋で飲んでいた。その時にだ。
 麻里子は甘い酒、カシスオレンジ等を頼んで飲んでいた。友人達はその麻里子に対して笑って話した。
「麻里子ちゃん本当に甘いお酒好きよね」
「さっきはカルーアミルク飲んでたし」
「今度はカシスオレンジだし」
「本当に甘いお酒好きよね」
「ええ、というか甘くないと飲めないの」
 麻里子は友人達に笑って話した、肴にしているのはししゃもだがそれでも飲んでいる酒は甘いものだった。
「私はね」
「だからなの」
「甘いお酒しか飲まないのね」
「カシスオレンジにしてもカルーアミルクにしても」
「そういうの飲んで」
「それでなのね」
「そう、これを飲んで」
 ここで麻里子はカシスオレンジを飲み終えた、そうしてだった。
 店員に今度はファジーネーブルを頼んだ、そしてその酒を飲んでまた友人達に言った。
「楽しんでるの、逆にビールとかウヰスキーはね」
「飲めないのね」
「そうしたお酒は」
「苦いのとかは」
「どうしてもなの」
「そうなのよね、もう甘くないと」
 そのジュースの様な酒をのみつつ話した。
「駄目なのよ」
「ううん、好みにしてもね」
「麻里子ちゃんはちょっと極端?」
「飲んでるお酒全部甘いし」
「殆どジュースじゃない」
「そうそう、ファジーネーブルにしても」
 麻里子が飲んでいる酒はというのだ。そしてだった。
 友人達はそれぞれの酒を飲みつつだ。麻里子にこうも言った。見れば肴もそれぞれでめいめい好きなものを食べている。
「甘いしね」
「甘いお酒だけっていうのも」
「ちょっと極端?」
「まあ一種類のお酒しか飲めない人もいるしね」
「焼酎だけ、ビールだけとかね」
「そう考えたら麻里子ちゃんは飲めるレパートリー多いかしら」
「そうかも知れないけれどとにかく私が飲めるお酒は」
 また言う麻里子だった。
「甘いお酒だけなの」
「じゃあワインも?」
「ワインも甘くないとアウトなの」
「そうなの」
「そう、ちょっとね」
 どうにもと言ってだ、そしてだった。
 麻里子はファジーネーブルの後はカルピスサワーを飲んだ、この日麻里子はかなりの酒を飲んだが全部甘い酒だった。それは家でも変わらず。
 柿の種を肴に澄みわたるぶどう酒や梅酒を飲んでいた、その麻里子に父親がどうかという顔になって言った。
「飲むなとは言わないけれどな」
「甘いお酒ばかりっていうのね」
「ああ、御前本当にそういうのばかり飲むな」
「というか飲めないの」
 まさにというのだ。
「苦いお酒とかは」
「ビールもか」
「そう、ビールはもうね」
 絶対にとだ、麻里子はロックにしているのでよく冷えている澄みわたる梅酒を飲みながらビールの缶を空けた父に答えた。
「それこそね」
「絶対に無理か」
「日本酒もね」
「日本酒はまだ甘いだろ」
「辛いのもあるじゃない」
 それでというのだ。
「だから飲めないの」
「それでそういうのばかり飲んでるんだな」
「駄目じゃないでしょ」
「酒は酒だ、まあビールも飲み過ぎるとな」
 父はテーブルでいつも自分が座っている席に座ってコップにビールを注ぎ込みつつ娘に話した。 
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