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レーヴァティン

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第四十六話 忍の者その十一

「あっちの世界じゃ結婚してるしな」
「そうだな」
「ああ、仲良くやってるぜ」
「家には帰ってるか」
「それは全然だけれどな」
 旅に出ているからだ、今はあちらの世界では新婚生活を楽しめるだけの余裕がないこともまた事実である。
「それでもな」
「仲はいいか」
「いい奥さんだよ」
 久志はこのことも話した。
「俺の奥さんもな」
「そうか」
「ああ、それでそいつもか」
「一時だ」
 まさに旅に出ている間だけだというのだ。
「別れているだけだ」
「そうなんだな」
「しかし勢力を築くとな」
「そうなると拠点を設ける必要があるからな」
「そこに奥さんを迎え入れてと考えている」
「それ俺もだよ」
「家庭もあってだな」
「それで何でもやっていけるもんだろうな」 
 久志は考える顔になって英雄に話した。
「人間ってものは」
「家があってだな」
「そうだよ」
 まさにそこからだというのだ。
「安心してな」
「ことも行えるか」
「結婚してわかったぜ」
 久志の今の言葉は神妙なものだった。
「本当にな」
「そういうものか」
「ああ、家庭があるとな」
「違うか」
「帰るところがあるってのはな」
「そして帰ると家族が待っている」
「それだけでな」
 些細な違いだ、社会から見れば一人が家庭を持つかどうかは。しかしその一人にとっては大きな違いだというのだ。
「もう全然違うぜ」
「そうなのか」
「しかも御前遊郭で遊んだな」
「三人と一度とな」
「すげえな」
 久志もこのことには唸った。
「御前豪の者だったんだな」
「色豪か」
「そうだったんだな、けれどな」
「色もか」
「奥さんがいるとな」
 つまりそちらの面でのパートナーもいると、というのだ。
「違うぜ」
「そうなのか」
「ああ、家に帰られるとな」
「その時はか」
「相手がいるんだからな」
 夜のそちらもだ。
「困らないぜ」
「そうしたものか」
「遊郭に行くこともなくなるぜ」
「所帯を持っていても行く奴はいると思うが」
「それはそれだよ」
 そうした者はというのだ。 
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