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儚き想い、されど永遠の想い

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64部分:第六話 幕開けその八


第六話 幕開けその八

 彼はだ。さらにこう言うのだった。
「大阪にコンサート会場を置けばです」
「何かあるのか」
「その町に置くと」
「まず神戸からコンサートに行けます」
 最初に挙げたのはこの町だった。彼等が今いるその町だ。
「そして京都線からです」
「大阪に行けますね」
「奈良からも。そして」
 さらにであった。彼等の路線計画はそれで終わりではなかった。
「和歌山からもです」
「そうだな。言われてみれば」
「それだとどの県からも」
「遠いですが三重や滋賀にも線路を敷きますし」
 関西全府県に路線を設ける。八条鉄道の計画はかなり遠大なものだった。その計画の為にだ。政治家や官僚達とも話をしているのだ。
「そういった場所からもです」
「大阪のコンサートに行ける」
「だからなんだね」
「はい、どうでしょうか」
 義正はあらためて兄達に尋ねた。
「こうしては」
「いいな、奈良よりもな」
「大阪の方が」
「多くの人がコンサート会場に入られます」
 また言う彼だった。
「大阪に置けば最もです」
「ひいては大阪が八条鉄道の中心地になるか」
「最大のターミナルになる」
 二人の兄はここでこのことにも気付いた。
「百貨店も置く」
「そしてその他のものも」
「鉄道はこれから日本の動脈になります」
 義正は言う。鉄道のその重要さもだ。
「大阪はその心臓になります」
「八条鉄道の」
「我が財閥の重要企業の」
 八条家は様々な事業に進出している。その中でだ。鉄道は彼等にとって最も重要な分野の一つにだ。既になっているのである。
 その鉄道の心臓にだ。大阪はなるということにだ。彼等は気付いたのだ。
 その話をしてだ。長兄の義愛はこう末弟に述べた。
「いい考えだ」
「ではそれで」
「いこう」
 末弟の提案を認めたのだった。
「奈良の人達も見られるしな」
「そして他の町の人達もです」
 それも踏まえての彼の提案だったのだ。
「ですから」
「いいことだ」
 こうした話をした。そしてだ。
 義智がだ。兄弟達に言ってきた。
「それでは今から」
「そうだな。コンサートだな」
「中に入りましょう」
「このままロビーにいるのも悪くはありませんが」
「ピアノを聴く為に来ているから」
 それでだとだ。三人で話してだった。
 彼等もまた会場に入った。そうしてであった。
 その演奏を聴く。演奏者は今名を挙げている若手の演奏家だった。その演奏を聴いてだ。
 義正はだ。満足してだ。こう兄達に話した。
「見事ですね」
「そうだな。曲もいいが」
「演奏も見事だよ」
 兄達も満足した顔で弟の言葉に頷く。
「来たかいがあった」
「本当に」
「ショパンですね」
 義正は演奏されている音楽家の名前も話した。
「そうでしたね」
「そう、ショパンだったな」
「波蘭の」
「確か」
 ここでだ。義正はふと言った。
 
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