儚き想い、されど永遠の想い
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
52部分:第五話 決意その五
第五話 決意その五
「和解を演出か」
「それでなのですが」
「乗るべきかな」
ここでまた言う義正だった。
「ここは」
「少なくとも開く方はそう思っています」
「首相の方はだね」
「はい、そうです。では」
「父さんや兄さん達はわからないけれど」
それでもだと。前置きしてからの今の言葉だった。
「僕は。出るよ」
「わかりました。それでは」
「出よう」
また話す。さらにだった。
「是非共ね」
「あの、くれぐれもですが」
佐藤はここでだ。忠告する顔になって主に述べた。
「それでもです」
「白杜家の人達とはだね」
「旦那様は大丈夫と思いますが」
「揉めごとは起こさない」
「そのことだけはです」
「わかっているよ」
義正も笑顔で答える。
「それはね」
「それならば」
「うん。ただ」
「ただ?」
「僕はいいとして」
心配な顔でだ。彼は言うのだった。
「あちらはどうかな」
「白杜家の方ですか」
「やはり。八条家に対して攻撃的な人もいるだろうね」
「はい、とりわけ当主の方が」
最も重要な、だ。彼がだというのだ。
「それと後継者の方も」
「そうなんだね」
「御二人はとりわけ八条家を目の敵にしています」
「参ったね。それじゃあ」
「それじゃあ?」
「ロミオとジュリエットだね」
この舞台のことをだ。ここでも話に出したのである。
「それならね」
「そこでロミオですか」
「あっ、ちょっとね」
失言に気付いてだ。すぐにだった。
己の言葉を引っ込めた。佐藤に対してだ。
「ちょっと思っただけでね」
「そうですか」
「うん。ただ」
「ただ?」
「対立するよりは」
それよりもだと。義正は遠くを見る目で話すのだった。
「もっといいものがあるね」
「そうですね。対立よりもです」
「融和だね」
「理想論かも知れませんがそれでもです」
「対立よりはいいね」
「対立もまたそこから多くのエネルギーを生じます」
決して無ではないというのだ。佐藤は対立を全否定してはいなかった。しかしである。それでもだ彼はこう義正に話すのだった。
「融和はそれ以上にです」
「多くのものを生み出すんだね」
「対立は衝突です」
これは言うまでもなかった。その通りである。
「御互いの力がぶつかり合いです」
「それでかなりの力が殺されてしまうね」
「力の無駄な消耗が大きいのです」
それが対立だというのだ。対立から生じるものはその消耗されなかった残りの力が生み出すものだというのである。それだとだ。
ページ上へ戻る