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真田十勇士

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巻ノ百二十八 真田丸の戦その三

「そうしてじゃ」
「攻め寄せてきた敵を散々に破り」
「そうしてですな」
「そこで勢いを作り」
「茶々様に申し出て」
「外にうって出るのですな」
「そうする、敵が大砲を出す前にじゃ」
 まさにその前にというのだ。
「よいな」
「はい、外に出ましょう」
「そして砲撃をはじめる前に城の周りの敵を打ち破り」
「そうしてですな」
「大御所様の御首を」
「取るぞ、取れずとも城を囲む軍勢を散々に破って近畿を手に入れられれば」
 当初幸村が考えていた通りにだ。
「そこから天下を二つに分けられる」
「そして豊臣家を天下人に戻せる」
「それが出来ますな」
「そうじゃ、その第一歩じゃ」
 今からはじまる戦がというのだ、こう話してだった。
 幸村は築山の砦を焼かせる者達も送った、真田の者達は武士であり忍でもある。その者達がであった。
 密かに真田丸を出て築山に寄り派手に火薬を使って爆発させて焼いた、その火柱は秀忠の本陣からも見えた。
 火薬の爆音に驚いた秀忠は驚いて飛び起き即座に具足を着けて山の方を見た、そして夜の闇の中に燃え上がる砦を見て言った。
「まさかとは思うが」
「はい、これはです」
「築山の砦が焼かれております」
「おそらく真田の者がやったのでしょう」
「あの山から真田丸は目と鼻の先故に」
「上様、大変です!」
 旗本が一人慌てて本陣に駆け込んで言って来た。
「前田家、越前様、そして他の家の軍勢が一斉に真田丸に向かっております!」
「何っ!?」
 秀忠はその報にも驚いて言った。
「馬鹿な、その様なことが」
「大御所様が命じられていましたが」
「それが何故」
「急に動いたのか」
「それも幾万もの兵が」
「どうなっておるのだ、兵達を止めよ」
 動いている兵達をというのだ。
「そうせよ、ただしな」
「築山はですな」
「あの砦は豊臣方に奪わせぬ」
「あの山自体も」
「そうせよというのですな」
「あの山に砦は築いておきたい」
 秀忠は築山から真田丸を攻められるからこそこだわっていた、それで幕臣達にこう命じたのである。
「よいな」
「はい、それでは」
「すぐにですな」
「砦は再び築く」
「その為にもあの山は」
「確保せよ、動いておる兵達にはそう命じよ」 
 こう言った、そして自身が率いる兵達に守りを固めさせた。しかしこの命がかえって仇となってだった。
「ここはな」
「わかり申した」
「それはです」
「兵達にそう命じます」
「すぐさま」
「うむ、それではな」
 こうしてだ、幕府は動いている兵達に命じて築山を攻めさせた。だが秀忠はここでこうも言ったのだった。
「しかし真田丸はな」
「はい、あそこはですな」
「攻めてはなりませんな」
「あの出城は」
「決して」
「真田じゃ」
 この家の名を苦い顔で言った、秀忠は上田城での戦のことを思い出してそのうえでそうした顔になったのだ。 
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