儚き想い、されど永遠の想い
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469部分:第三十七話 桜を前にしてその三
第三十七話 桜を前にしてその三
こうだ。彼等に言ったのである。
「明日は。お豆腐の料理をお願いしますと」
「そのお豆腐の料理で、ですね」
「奥様を」
「はい、迎えたいと思います」
こう話す。それを受けてだ。二人もだ。微笑んでから答えるのだった。
「では。シェフの方々にもお話しておきます」
「お豆腐でと」
「そうして下さい」
こうしてだった。真理の退院の用意も進められる。そうしてその次の日になりだ。
真理の退院する時にだ。義正が迎えた。自分で車を運転して迎えたのだ。
そしてだ。その運転する中でだ。義正は真理にこう話したのだった。
「お屋敷に戻ればです」
「はい、そこでなのですね」
「残された時間を過ごしましょう」
「そうですね。この世での時間を」
「そうしてです」
こうだ。義正はさらに話していく。
「次の生もまた」
「そうですね。義正さんとあの子の中で生きる生を」
「その新しい生の為にもです」
次につなげる、そうした意味もあってだというのだ。
「桜を見ましょう」
「是非共ですね」
「では。お屋敷に戻れば」
「お屋敷にまた何か用意してくれたのですね」
「お豆腐を」
それをだというのである。
「それをお願いします」
「有り難うございます。それでは」
「二人で食べましょう」
その豆腐料理をだと話してだ。彼等はだ。
義正の運転する車で屋敷に戻っていく。その中でだ。
真理はだ。笑顔でだ。車窓の外を見て。こう義正に述べた。
今彼女は車の後部座席にいる。そこから見て言うのである。
「もう完全に春ですね」
「はい、梅も咲き蒲公英もあり」
「そうですね。奇麗なものですね」
「その春を楽しく過ごしましょう」
真理の今の生、最早残り僅かとなっているその生きるをというのだ。そのことを真理に話しながらだ。義正は彼女に話していくのだった。
「お豆腐を用意しておきました」
「お豆腐ですか」
「はい、それをです」
こう真理に話すのである。
「お豆腐は。とてもいいものですから」
「優しい味ですよね」
「しかも身体にもとてもいいです」
味だけでなくだ。栄養もだというのである。
「それを召し上がりましょう」
「お豆腐はこれまでも一緒に何度も召し上がっていますね」
「そしてその都度ですね」
「はい、いいことを知っていきました」
だから余計にだというのである。
「召し上がりたいと思います」
「では」
「春のお豆腐ですね」
外の春を見ながらだ。真理は話していく。
「それもまたいいものですね」
「そう言われますか」
「よくお鍋に入れて食べたり冷奴として食べますが」
「冬に、それに夏にですね」
「どちらもいいものです」
こう話す真理だった。
「ですが春もまた、ですね」
「豆腐は不思議ですね。何時でも食べられますが」
「その季節それぞれにですね」
「そうですね。味がありますね」
それが豆腐だというのだ。それぞれの四季により味が変わるというのだ。
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