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レーヴァティン

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第四十五話 傾奇者その六

「そうして奥さんがいたが」
「浮気しまくってか」
「いつも揉めて奥さんは泣いていた」
「それは悪いことじゃ」
 当季もそこは責めた。
「どれだけ遊んでも条件があるぜよ」
「人を泣かせるな、だな」
「ましてやかみさんはじゃ」
 自分の最も身近にいる者はというのだ。
「泣かせたらあかんぜよ」
「そしてそいつはだ」
「かみさんを泣かせまくってたんじゃな」
「いつもな、また言うが酒に博打もやっていた」
「どれにも溺れてじゃな」
「奥さんと子供をいつも泣かせていてだ」 
 英雄は風呂の中で酒が抜けていくのを感じつつ当季そして他の仲間達に対してその英雄の話をさらに続けた。
「自分は遂に身体を壊して死んだ」
「そうなったんか」
「五十にならないうちにな、覚醒剤にまで手を出してな」
 英雄の言葉にある嫌悪がさらに増した。
「そうしてだ」
「死んだか」
「幻覚を見て駅にいた時に急に線路に飛び出してだ」
「電車に撥ねられてか」
「肉の塊になった」
 文字通りそれとなり果てた、英雄は言い切った。
「無様な、馬鹿に相応しい最期だった」
「きっついのう、それは」
「そうした馬鹿を見てきたからだ」
「おまんはおなごは遊ぶだけか」
「結婚相手を悲しませるつもりはない」
「ほな遊びもか」
「嫌いではない、楽しんではきた」
 女三人同時のそれはというのだ。
「しかしそれでもだ」
「溺れることはないか」
「俺はその親戚になるつもりはない」
 一歳、完全な否定と拒絶がそこにはあった。
「何があってもな」
「それでか」
「多くを相手に出来るが一人でも出来るな」
「そこはその通りじゃ」
 当季も否定せずに答えた。
「一人を一途にっちゅうのも道ぜよ」
「そうだな。俺もその時はだ」
「結婚したらじゃな」
「一人でいい、女は楽しかったが溺れるものでもない」
 このこともわかったのだ、遊郭で。
「むしろ酒の方がいい、ついでに言うと博打はだ」
「興味ないんじゃな」
「何がいいかわからない」
 こちらはというのだ。
「確実に儲かるか」
「親になれば別ぜよ」
 つまり胴元だ、博打というものは開く方が利益を得る。遊ぶ方は所詮金を巻き上げられるだけの存在だ。博打で鞍を建てた者はいないというがそれは胴元にでもならないと到底無理なことなのである。
「麻雀や花札は勝負じゃからのう」
「博打は博打でもな」
「駆け引き、勝負もんじゃ」
 麻雀や花札はとだ、当季ははっきりと言った。
「また別じゃ」
「しかし賽子等はな」
「丁半なんか完全にじゃな」
「賽子に細工でもしていないとな」 
 こうしたことも博打では常だ、この島でもよくある話である。
「確実ではない」
「確実でないならじゃな」
「俺はしない」
 こう言い切った。
「そんなものはな」
「確実に勝てんとか」
「しない、だから博打はしないしだ」
「おなごも酒よりはか」
「そう思った、その酒もだ」
 英雄自身が女よりもいいというそれもというのだ。 
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