とある3年4組の卑怯者
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121 防衛
前書き
堀の存在を気に食わぬ者達による堀への攻撃の激しさが増していく。みどりの属する3組の学級委員の倉山と西原は堀を守るために対抗策を練り出した!!
みどりと堀は矢部、日山、保谷、泉野、笠間努、俣野源一と共に帰っていた。西原からなるべく堀が襲われないよう集団で帰るよう命じられたのだった。
「みんな、ごめんね、私のために・・・」
「謝るなよ、いじめる方が悪いんだからさ!」
泉野が堀を慰めた。その時、後ろから声が聞こえた。
「へん、可愛いからって調子乗ってるからいじめられんだよ!」
皆が後ろを振り向いた。2組の阪手が都島に深江を連れて立っていた。
「な、何よあんた達!?」
日山が言い返した。
「堀が調子に乗ってる!?そんな風には見えないぜ!」
俣野も食ってかかった。
「大体堀なんて転校してきたもんじゃん。それで注目集めて人気者になれたと思って図に乗ってんのが悪いんじゃん!」
「何ですって!?堀さんをそんなに悪く言うなんてまさかあなた達も堀さんのいじめに関わってんですか!?」
「は!?泣き虫は黙ってな!!」
阪手は堀に近づく。
「ちょっと!堀さんに手を出さないでよ!」
矢部が阪手を制止しようとした。しかし、阪手は手は出さないが、堀を責めようとする。
「あんた可愛いからって気取ってんじゃないよ!」
「わ、私は別にそれで調子乗ってなんかいないわ・・・」
「ふん、嘘だね!こんなのと友達になってる事自体頭イカれてんだよ!」
阪手はみどりを指差しながら言った。
「わ、私が堀さんと仲良くなって何が悪いんですか!?」
「ふん、すぐ泣いて迷惑かける奴なんかに友達いるとムカつくだけなんだよ!!」
その時、笠間が話に横槍を入れる。
「阪手。お前もしかして自分が可愛くないからって妬いてんのか?」
「はあ!?うるさい!!もゆをブスだと思ってんの!?」
「別にそんな事言ってないよ。じゃあ、自分は凄い美人だって思ってんのか?」
「うるさい、お前は黙れ!!もゆだってコイツさえいなきゃ美人だって言われるはずなんだ!」
「ただのナルシストだよな」
「ああ、自分が堀に負けてるって明らかに認めてるよな」
「それに吉川の事もムカついているってならなんで吉川にはなんもしないんだろう?」
泉野、保谷、俣野は阪手についてひそひそ話をしていたが、聞こえたらしく、彼女を怒らせた。
「うるさい、うるさい、うるさい!!お前らは消えろーーーー!!!」
阪手は怒鳴った。
「無理だね、俺達は堀を一人にさせるわけにはいかないんだ!!お前が消えろ!!」
保谷が応戦した。
「そうよね、皆行こう!一々相手にしてたらキリがないわ!!」
日山が皆に阪手達から離れるよう催促した。
「くそ、あいつらもムカつくな!」
「もゆ、ウチらも行こうよ」
「うん・・・」
倉山は下校時刻になり、教室から急いで茅原と栗木を呼んだ。自分が目を放している隙に堀の下駄箱が襲われる可能性があるためかなり速やかに移動した。
「誰も来なかったか?」
「ああ、何とかなったよ」
「よし、すまないな。こんな事させてもらって」
「でも、誰がやったか見当がつくのかい?」
茅原が聞いた。
「おおよそはついている。落書きや体操着は誰がやったかはまだ分かんないが1組の小倉や熊谷は堀が気に食わない事は聞いているし、4組の栄張も堀に挨拶の代わりという理由で殴っていた。とにかく明日は別の奴を監視につかせるよ」
「うん」
倉山と栗木、茅原は下校した。
他の皆とは別れ、堀はみどりと家が近い泉野によって家まで送られた。
「吉川さん、泉野君、私のためにありがとう・・・」
「いいんだよ。明日も登校中に何されるかわかんないだろうし迎えに行くよ」
「私も行きます!」
「うん、じゃあね・・・」
堀が家に入ると、みどりと泉野はそれぞれの家へと帰った。
堀はいじめは辛いがクラスの皆が自分のために行動してくれているので孤独は感じなかった。堀は机の引き出しを開け、前に藤木が中部大会で金賞を獲ったと書かれてある手紙を取り出した。その手紙の「今度またいつか一緒にスケートしに行けたらいいね。」という文章を読み、急に藤木に会いたくなった。
(藤木君、私また貴方に会いたい・・・)
藤木は学校が違うが好きな男子だ。確かに彼には笹山という女子が好きである事、みどりも彼に想いを寄せている事は分かっている。しかし、文通はしているが、藤木とは地区大会以来、直接顔を合わせていない。みどりが時々会っていたようだが。堀は思いきって藤木に手紙を書く事を決心した。
藤木君
元気にしていますか。私また藤木君に会いたくなったの。今週か来週にでも一緒にスケートしに行きたいけどいつなら都合がいいかしら。電話か手紙で返事待っています。
堀
堀は家を出て藤木宛の手紙をポストに投函した。
翌日、みどりは堀を迎えに彼女の家へと向かった。
(堀さん・・・、お願いです。私が必死に守りますからどうか不登校にならないで下さい・・・)
堀の家の門に到着すると、既に泉野が堀を迎えに来ていた。
「あ、泉野さん」
「ああ、吉川。君も来たのか」
「はい、私も堀さんが心配で・・・」
すぐに堀が現れた。
「お待たせ。あ、吉川さん、おはよう」
「おはようございます」
「それじゃ、行こうか」
三人は出発した。途中、みどりは堀に話しかける。
「あの、堀さん・・・」
「何?」
「私達が必死で守りますので不登校にならないで下さい!私は堀さんがいないとやっぱり寂しいんです!!」
「ありがとう、私も負けないわ!」
「そのほうがいいな。あいつらは堀が学校に来なくなるのを望んでいるみたいなんだ。このいじめを終わらせないとな!」
倉山は1組の麹江良太に会っていた。倉山とは近所で2年の時同じクラスになった事がある。
「で、お前のクラスの堀へのいじめをやめるよう呼び掛けてくれって事か」
「ああ、でないと彼女も学校に来れなくなるかもしれないんだ。特にお前のクラスの小倉と熊谷が堀の事を悪く言っているからそいつらが怪しいが、とにかく学級会でも開いて呼び掛けてくれ」
「分かった」
みどり、堀、泉野は学校に着いた。廊下を歩いていると堀がランドセルから突き飛ばされて転ばされた。みどりと泉野が振り返ると栄張だった。
「また貴方ですか!?何するんですか!?」
「何っテ?挨拶の代わリ!」
「また同じことを!もう許しませんよ!」
みどりは栄張に平手打ちをした。
「ア!?てめエ、調子にのりがっテ!!」
栄張が怒り、みどりを殴った。
「おい、殴る事ないだろ!」
泉野が止めたが、栄張は泉野にも殴った。みどりも泉野もやられっぱなしで終わるわけにはいかなかった。二人は栄張に殴られ、蹴られる。その時、多くの生徒が集まった。小倉と熊谷は栄張に加勢しようとそれぞれがみどりと泉野を引き離して殴り付けた。
「吉川さん!泉野君!ちょっと、この二人は悪くないわ!!」
堀がみどりに掴みかかっている小倉を離そうとした。しかし、振り払われ、栄張に身体を踏みつけられた。
「堀!やめろ!!」
熊谷と取っ組み合っている泉野が堀を助けようとして熊谷を引き離して栄張に体当たりした。その時、倉山や麹江、4組の東山守や藤里幸雄5組の広瀬哲弘など多くの人間が止めに入った。
「お前らやめろ!」
「何してんだ!!」
この乱闘は終息しそうになかった。先生方が止めに入ってようやく終結した。乱闘を起こした者達は休み時間に先生方に事情聴衆するように言われた。
「はあ、はあ・・・。堀さん、大丈夫ですか・・・?」
みどりが堀に聞いた。
「うん・・・」
その時、一人の女子が呼んだ。4組の狭間夢子だった。
「堀さん・・・、ウチの栄張が暴力振って本当にごめんね・・・。あいつ、殴るの好きだからどうしても止められなくて・・・」
「え、うん・・・」
「それじゃあ、また何かあったら私の所に言っていいからね」
狭間は自分の教室へと戻って行った。
みどり、泉野、堀は休み時間に事情を教師達に告白した。栄張達は叱られたが、みどりはこれで終わりそうには見えなかった。そして教室に帰ろうとすると二人の男子に絡まれた。5組の榎像りょうと新林由介だった。
「おい、堀!お前ナメた事するからこういう事になんだよ!」
榎像が怒鳴った。
「堀さんが何かしたんですか!?」
「そりゃ『何か』だよ!」
「『何か』じゃ分かりません!詳しく言ってください!!」
「うるせえ!!『何か』は『何か』だよ!!」
そして、新林が眼鏡の奥の目玉をギョロギョロさせながら堀に詰め寄った。
「うぉい!!ふずぁけた事しつぁら、おめえのケツに浣腸してやるくぁらな!」
新林は下品な言葉を堀に突き付けた。榎像と新林は去っていった。
「な、なんだよ!堀が悪いみたいに!」
「あの人たちも小倉さんや熊谷さんと同じように堀さんを憎んでいるんじゃないですか?」
三人は自分のクラスの教室へと帰った。阪手は遠くからその様子を見ていた。
「へん、バーカ!さっさとボコボコにされて消えちゃえよ!」
倉山と西原は各クラスに堀への嫌がらせをやめるよう呼びかけた。
「これで何としてでも抑えないとな・・・」
「でも先生達が叱ってもやめないならどうすればいいのかしら?」
「確かにそれも問題だな・・・」
二人は先の不安を募らせた。
後書き
次回:「抗争」
堀を排除するために攻める者と彼女へのいじめを鎮めるために守る者との醜い戦いは続く。そんな時、堀は藤木からの返事を受け取る・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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