相談役毒蛙の日常
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十八日目
スイルベーン路地裏の酒場、そこで俺と葵…いや、カトラスは向き合っていた。
「ちくしょう…ちくしょう…」
カトラスは俺の目の前で突っ伏し、沈んでいた。
「おい…どうしたんだ?」
と問いかけると顔を机から上げた。
「せっかく…せっかく男になれると思ったのに…ゲームの中なら…男になれると思ったのに…」
あ、あぁ…なるほど…そういう事か…
「まぁ…その…なんだ…済まんな、期待させて」
「灯俊のバァカ!」
「はいはい…」
「むぅ…」
男云々言うならその仕草やめろよ…かわいいんだからさ…
「むくれる前に装備の変更だ。
俺のストレージから出すからよ…
取り敢えずメニューからフレンドのトレード画面開け」
トレード画面を開く前にストレージを確認する。
うん、ちゃんとあるな…
トレード画面を開きアイテムボックスを選択する。
昨日の内に渡す装備を纏めておいたのだ。
「取り敢えず装備を渡す。
だけど俺が持ってる装備は殆どレベル制限がある。
その手の装備は順次渡していくから今はコレで…
どうした?」
「いや、一気に言われてもわかんねぇよ」
「取り敢えず初期装備プロデュースby俺を渡すっつってんの」
中身は中級クラスのレア物だ。
ただし女性専用。
ヘルマプロディトスを使ってまで装備したいほどのスペックが無い物だ。
「ふーん…で、トレードってどこ?」
え?あ…そっか…
「おい、あお…じゃない、カトラス。フレンド登録するぞ」
「フレンド登録?」
「あぁ、フレンドやパーティー、ギルド内じゃないとアイテムやユルドの譲渡はできない」
もしかしたら今回の一件で出来るようになったのかもしれないが、確かめるのは面倒だ。
「メニューのフレンドを開け、ソコに新規登録ってあるだろ?」
カトラスに登録の仕方を教えて、フレンドリストに追加する。
「じゃ、トレードだな…適当にユルド突っ込んどけ」
ALOのトレードは必ず"交換"しなければならない。
まぁ…レジェンダリーウェポンと1ユルドの交換が成り立つのもどうかと思うが…
「じゃぁ、送信ボタン押せ」
と言って俺もアイコンを押した。
こちらに1000ユルドが追加…って待てやコラ
「全額突っ込むなバカ」
「装備は揃うんだから良くね?今かられべリング行くんだろ?」
いや…まぁ…確かにそうだけど…
「まぁ…しょうがない…ポーションは俺のを分けよう」
「じゃぁパッパとレベリング行こうぜ」
はぁ…
「バカ、さっさと着替えろ。その装備でパワーレベリングに行く気か?」
今から行くのはシルフ領初級ダンジョンだ。
先ずは葵が"カトラス"としてどれだけ動けるかを見る。
その後で次に何処に行くかを決める。
「おい…灯俊…」
「なんだ?一応言っておくがリアルネームは厳禁だぞ」
バァン!
カトラスが座っていた机を叩いた。
「お前!オレにこんな所でストリップやれってか!?」
「ばか野郎!ゲームの中だぞ!装備フィギュア弄れば済むだろうが!」
するとカトラスは顔を赤くした。
「先に言えよ!」
「言ったわ!昨日システムの説明でちゃんと言ったわ!」
カトラスは顔を赤くしながらウィンドウを弄り始めた。
「一応言っておくが、装備を弄る時は"イクイプメント"のアイコンだからな」
「知ってるっつーの…」
まぁ、そこら辺は他のネトゲと同じだな。
ちなみに俺も葵もネトゲプレイヤーだ。
するとカトラスの装備が一つずつ変わって行った。
「うわ…スペックが六割増しだ…」
「なぁに、レベルが上がれば数百倍になるさ」
現在の葵…カトラスのレベル(種族熟練度)は1。
対して俺はレベルキャップ限界。
HPだけを見ても今の俺は万単位だ。
「じゃぁ、パーティーを組むぞ」
「ん、わかった」
パーティーになれば"パーティー共有ストレージ"が新設される。
そこにポーションやクリスタルを突っ込めばカトラスも使う事が出来る。
「さ!いくぞカトラス!」
「おう!」
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