真田十勇士
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巻ノ百二十七 戦のはじまりその三
「外に出る様にな」
「しましょう」
「囲まれてはどうしようもない」
とかくというのだ。
「だからな」
「何とかしましょうぞ」
「そしてその為にじゃな」
「策もあります」
幸村にというのだ。
「ですから」
「その策でか」
「戦の流れを変えます」
「その様にされるな」
「はい」
こう後藤に言った。
「こうなればです」
「それしかないな」
「それがしが真田丸に引き寄せ」
幕府の軍勢をだ。
「そしてです」
「敵を散々に破り」
「流れを変えまする」
「そしてそこで茶々様に申し出て」
「外に出ましょう」
「では外に出たならば」
「城の周りの敵をさらに打ち破り」
真田丸でそうした様にというのだ。
「そのうえで」
「勝つか」
「そうするしかないですな」
「全くじゃ、しかしその時もな」
「流れを変え様にもですな」
「茶々様がどうか」
大坂城の実質的な主である彼女がというのだ。
「何と言われるか」
「つくづくそのことが問題ですな」
「若し北政所様ならば」
秀吉の正室であったねねならというのだ。
「こうした時はな」
「はい、我等に任せて頂き」
「決して口を出されぬ。そもそもな」
「切支丹についても」
幕府との戦の発端になったこのこともというのだ。
「認められませんでしたな」
「ご自身が江戸に行かれることもされてたわ」
茶々が頑として断っているそれもというのだ。
「そうされていたわ」
「左様ですな」
「流石に太閤様の正室であられたからな」
「大御所殿の正室となることは」
「無理であったろうが」
しかしというのだ。
「それでもな」
「悪い様にはなっていなかったですな」
「北政所様が右大臣様のご生母ならな」
「今の様にもですな」
「戦にすらなっていなかったわ」
そもそもと言う後藤だった。
「真田殿もそう思われるな」
「はい」
その通りだとだ、幸村も答えた。
「北政所様ならば」
「そうじゃな」
「そう思うと残念なことですな」
「まことにな、しかしな」
「もうそれを言ってもですな」
「栓なきこと、ならばな」
後藤はここでも敵の大軍を見下ろして幸村に話した、見れば見る程かなりの数の軍勢である。二十万は伊達ではなかった。
「勝つしかない」
「では」
「真田丸での検討をお願いする」
「お任せ下され」
「何とか流れを変えてな」
「そのうえで」
「外に出られる様にしよう」
こう話してだ、幸村は早速だった。
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