儚き想い、されど永遠の想い
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43部分:第四話 はじまりその七
第四話 はじまりその七
「あの二人は。幸せになれる方法もあったのではないかと」
「幸せにですか」
「真理さんは先程仰いましたね」
真理自身の言葉をだ。彼女はここで出した。
「誰もが幸せになれる権利があると」
「はい」
「私は。それは義務だと思います」
「義務ですか」
「はい、誰もが幸せにならなくてはならない」
それはだ。絶対にだというのだ。
「ですから」
「誰もがですか」
「当然他の方に迷惑をかけない限りで、ですけれど」
麻実子もはこのことを話すのも忘れなかった。人間としてのモラルである。それを忘れてはならないというのである。そうしたことだった。
「ですから」
「だからですか」
「はい、だからです」
また話す麻実子だった。
「ロミオとジュリエットも」
「幸せにならなくてはならなかった」
「絶対にですね」
「後はどうして幸せになるべきか」
真理は考えながら話していく。
「そうなのですか」
「それが一番問題ですけれど」
「誰もが幸せにならなくてはならない」
「最近言われていますね」
麻実子はだ。今度は巷の話を出して来た。
「自由、そして民主主義」
「そうですね。自由主義ですね」
「そうした時代ですから。ですから」
「誰もがだと」
「そうならなくてはならないと思います」
また真理に話した。
「絶対に」
「これからはですか」
「はい、ですが」
「ですが?」
「考えてみればこれは」
どうかだと。麻実子はここで己の言葉を変えた。
そしてだ。こう言うのであった。
「何時でも当然のことですね」
「時間と関係なくですか」
「人間ですから」
だからだというのだ。
「そんな奴隷とかそういうのはありませんから」
「奴隷は。そもそも」
「それ自体が間違っていますよね」
「そうですね。絶対に」
この認識があってだ。前提となっていた。それで話す二人だった。
「ですから。何時の時代でもどの国でも誰でも」
「人はですね」
「幸せにならないと思います」
また話す麻実子だった。
「人間ですから」
「では私も」
「勿論です。ジュリエットにならずに」
「幸せにならないといけませんね」
「ロミオとジュリエットは悲劇です」
それは否定できなかった。この作品は言うまでもなく悲劇だった。
「悲しい話は。小説や舞台だけで充分です」
「現実は。幸せが」
「あるべきですから」
これは麻実子の言いたいことだった。それを真理に話すのだった。
そしてそれが終わってからだ。彼女は。
あらためて真理に話す。それは。
「では今は」
「今は?」
「紅茶をもう一杯飲みませんか」
話はこれだった。
「どうされますか」
「そうですね。それでは」
真理もだ。麻実子のその言葉に笑顔で頷いた。
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