獣篇Ⅱ
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7 世の中は、どうやら正負の法則で回っているようだ。
食べ終わってから、片付けを手伝って一段落ついたところで到着したようだ。ターミナルを通過し、船から出る。もらっていたマイクとイアホンをスタンバイしておいてから、それぞれ場所に散っていった。
神威たちも、途中で買っていく、おいうことだったので、吉原入りはまだ夕方のようだ。とりあえず向かう先は、真選組屯所。最近LINEでやり取りしているので、既読になったか、を確認する。とりあえず無事に来い、とのことだったので、普段着の格好です、と伝えておいた。屯所の門のところにワープする。門をくぐって中に入ると、局長と副長が立っていた。二人とも忙しいのに、わざわざ申し訳ない、と思いながら、手を振る。
駆け寄って、挨拶を済ませた。
_「ただいまです。局長、副長。」
_「おかえり、」
_「ところで今日は、どうしたんだ?何か情報でも入ったか?」
はい、とバッグからレポートを取り出す。
_「とりあえず、報告書です。後ででもいいので、読んでおいてください。で、問題はここからなのですが…ちょっと時間がないのですが聞かれるとマズい話なので…」
と言うと、局長室に案内された。
お互い落ち着いてから話を切り出す。
_「今回、地球に『春雨』と一緒に吉原へ行くことになりました。一応、鬼兵隊からの手伝い、という名目となっています。そして、夜王鳳仙を会うそうです。また、高杉からはテロ活動の情報と、企画書を量産してきました。どうぞ。」
と、手渡すと、副長が口を開く。
_「随分と信用されてるんだな、お前は。」
_「はい、なんとかバレずに上手くやっております。では、私はこの辺で。吉原に行く準備をしなくてはならないので、少しだけ部屋をお借りしてもいいですか?」
了解、と共に達者でな、という言葉をもらって、早速部屋に向かう。
バッグから仮面を取りだし、顔につけ、編み傘を被って裏門にワープし、そこから取り出したマイクとイアホンを付けて、吉原に向かう。今から行く、と告げると、鳳仙のいる建物の近くよ茶屋に行くように、ものことだったので、大至急そこへ向かった。
途中で菓子折りを買ってからそこに向かう。
目的の場所に着いて、時間を確認すると、もう夕方だったので、急いで指定された茶屋に向かった。主人に菓子折りを渡すと、二階へ案内された。
一応確認してから袴を取って、春雨の衣装の上から百華の衣装を着る。
脱いだ服をたたみ直してバッグにしまい、髪飾りと髪結いのセット、そして化粧道具のセットを出す。昔一回だけ花魁に化ける機会があったので、きっと大丈夫だろう。
スイッチを切り替えてから、鏡を出し、鏡台を整える。花魁風の髪結いを済ませ、髪飾りを付けて、化粧を施した。もちろん貰った傘は、しまってある。支度を済ませてから道具をしまい、百華の格好で階段から降りてくる。見回りしている風に歩いていると会話が聞こえてきた。
_「そういやァ、近頃とんと見かけなくなったな。あの小汚ねェ餓鬼はどうしたんだィ?」
_「あァ、晴太のことかィ?」
_「そうそう。日輪に会う、って毎日毎日小銭握りしめてお前んとこ来てたァ、汚ねェ餓鬼だよ。」
_「あァ…それが最近どうも、ちゃんとした奉公先が決まったらしくてなァ、」
_「へェ!あんな餓鬼雇ってくれるとこ、あったのかよ!?」
_「あァ。物好きがいたもんだよ。
毎日来ることはなくなったが、相変わらず週一くらいでやってくるぜェ?金まとめて持って…えらいもんでな。以前はあんな小汚ねェ野良犬みたいな面してやがったんだが。最近はすっかり小綺麗になっちまって。心なしか表情も、子どもらしく柔らかくなったわァ。」
ヘェ、晴太、ねェ…。
煙管を咥えてながら話に耳を傾けた。
_「へェ?そうかい。
で?いくら貯まったんだィ?」
_「え?何が?」
_「何が、って、晴太が毎日持ってきてた金だよ。毎日毎日日輪を文字通り太陽のように拝んでたんだァ。茶くらい一緒に飲む金は、できたんだろ?
…まさか、おめェさん…」
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