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相談役毒蛙の日常

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三日目

2025年2月 ルグルー回廊

「ふぅ……素材はこれくらいあればいいよな」

ったく、鍛治の素材が足りねぇって…なんでわざわざ俺が…なんて考えてると声が響いた。

わぁぁぁぁぁ!と絶叫マシンに乗っているかのような声がきこえた。

「なんだ?」

プレイヤーが襲われているのかと思い採掘用装備からバトルクロスに切り替える。

「わぁぁ!」

声がはっきりと聞こえて来た、それと共にズドドド!と地鳴りが聞こえた。

「わぁぁぁ!前!前!」

「そこのプレイヤー!逃げてくれ!」

目に写ったのは女の手を握りしめ疾走する男だった、しかもその後ろには大量のモンスター…

「ヤベェ!」

俺の鈍足じゃ逃げ切れんな。

チッ!と舌打ちをしてオブジェクトを一つ取り出す。

「我が願いに応え顕現せよ、妖しき物の長たる者よ!」

玉藻を召喚してすぐさま飛び乗る。

「玉藻!逃げてくれ!」

「了解、主様」

と、スタートすると共に後続の二人が追い付く、よく見るとスプリガンとシルフのタッグだった。

「おい!そこのスプリガンとシルフ!
状況によってはこの場で玉藻の餌にするぞ!」

いきなりトレインされたのだ怒って当然だろ?

「待ってくれ!事情があるんだ!話を聞いてくれ!」

「じゃぁその事情を説明して貰おうか!
なんで俺がトレインされなきゃいけないんだ!」

「それは…」

スプリガンが応えようとしたがシルフがそれを止めた。

「待って!ソイツがサラマンダーのスパイだったらどうするの!」

サラマンダーのスパイだぁ!?

「ざっけんな!俺をあんな奴等と同じにするな!」

サラマンダー…たしか5日前にギルドに来たな…『世界樹攻略に協力しろ、さもなくば貴様等を潰す!』とかなんとか…

まぁ結局俺が『へぇ…いいぜ殺ってみろよ、テメェ等が世界樹攻略の為に集めた装備をくれるのか、コイツぁありがてぇなぁ!』とドロップアップエンチャントを着けながら言ったらそそくさと帰って行ったが…

流石のサラマンダーも大規模多種族混合ギルドと事を構える気は無いようだ。

「なんだ?お前等もサラマンダーに脅された中央ギルドのメンバーか?」

「その話は後だ!もうすぐ出口だ!」

言われて前を見ると確かに光が見えた

「玉藻!出ると同時に縮めるか!」

「勿論!」

あー、シルフが目を見開いて俺と玉藻を交互に見てるな…バレたか?

なんて考えている内に出口だ、出ると同時に玉藻が小さくなり俺の腕に収まる。

「ひゃぁぁぁぁ!?」

とシルフが悲鳴を上げる。

「寿命が縮んだわよ!」

「ははは、時間短縮になったじゃないか」

「ダンジョンって言うのはもっとこう…索敵に気を使いながら、モンスターをリンクさせないように…あれじゃ別のゲームだよまったく…」

さてと…

「おい、事情とやらを聞かせて貰おうか」

「ああ、わかっ…」

スプリガンが応えようとするがシルフが遮る。

「サラマンダーが領主会談を狙ってる!
シルフとケットシーの!」

「なんだと?」

あのバカトカゲ共は何を考えてる?

そんな事をすればサラマンダー以外の種族が結束しかねん。

モーティマーもそこまでバカとは思えんのだが…

「会談の場所は蝶の谷内陸側出口!
これは世界樹攻略の為の会談よ!
貴方達も協力しなさい!」

「会談の護衛はどうした!」

「誠意を見せるため最低限よ!」

クソッ、めんどくせぇ…

「サラマンダーの数は分かるか!」

「分からない!」

ふむ……

「サラマンダーの襲撃を阻止すればいいんだな!
攻略の協力は俺の一存では無理だが多分受け入れるだろう!」

「分かったわ!」

「お、おい、リーf…」

「会談の時刻は!」

「二十分後!」

「オーケー!」

と、ここでスプリガンが口を開く。

「お、おい、リーファ、話してもよかったのか?」

「いいのよ、この人は敵じゃない筈よ。
さっきの話も多分本当ね」

「なんでだ?」

「この人のテイムモンスターが喋るの見たでしょ?
そんなモンスターをテイムしたのは一人しか知らないもの」

やっぱり其処で分かるか…

「で、誰なんだこの人は?」

「彼は央都アルンに拠点を構える多種族混合ギルドのサブマスター…このゲームのトップランカーよ。
そうでしょ?妖獣使いさん」

「ああ、確かにそんな名前で呼ばれる事もあったな」

でも結構昔の二つ名だぞそれ。

「俺はポイズン・トード。
好きに呼んでくれ。で、そちらさんは?」

「あたしはリーファ」

「俺はキリトだ」

少し引っかかるな…

「オーケー、キリトとリーファだな…リーファ…リーファ……
ああ、シルフのスピードホリックか」

そうだそうだ、この女確かにいつぞやの大規模イベントのレースで優勝した奴だ。

「で、こっちとしてもさっきの話はきになるんだけど、教えてちょうだい」

「なにがだ?」

「サラマンダーが中央ギルドを脅したって話よ」

「ああ、あれか…5日前にサラマンダーが世界樹攻略に協力しないと潰すと言ってきたんだ」

「なんですって!?」

「だが実際はただの脅しだ。
世界樹攻略を前にして俺達と争うのは得策じゃないことは分かってたいたらしい。
こちらが多少脅したらそそくさと帰って行ったよ」

「サラマンダーってバカ?」

「さぁな、だが中央ギルドの三割程は脅しに屈した。
あれは多分中間層の命令だ、モーティマーはバカじゃないしな」

あ、キリトが?マーク浮かべてるな。

「中央ギルドってのはアルンを根城にするギルドの事だ。
そして俺達は事実上アルンを統治している、といっても半統治だが。
何が言いたいかって言うとアルンで俺達に喧嘩を売れば世界樹攻略前に俺達の攻撃で大損害を受ける。
それにアルンは中立都市だから事実上トップの俺達を倒すメリットは無い」

「なぁ、トード」

キリトが真面目な顔をして尋ねてきた。

「なんだ?キリト」

「お前たちのギルドは都市を半統治しているんだよな?」

「ああ」

「税の徴収とか言ってカツアゲなんてしてないだろうな?」

あー…MMOで時々居るよな…大抵バンされるけど。

「無い無い、俺達のギルドはそういうの禁止だし、やってんのバレたらアルンから永久追放だ」

「そうか…ならいい」

「他に聞きたい事は?」

「無い。リーファ、トード、急ごう」

それからはずっと無言だった。

それにしてもキリトの飛翔速度が速すぎる。

ここまで速ければ二つ名が有ってもおかしくない

ニュービーという可能性も有るが限り無く低い、身のこなしを見れば分かる。

VRMMOはALOしか存在しないので多分古参だろう

其処である事件を思い出す。

一万の命をバイナリの世界に閉じ込め約三千五百の命を奪った史上最悪のテロリズム。

SAO事件。

VRシステムの産みの親の狂気の結晶。

昨年の十一月上旬に終焉を迎えたあの事件。

ALOとSAO、この世に存在するたった二つのVRMMO。

SAO事件の後、生還したプレイヤーはこう呼ばれた。

SAOサバイバー。

もしも、もしもキリトがSAOサバイバーならば辻褄が合う。

VRシステムは使えば使う程慣れによって動きが速くなる。

キリト…お前はSAOサバイバーなのか?

何故再びこのバイナリの世界に来た?

また囚われるとは思わなかったのか?

「あ!プレイヤー反応です!」

突然二人とは違う声が響いた。

鈴の音のような澄んだ声…プライベートピクシーか?

ならばキリトはSAOサバイバーではないのか?

「前方に大集団-六十八人。
これがおそらくサラマンダーの強襲部隊です。
更にその向こうに十四人、シルフ及びケットシーの会議出席者と予想します。
双方が接触するまであと五十秒です」

声と同時に雲が裂け、前方に影が見えた。

オーソドックスな強襲型エアレイドフォーメーションだ。

更にその向こうの台地にはテーブルと椅子が有り会議が行われていた。

「間に合わなかったね…キリト君、妖獣使いさん、ここまででいいよ…
君達は世界樹に行って、短い間だったけど、楽しかった」

おいおい、何の為にここまでで来たと思ってんの?

「ここで逃げ出すのは性分じゃ無いんでね」

とキリトが飛び出して行った

「さて、ムカつくバカトカゲのスロータークエストだ。
ノルマは六十八匹!」

と俺が加速するとリーファの呆れたような驚いたような声が聞こえた。

ドォォォン!と爆音が聞こえた。

あの野郎ノンストップで着地しやがったな?

「双方剣を引け!」

ほう、スキル無しであれだけの声を出すか…

その後ろではリーファが領主に話をしている。

「よう、サクヤ、アリシャ、助けに来たぜ」

と、声を掛けると。

「な!トードぉ!お前今まで何処で何をしていた!?」

とサクヤに指を指された。

あ~最後に会ったの何時だったっけ?

確かコイツが領主になる前だから…

「おー!久しぶりだネ!トード!」

コイツも変わってないなー…

「まぁまぁ、今はこの場を乗り切ろう」

と言うと静かになった、するとキリトが先程と同じ大声で言った。

「指揮官に話がある!」

お?おーおー!サラマンダーは本気だな?

「スプリガンがこんな所で何をしている?
どちらにせよ殺すことには変わりないが、その度胸にめんじて話だけは聞いてやろう」

出てきた大柄の男の名はユージーン、領主とリアルでも兄弟と聞く。

モーティマーが弟をよこすとはね…

「俺の名はキリト!
スプリガン=ウィンディーネ同盟の大使だ!
この場を襲うからには、我々四種族との全面戦争を解釈していいんだな!」

「ヒュゥー!」

面白い事になってきたぜ!
 
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