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とある3年4組の卑怯者

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116 転校前

 
前書き
 みどりは堀がかつて住んでいた山梨県の笛吹に連れて行って貰う。堀が転校前に住んでいたという家でそこで堀の祖父母と対面し、泊まるのだった!!

 このエピソードに登場する堀さんの親友・雪田みきえの名前の由来は堀さんの名前の「こずえ」が木の幹や枝の先という意味でしたので、木の「幹」と「枝」を由来としました。 

 
 みどりは目を覚ました。その隣には堀が未だに寝ていた。みどりは顔を洗い、戻ってきた。
「ん、んん~」
 その時、堀も目を覚ましたのだった。
「あ、堀さん、おはようございます」
「吉川さん、起きたの?早いわね」
「ええ、少し早起きしてしまいました」
「そうね、そろそろおじいちゃんもおばあちゃんも起きる頃だわ」
「そうですか。あ、そうそう、私堀さんのお友達がどんなお人なのか会うのが楽しみです!」
「うん、私の友達にも楽しみって言っていたわ」
「あ、ありがとうございます!」
 みどりは待ちきれないくらい胸を躍らせた。

 朝食を食べ、みどりと堀は朝食を食べると歯磨きをし、掃除や食器洗いの手伝いをして家を出た。
「行ってきま~す」
 玄関を出ると、富士山の姿が目に入った。
「うわあ、ここでも富士山が見えるんですね!!」
「そうよ、私はあの富士山を見るのが好きなの。清水に行ってもこの富士山が見れて本当によかったわ」
「そうですか。転校先も富士山が見える所でよかったですね」
「え?うん、そうね。だから私吉川さんにも会えたのね」
「え?」
「吉川さんのようないい友達に会えたって事よ」
「堀さん・・・。はい、ありがとうございます!」
「それじゃ、友達の家に行こう」
「はい!」
 
 二人は10分ほど歩き、そしてある一軒の家に到着した。堀はインターホンを鳴らした。表札には「雪田」とあった。一人の女性が出迎えた。
「こんにちは」
「あら、こずえちゃん、久しぶり」
「今日は転校先の友達を連れてきました」
「は、初めまして」
 みどりはお辞儀をした。
「こんにちは。ウチの子を呼ぶわね。入って、入って」
 みどりと堀は玄関に入った。そして、その女性は彼女の娘と思われる女子を連れてきた。その女子は二つに結んだ髪をおさげにしていた。
「こずえ、久しぶりだね」
「うん、みきえ、久しぶり。今日は私の今の学校の友達を連れてきたの。吉川みどりさんよ」
「初めまして、吉川みどりと申します」
 みどりはみきえとよばれた女子に挨拶した。
「初めまして。私は雪田(ゆきた)みきえです。こずえとは幼稚園の頃からの友達なんだ。よろしくね」
「よろしくお願いします」
 みどりと堀はみきえによって居間に入った。そして緑茶をご馳走になる。
「こずえは学校生活楽しんでる?」
「うん、最初は少し緊張したけど、クラスの皆は私に優しくしてくれているわ」
「そうね、こずえの友達思いな性格なら、すぐに友達出来るもんね」
「うん、それで最初にできた友達がこの吉川さんなの」
「・・・え?」
「そうなんだ、礼儀正しくていい友達だね」
「いや、その・・・」
 みどりはみきえに褒められて赤面した。
「でも私、堀さんに会うまでは友達がいなかったんです」
「え?」
「私、元々は泣き虫だったんです・・・。だから友達ができなかったんです」
 みどりは赤裸々に語り出した。
「堀さんが転校してきて、それで席が隣になって、それで私を堀さんの家に招待してくださって、それで友達になってくれて、泣き虫を治すと約束したんです。私は堀さんのお陰で変わる事ができたんです。要は私は堀さんから友達にしてもらったものなんです!」
(吉川さん・・・)
「そう、でも私も同じようなもんだよ。私も何らか挫けそうになった時、こずえによく助けて貰ったもん」
「そうなんですか?」
「うん、だから君もこずえと仲良くなったって事は自分を変える事ができたと思うよ」
 みどりはみきえの言葉で思い出した。確かに堀が己を支えた事でクラスメイト達と馴染めるようになった。社会科実習の時も自ら積極的に動こうとして同じ班の者から助けられた。そして、些細な事で泣く頻度も少なくなった。確かに堀がいなけれはま自分は泣き虫のままで学校の友達はできないままだっただろう。
「そうですよね、私、堀さんに会えて本当によかったです」
 堀もまた照れた。
「うん、そうだね。そうそう、他の友達も呼んどいたから後で皆で楽しもう!」
「うん、いいわね!」
「はい!楽しませて頂きます!」
 こうして皆はみきえが呼んだというその友達を待った。

 みきえが呼んだ友達が来た。みきえは玄関の方へ向かった。
「どんなお友達なんでしょうか?」
「フフッ、きっと吉川さんも仲良くなれるわよ」
 みきえが戻ってきた。女子が二人、男子が三人現れた。
「よう、堀、久し振りだな!」
「皆!」
 堀は友達との再会を喜びあった。
「そうだ、今日は転校先の友達を連れてきたの。吉川みどりさんよ」
「は、初めまして、吉川みどりと申します」
 堀に紹介されてみどりは自己紹介した。
「私のクラスメイトの大山さんに森田さん、柴木君、原川君、宮本君だよ」
「君、礼儀正しいね!それに敬語なんて」
 柴木がみどりの態度に驚いた。
「いえ、それが私のクセみたいなものです」
「そうだ、せっかく来たから皆でなんかやろうよ!トランプとかどうかな?」
「いいわね、やろう、吉川さん!」
「はい!」
 こうして皆でトランプを始めた。ババ抜きを始め、七並べや神経衰弱を行った。みどりは堀が始めて彼女の家へ招待された事を思い出していた。あの時は負けるとすぐに泣いてしまった。しかし、堀の必死の支えで泣くのを堪えるようになった。そして、そこに居合わせた堀他のクラスメイトとも友達になる事ができた。今は堀の旧友とこうして遊びを通して仲良くなれる事に幸せに感じていた。そろそろ帰る時間になった。
「私はもう帰る時間になっちゃったわ。皆本当にありがとう。また来るわね」
「皆さん、今日は遊んでいただきありがとうございました」
「こっちもありがとう。吉川さんもまた遊びに来てね!」
「はい!ありがとうございます、みきえさん」
 こうしてみどりと堀はみきえの家を後にした。そして堀の前の家に戻り、昼食にチャーハンを食べ、清水へと帰る事になった。
「それじゃあ、さようなら!」
「また来てね」
「元気でいるんじゃぞ!」
 堀の父は車を発進させた。途中で道の駅に寄り、お土産を買うことにした。
「私はこの信玄餅をクラスの皆にあげるわ」
「そうですか。私はこの巨峰入りのシフォンケーキをまる子さんや藤木さんへのお土産にしたいと思います」
「そう、まるちゃんや藤木君も喜んでくれるといいわね」
「はい!」
 みどりは最高の思い出を残して堀と共に清水へと帰って行くのであった。 
 

 
後書き
次回:「退院」
 永沢と城ヶ崎の退院祝いを花輪邸で催す藤木達。学校では相変わらず堀内は迷惑行為をやめる傾向がなく、彼を止めるために丸尾ら「学級委員隊」が動き出す・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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