儚き想い、されど永遠の想い
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395部分:第三十話 運命の一年その十五
第三十話 運命の一年その十五
「ですがそれでもです」
「黄金があるのですね」
「はい、あります」
「それなら」
義正の言葉を受けてだ。真理もだった。
笑顔になりだ。こう言った。
「是非その黄金をです」
「見られますね」
「そうさせて下さい」
これが真理の言葉だった。
「黄金。その輝きを見たいです」
「わかりました。それでは」
「夏の黄金ですか」
その黄金についてだ。真理は考える。しかし今はだった。
それが何かどうしてもわからずだ。首を捻るばかりだった。その真理にだ。
義正は優しくだ。こう彼女に告げた。
「八月になればわかりますから」
「だから今はですね」
「楽しみにしていて下さい」
こう言うのだった。
「そうされて頂ければです」
「わかりました。では」
これで今は終わりだった。そうしてだった。
義正と真理は義幸と共にだ。川辺の花達も見るのだった。
そして八月の前にだ。義正はだ。自分の両親にだ。こう話したのだった。
「今はとてもです」
「どうなのだ?今は」
「貴方達は」
「満ち足りています」
そうだとだ。微笑んで両親に話すのだった。
三人でだ。今は茶を飲んでいる。八条家の屋敷の庭において。
そうしながらだ。彼は言ったのである。
「とても」
「そうか。そうしてか」
「春までの時を過ごしているのですね」
「何としてもです」
ここでは強い決意も見せる彼だった。
「私達は春まで共にいます」
「そうしろ」
父は茶を前にして腕を組んで述べた。
「いいな」
「はい、春まで何があろうとも」
そのだ。春になってもだというのだ。
「私達は三人でいますので」
「三人か」
「はい、三人です」
また言う義正だった。
「真理さんと。そして」
「義幸だな」
「あの子と共に」
だから三人だった。我が子も入れてだ。
「そうします」
「時には限りがあれどもですね」
「そうです」
その通りだとだ。義正は母の言葉に答えた。
「時が限られていても。それでも」
「実りある時を過ごしているか」
「そうしています」
まさにそうだというのだ。
「私達は今は」
「冬になり春になり」
「そして夏になってもです」
「今はその夏だ」
父は腕を組んだまま我が子に話す。
「そしてその夏もだな」
「はい、実りある時を過ごしています」
「時はだ」
「時は」
「今だけのものだ」
父としてだ。このことも話したのだった。
「一瞬で終わりそして過去になる」
「だからこそこの時をですか」
「人は確かに生きるべきだ。しかし」
父はさらに言った。
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