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白粉婆

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第三章

 万里花は老婆に酒とつまみを持っていった、この日は老婆はこの二つを口にすると勘定を払ったのだが。
 レジを受け持った紗季は万里花のところに戻って冷静さを保ちながら言ってきた。
「あのお客さん最初小判出してきたわ」
「小判って」
「その後は寛永通貨出したし」
「教科書に出て来る?」
「それをね、その後で伊藤博文さんの千円札出したし」
「それ昭和の頃の紙幣よね」
 万里花も紗季の話に驚いて言った。
「最初の二つなんて」
「内心びっくりしたわ」
「そうよね、やっぱり」
「それから普通の紙幣出してくれたけれど」」
「野口英世さんの」
「そうだけれど」
 それでもと言うのだった。
「小判や寛永通貨って」
「何時の時代なのよ」
「今のお金じゃなかったとか言ってしまったけれど」
 紗季が言う前にというのだ。
「そうしたけれど」
「そんなお金出してきたの」
「しかも万里花の言う通り白粉の香りが」
「凄かったでしょ」
「近くで見たらお顔本当に真っ白だったし」
「何は凄いお客さんよね」
「何かとね」
 紗季は万里花にこう返した、とにかく二人にとっては驚くべき客だった。しかもこの老婆はこの日だけでなく。
 次の日もその次の日も店に来た、それも同じ時間に。
 それでだ、紗季は万里花がシフトに入っていなかった日に来た老婆のことを学校で彼女に話した。二人共今は通っている高校の制服で黒いブレザーと赤いスカートにネクタイという恰好だ。そこから更衣室で体操服に着替えていて二人共スカートを穿いたまま体操服の下の赤い半ズボンを穿いている。
「昨日もあのお婆さん来てたわ」
「そうだったの」
「それも日本酒何本も頼んでおつまみもね」
「かなり頼んだの」
「ええ、枝豆の他にカルパッチョに。あと豆腐ステーキも」
「それもなの」
「全部注文して飲んで食べてたわ」
 そうだったというのだ。
「美味しそうに」
「そうなのね、何かね」
「お酒好きな人よね」
「ええ」
 そうだとだ、万里花はブレザーを脱ぎつつ紗季に返した。
「毎晩着て」
「本当にね」
 紗季も応える、ブラウスを脱ぐと白いブラに包まれた見事な形と大きさの胸が姿を現わした。脱いでも凄い。
「飲んでてね」
「飲むのは日本酒だけで」
「ええ、それだけでね」
「色々気になる人ね」
「あの服装といいね」
 昔の日本の着物を着ていてというのだ、編み笠にしてもだ。それに履いているものも草履と足袋なので余計にだ。
「白粉もね」
「お顔を真っ白になるまで塗ってて」
「何かそれって」
 その白粉の使い方についてだ、万里花はこう言った。万里花もここでブラウスを脱いだが赤いブラに包まれた胸は紗季程ではないが大きいし形もいい。
「昔の花魁さんよね」
「ああ、時代劇に出て来る」
「そんな風よね」
「そうね、それに小判も出したり」
「何か不思議なことこの上ない人ね」
「何者なのかしら」
 紗季はこうも言った。
「あの人」
「ううん、今の人かしら」
「そう思えるわよね」
「どうもね」
 こうした話をしていた、そして。 
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