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鬼妹

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第二章

「お行儀よくね」
「俺もなんだ」
「当たり前でしょ、人様の目があるのよ」
 それでとだ、女の子は男の子に厳しい声で言った。
「それならよ」
「人様に恥ずかしくない様にだね」
「ちゃんとしないと駄目よ」
「わかったよ、じゃあね」
「ええ、今から食べましょう」
「じゃあ今から注文するな。あれっ」
 ここでだ、武は玲菜を見て言った。
「諸星じゃねえか」
「いらっしゃいませ」
 まずは店の挨拶で返した玲菜だった、そして。
 そのうえでだ、武にあらためて言った。
「今はバイト中だから」
「それでか」
「店員とお客様ってことでね」
「相手してくれるか」
「そういうことでいいわね」
「ああ、それじゃあな」
 玲菜はこうした仕事と学校、それに家でのことはしっかり分けるので今は店員と客の立場で武に応えた。そしてだった。
 武の注文を受けてカウンターのガラスケースの中にあるドーナツを出して紅茶を用意してもらった。そのうえで。
 武の弟妹達とのやり取り、客席の一つでのそれを見た。見れば。
 女の子は席でもだ、彼と弟に言っていた。
「肘つかないね」
「おっと、しまった」
 武は妹の言葉で肘を戻した。
「食ってる時はな」
「そう、肘をつかない」
「そうだよな」
「あとあんたもよ」
 今度は弟に言った。
「口一杯に入れないの」
「わかったよ」
 男の子も姉に応えた。
「じゃあ」
「そうよ、お行儀よくね」
「食べないとな」
「そうしないと」
「駄目よ」
 このこと言うのだった。そしてだった。
 女の子は玲菜が見ている前で武と弟に注意を続けつつ自分も食べていた、玲菜はその一部始終を見た。
 この時の彼女はドーナツ屋の店員だった、だが。
 次の日学校でクラスメイトとしてだ、玲菜は武に尋ねた。
「昨日のことだけれど」
「ああ、ドーナツ屋でな」
「妹さんに随分言われてたわね」
「いつもなんだよ」
 武は玲菜に笑って返した。
「妹にはああしてな」
「言われてるの」
「そうなんだよ」
「噂には聞いてたけれど」
 こう前置きしてだ、玲菜は武に言った。 
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