魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epica9-Bザンクト・ヒルデ魔法学院・学院祭~Time to enjoy~
†††Sideアインハルト†††
本当はもっと練習をしたいのに、ここ最近はヴィヴィオさん達と同様に学院祭の準備などで一向に練習の時間が取れない。ですがその憂いも今日の学院祭が終わるまで。私の所属する5年C組の出展物は、グランドの一角に設けられた迷路内で行うお客さんの対抗ドッジボール。
(運動になるかどうかという話になると、なるとは言えますが・・・)
このゲームはボールの投擲から捕球や回避、敵味方の判断など、やる事考える事が多いので、瞬発力や思考力などは鍛えられるのですがもっとこう・・・スパーリングや、ヴィヴィオさん達から教わったミット打ちというのをやりたい。ミット打ちは拳打の角度を調整しやすいですし。
「お疲れ様、アインハルトさん! 休憩挟んだ後に次のお客さんとの試合があるけど、辛かったらちゃんと言ってね?」
迷路から休憩所まで戻り、体作りに重要ないろいろを詰め込んだ特製ジュースを飲んで水分補給。そこに級友の委員長からお気遣いの言葉を貰いましたが、「大丈夫です。問題ありません」と答える。普段の練習量の1/3ほどしか動いていないので、お昼頃まで通しで参加しても問題ない。
「そ、そっか。それじゃあ次の試合までゆっくりしていてね」
「ありがとうございます」
また別の級友へ「お疲れ様!」と労いの言葉を掛けていく委員長を見送って、明日から再開される練習日に思いを馳せる。そして5分という休憩時間はすぐに終わり、「ではAチーム、準備お願いします!」と号令を掛けられた。AチームとBチームの二交替制を採り、1つのチームが試合、もう1つのチームが休憩を取ることで、万全なお客さんと試合を出来るようにする。
「よし、行こう!」
Aチームのリーダーであるアーロンさんの号令に他のチームメイトの皆さんが「おお!」と右拳を高々と突き上げた。私がそれをしなかった事に気付いたチームメイトのアナさんが、「アインハルトさんも♪ ほらほら♪」って、私の右手首を取った。
「は、はあ・・・。お、おおー」
「おおー!」
顔面への投球は違反というルールですが、故意でないにしてもあたる可能性は高い。使用されるのは軟らかいゴムボールとはいえ、投げる際はほぼ全力なので痛みを伴う。そのために顔面を護るヘッドギアとゴーグルを装着。迷路の入り口に戻ると、ちょうど試合を終えてきたBチームと会った。リーダー同士が「お疲れ~!」と手を打ち付け合うと、他のチームメイトの皆さんも続いて打ち付けあった。
「えっと、あの、ストラトスさん、ハイタッチ、い、いいかな?」
「え? あ、はい」
試合をした後だからでしょうか、頬を赤く染めたアドルフさんと手を打ち付け合う。彼は私の横を通り過ぎた後、「よし、よし!」とガッツポーズを繰り返した。よほど先ほどの試合で良い成績を出せたのでしょう。
『それではダンジョンドッジの3戦目を開始します! 3戦目の挑戦者は・・・え? うそ、これホント?』
ゲームを盛り上げ、なおかつ見学者を増やすためのマイクパフォーマンスを行うベッティさんが困惑の声を発した。その様子にチームメイトが「なになに?」と小首を傾げ合っている。
『し、失礼しました! えー、3戦目の挑戦者の発表です! なんと現役の時空管理局員! しかもかの有名なチーム海鳴からの参戦です!』
一瞬で騒然となる中、私の心臓はドクンと力強く跳ねた。ヴィヴィオさん達とともに練習する事が決まってから、ヴィヴィオさんやフォルセティさんのご家族とは未だにお会いに出来ていない。
(ですが学院祭なのですから、ご家族が招待されていると考えるのは普通・・・)
クラウスの記憶の中にある守護騎士ヴォルケンリッターの皆さん。あの方たちの事はルシリオンさんと同様、クラウスの記憶を受け入れた頃にテレビで観て知っていた。クラウスに代わってお会いしてみようかと考えた事もありましたが、クラウスを憶えていないかもしれないと思い断念した。
『ミッド首都防衛隊所属、アリサ・バニングス一等陸尉! 本局技術部所属、月村すずか技術主任! ミッド首都航空隊所属、八神シグナム一等空尉! 本局戦技教導隊所属、八神ヴィータ二等空尉! この4名が、我らが5-Cが挑戦します!』
守護騎士の騎士シグナムと騎士ヴィータのお2人が居る。その強さはクラウスの記憶の中に鮮烈に残っている。バニングス一尉や月村技術官の事もテレビで拝見したことがある。4人とも圧倒的に格上な相手。
「すごいすごい! 有名な局員さんばかりだよ!」
「5人対5人がルールだけど、4人チームになってくれてすごく助かるよね」
「現役でしかも戦闘に特化してる騎士タイプが3人でしょ? あたし達じゃ手も足も出ないよ」
「だ、大丈夫! こっちにはアインハルトさんが居――って! アインハルトさん、震えてるけど大丈夫!?」
マギーさんにそう言われて、初めて自分が震えていることに気付いた。アーロンさんやハワードさんやメグさんも「大丈夫!?」と駆け寄って来てくれた。
「医務室に行く!?」
「保健委員を呼んで来ようか!?」
「アインハルトさんの代わりを探してくるよ!」
そう慌てだす皆さんに「私は大丈夫です! 嬉しいんです。名のある騎士と戦える事が・・・!」と今の気持ちを伝えた。惜しむらくは格闘技での試合でないことですが、それはカルナージ合宿まで取って置きましょう。
「そ、そっか。それは・・・頼もしいね・・・うん」
「さすがアインハルトさん」
「そうだよね。相手が有名な局員だからって、呑まれることないよ!」
「魔法戦じゃ勝てないにしても球技なら勝てるかもだし!」
私の自分勝手な言葉に鼓舞された皆さん。申し訳ない気持ちがありながらも、今回は私の気持ちを優先させてもらう。迷路の入り口付近に整列したところで・・・
『では改めてルール説明を。各選手はボールを4球まで所持します。挑戦者は赤色、C組は青色です。迷路内で相手選手に遭遇したら、相手が気付いてなくても当てて貰って結構です。当たった選手はヒット宣言をして、ゼッケンを外して迷路外へと避難してください。敵味方関係なく避難中の選手に当てた際、故意ではなくとも強制失格となりますのでご注意を。壁や床でバウンドしたボールに当たった場合、それは無効となります。ボールを使いきった際、同チームの色であれば迷路内に落ちているボールを拾って再使用も可能です。相手のボールをキャッチした場合、キャッチしたボールであれば一度限り自チーム効果を認めます。そして試合の模様はモニターで迷路外に発信されていますので、不正は出来ないのでご注意を』
挑戦者に対してのルール説明が行われる中、ウエストポーチにボールが4球入っている事を確認して、いざ戦場へ。
『各選手迷路エントランスで待機してください。・・・カウントダウンを開始します。5、4、3、2、1、GO !!」
号令に合わせて迷路内へと突入する。入ってすぐに5つの通路に分かれる小さな空間があり、私たちは「勝ちましょう!」と頷き合ってそれぞれ別の通路へと入る。何度目かの進入のため、どこが行き止まりかなどは憶えてしまっている。でもいつ目の前の角から挑戦者が現れるか、という緊張感は衰えない。
『あーっと! C組から早速脱落者が出ました! 挑戦者の月村技術官、なんというアクロバットな回避からの投球! C組ハワード君、成すすべなく撃沈!』
最初の脱落者は味方だった。さらに『続けてC組メグさん! バニングス一等陸尉の前に敗れる!』と2人目の脱落者が出たことを報せるアナウンスが入った。これで3対4。人数的に逆転された状況。
「負けていられませんね・・・!」
歩く速度を落とし、目の前に続く通路の奥の気配を探りながら進む。そして「お?」と角から姿を見せたのは、「騎士ヴィータ・・・!」だった。記憶やテレビで観たとおりの小さな女の子。でもその強さは桁違い。
「おー! 碧銀のツインテールに青と紺の虹彩異色! お前がアインハルトか!」
「え、あ、はい。はじめまして、紅の鉄騎ヴィータ。ベルカ古流武術・覇王流、アインハルト・ストラトスです」
守護騎士としての二つ名を口にすると、「あー、それはもう名乗ってねぇんだ」って苦笑いをした後、「んじゃ、こっちも自己紹介。八神ヴィータだ」って名乗っていただいた。
「っと、そうだ。いつもウチのフォルセティが世話になってんな、あんがと」
「いえ。私も大変お世話になっています」
騎士ヴィータと深々とお辞儀しあった後、「じゃあ、やるか!」と騎士ヴィータはポーチより赤いボールを両手に1球ずつ取り出した。私は青いボールを1球だけ取り出す。
「とりあえず、あたしとお前だけでやる。シグナム達が合流しても、一切手を出させないから安心して良いぞ」
「それはまるで、私の級友が全滅することが確定した、と言っているように聞こえますが?」
騎士ヴィータの言葉にそう返したところに、『おーっと! なんとバニングス一尉が撃沈! アーロンさんとアナさんの連携が綺麗に決まった!』とアナウンスがが入った。
「はあ!?」
『えー、ここでバニングス一尉からメッセージです』
『マジでごめん! しくじったわ!』
「マジで何やってんだ!」
バニングス一尉のメッセージのすぐ後に、『っとここで! C組のアーロンさんとアナさんが、月村技術官とシグナム一尉の前に敗れた! これで残るC組はアインハルトさんのみ!』とアナウンスが入った。
『そんなアインハルトさんは今! ヴィータ二尉と接敵中! さぁ、どう戦うのでしょう!』
「つうわけで、これで終いだ!」
騎士ヴィータが右手に持つボールを真上に放り投げた。咄嗟にそのボールに目を向けそうになりましたが、騎士ヴィータの左手にはもう1球握られている。視線を逸らした瞬間に投げられては回避しづらい。
「おらっ!」
投げられたボールは真っ直ぐに私の元へ向かってくる。避けるのは容易いですが、そのような簡単な真似はしたくない。ならば・・・。
(覇王流の防御術で、騎士ヴィータの意表を突く・・・!)
――覇王流・旋衝破――
ボールの威力や速さを一切殺さずに受け止め、そのまま騎士ヴィータへと投げ返す。騎士ヴィータは「おおっと!」と投球した体勢を無理やり捻って回避した。
「今のは旋衝破か・・・? つうか、なんで持ってるボールを投げなかった? 体勢を崩してた今、当てるのはそう難しくなかったはずだが?」
「あっさり終わってしまうのは勿体無いと思ったので・・・」
これまでの挑戦者の方々は、言っては失礼ですが弱かった。でも騎士ヴィータなら、さらにこの場を凌いだ先に待ち構えているであろう騎士シグナムなら、もっと熱い戦いを出来るはず。
「あー、そういうタイプか。んじゃ悪い事しちまったな」
そう言った騎士ヴィータが「あたしの勝ちだ」と宣言した直後、私の肩にポヨンと赤いボールが当たって跳ねた。床に転がる赤いボールを見つめる。何が起こったのか解らなかった。
「油断大敵だぜ? 自分の技を過信しすぎたな。アインハルト・ストラトス」
『あああああ! C組最後のアインハルトさん脱落ーーー!』
そのアナウンスで、私は負けたのだと理解した。私が遅れて「ヒット・・・」と右手を挙げると、『挑戦者の勝利で~~~~~~すッ!!』と勝敗が決した事を確定させるアナウンスが流れた。
「負けてしまいました・・・」
「悪いな。後の客を待たせるのも悪いと思って、すぐに勝ちに行っちまった」
「あ、いえ。そうですね、時間制限があったのを失念していました・・・」
お客さんの回転率を上げるため、1ゲーム5分としていたのでした。肩を落としていると、「んじゃ、また挨拶しに行くからな」と騎士ヴィータが踵を返した。その後姿が迷路の陰に消えるまで見送った後、私も迷路を出た。そこでチームメイトと合流する。
「いやぁ~、強かったね~」
休憩所に戻って私たちの試合の映像を視聴しての反省会。私の敗因をこの目でしっかり見届ける。騎士ヴィータが真上に放り投げたボール。それは直上ではなく、私の立つ位置へと落ちるように僅かに弧を描いていた。その場から一切動かなかった私に当たるのは当然の結末だった。
(旋衝破ではなく回避行動を選択していれば、また違った結末を迎えていたのですね・・・)
†††Sideアインハルト⇒イリス†††
「あっれ~? プラダマンテってどこに居るわけ?」
みんなと別れて、学院に勤めてるプラダマンテを始めとした知人に挨拶するわたしなんだけど、どうやってもプラダマンテだけと逢えない。シャッハから、初等科と中等科の校舎を見回ってるって話なんだけど・・・。
「通信や思念通話で呼び出すのもな~・・・」
向こうは仕事なんだし、わたしの都合で邪魔するのはさすがに気が引ける。これならなのは達と回るついで、ってことにすれば良かった。ひとり寂しく賑やかな敷地内を歩いていると、「ん? あのウサ耳女子って・・・」見覚えのある少女2人が視界に入った。1人は黒いウサ耳、黒髪は右サイドテール、黒いセーラー服。1人は白いウサ耳、白髪は左サイドテール、白いチャイナドレス。
「ルルスとフラメルじゃん」
古代ベルカ一の大国イリュリアの技術を完全に継承している科学者、ミミルさんの使い魔であるルルスとフラメルに間違いない。声を掛けようと思って後を追っていくと、「あ、プラダマンテ」が数人のシスターと何か話してた。仕事の話なんだろうけど、そこにルルス達が入る理由がない。
(う~ん・・・。気になるけど・・・)
声を掛けようか迷っていたところで、「あの・・・」と肩に手を置かれた。普段なら背後の気配くらいすぐに気付くんだけど、目の前に集中+気配を感じ取れないほどの達人ということもあって、「ひゃい!?」ってマジで驚いた。
「うわっ!?」
わたしが大きな声を出した所為か、向こうも驚きの声を上げた、振り返ればそこに居たのは「キュンナ・・・!?」だった。以前はショートだった灰色の髪も今や腰あたりにまで伸ばしたロングヘア。服は私服みたいだけど・・・。
「どうしたの? キュンナも招待されたの?」
「だったら良かったんですが、残念ながらお仕事ですよ、イリス先輩。あたしのゲルブ・クリュザンテーメ隊は、私服で警備するように上から指令が下りたので」
「あー、そうなんだ」
学院には武闘派シスターが大勢居るんだけど、まぁ警備戦力は大いに越した事はないから。なるほどって頷いたついでに「ところで、プラダマンテ達って何してるんだろ?」って聞いてみた。キュンナも警備担当なら、学院警備主任の役も担ってるプラダマンテを始めとしたシスター達が集まってる理由を知ってるんじゃないかな~って・・・。
「はい?・・・あぁ、今日の警備担当のシスターの集まりですよ。あたしもこれから参加します」
「あ、そうなんだ。じゃあルルス達は・・・?」
「ご存知かと思いますけど、教会はミミル女史にデバイスなどでお世話になっています。おそらくですけど、シスターの内の誰かがデバイスを預けていて、使い魔のお嬢さん方が届けに来た、のでは?」
わたしはスカラボばかり利用していたから、教会とミミルさんの関係の事を忘れてた。だからわたしは何の疑いもなく「そっか~」って納得した。キュンナに「挨拶していきます?」って聞かれたけど、仕事してるなら「また今度」ってことにしておく。
「そうですか。ではあたしはこれで」
「うん。あ、そだ。プラダマンテに伝言お願いできる?」
「もちろんです。イリス先輩が騎士プラダマンテに挨拶をしに来ていたと伝えておきます」
「ありがとね」
キュンナと手を振り合って別れた後、なのは達との合流までどうしようか、って考える。思念通話で連絡を取ってみようか。
「お! アインス達をはっけ~ん!」
融合騎カルテット、アインスとアイリとリインとアギトの4人の姿を見つけた。他のみんなの姿はないみたいね。アインス達に「おーい!」って手を振りながら駆け寄る。
「シャルさん! ご挨拶周りはもう済んだです?」
「残念ながら仕事中だったよ。あなた達はどうしてたの?」
「出店をブラブラしてた」
「食べ物の誘惑がすごすぎて、さっきからお腹が鳴りっぱなしなんだよね・・・」
アイリがお腹を押さえてガックリ肩を落とした。なのは達とは、イクス達3年生全クラスが協同で開いてる喫茶店にお昼に集合する予定なんだけど・・・。でも「さすがにそれまで飲まず食わずじゃなくてもいいんじゃない?」って思う。リインだって別れる前にそんなこと言ってたし。
「そうなんだけどね。一度食べ始めたら止まらなそうだし」
「そこはアインスに止めてもらえばいいのに。ねえ、アインス?」
「ああ。遠慮なく食べると良い。腹八分目になる前に止めてやろう」
「それは若干遅すぎるような気もするぜ」
なんて喋りながら歩いてると、「かわいい~!」って少し離れたところから驚きの声が上がった。リインが「なんでしょう?」って興味を示したみたいで、そっちに行ってみると女性客がたむろしていた。
「小さいリインとアギトなら間を縫って行けるんじゃない?」
「はい!」「まぁいいか」
わたしやアインスやアイリは体が大きいからダメだろうけど、成長しているとは言えそれでも未だに子供サイズな2人なら隙間を進めると思う。2人がお客さんの中を進んですぐ、「可愛い❤」って声を上げた。
『どうしたのだ2人も?』
アインスがわたし達に繋がるように思念通話でそう聞くと、『小さなモコモコなヒツジのぬいぐるみが隊列を組んで行進してる!』って興奮気味なアギトから返答があった。
『みんなイギリスの近衛兵みたいな格好で、騎兵銃を携えてます!』
モコモコ羊のぬいぐるみ、騎兵隊のような格好。ふと、アギトとリインの言葉に引っ掛かりを覚えた。
「アインス、パンフレット貸して」
「ん? ああ」
パンフレットを借りて、第3学年の欄を見る。コスプレしてる生徒たちの中に、サービスを受けられるスタンプを持ってる特別キャラが居る。そのうちの1つにモコモコ兵隊長なるものがある。
『リイン、アギト。近くに同じ衣装を着た生徒いない?』
『はい、居ます。ヒツジの着ぐるみと近衛兵の衣装を着た男の子です。一番後ろに付いて歩いてるですよ』
『その子スタンプ持ってると思うから、声を掛けてくれない?』
『了解です』
それからちょっとして、「ただいま~」ってアギトとリインが戻ってきた。そして「スタンプ押してもらいました♪」と言ってポイントカードをわたし達に見せてくれた。
「アインスやシャルさんも押してもらいますか?」
「いや。スタンプは本当の子供たちが押してもらうのが一番良いだろう。我われ大人は、こういう時に金を払うのが良い」
「だね。一応アイリ達は高給取りだし。チャリティにいっぱいお金を使おう♪」
ヴィヴィオたち第3学年に悪いけれど、大人はお金を落とすことにしたよ。そういうわけで、わたしとアインスとアイリ、リインとアギトの5人はお腹が膨れない程度に食べ歩きをすることになった。
「パンケーキ! クレープ!」
「ドーナツ! コーンドッグ!」
「待て待て。どれも粉食ばかりではないか。却下だ」
「アイスクリームとかにしておこうか」
「パンフレットの地図によると、ジェラート屋は3店舗あるな~」
アインスから借りたままだったパンフレットの出展物一覧を見る。外に1店舗、中等科と初等科に1店舗ずつ。どれにしようか、って考えようとしたら、「全部回れば良いんだよ」ってアイリがサラッと言ったけど・・・。
「ま、いいか。ジェラートなら何杯いただいても満たされないっしょ。どう? 八神家長女のアインス」
「ああ。その代わり、帰った後はしっかりと歯磨きする事。いいな?」
「はいです!」「おう!」
お姉ちゃんしてるアインスの姿を微笑ましく見守った後、「じゃ行こう!」とわたしは歩き出した。
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