天国と地獄<中世ヨーロッパパロディー>
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3 小さくつぶやいたことほど、聞こえているものだ。
とりあえず、銀時と一緒に聖書のように分厚い本を開き、作り方を確認した。
_ 月長石の粉末 30g
ヘレボルスのエキス 適量
一角獣の角 15g
山嵐の針 3本
_ 作り方
1.月長石の粉末を、薬が緑色になるまで入れる。
2.薬が青色になるまでかき回す。
3.再び月長石の粉末を紫色になるまで入れる。
4.薬がピンク色になるまで煮込む。
5.ヘレボルスのエキスを、ターコイズ色になるまで垂らす。
6.薬が再び紫色になるまで煮込む。
7.山嵐の針の粉を赤色になるまでしきで激しくこしながら入れる。
8.オレンジ色になるまでかき回す。
9.山嵐の針の粉を、薬がターコイズ色になるまで入れる。
10.薬が紫色になるまで煮る。
11. 一角獣の角の粉を、薬がピンク色になるまで鍋に入れる。
12. 薬が赤色になるまでかき回し、紫色になるまで煮込む。
13. 月長石の粉末を、薬が灰色になるまで入れ、薬がオレンジ色になるまで煮込む。
14. 山嵐の針の粉を、薬が白色に変わるまで鍋に入れ、再びオレンジ色になるまで煮込む。
15. 薬が白色になるまでさらに、山嵐の針の粉を加え、かきまわす。
16. 弱火で煮て、7滴のヘレボルスのエキスを入れ、軽く銀色の湯気が立ったら完成。
これができれば、O.W.L. の試験はパスする実力を持てるので、将来に役に立つだろう。将来は、白の騎士団を志望しているので、役に立つはずだ。私の周りにいる仲間たちは皆、そこを志望しているので、みんなと同じ職場につけるのは、とても嬉しい。
先輩のミツバさんが来年からそこで働くらしいので、今度皆で、いってらっしゃいパーティーを開催する予定だ。
書かれた材料を入れ、鍋をかき混ぜ続けること、30分。
さすがに手でかき混ぜ続けるのはキツかったので、杖に魔法をかけることにした。
隣の銀時は、とても苦戦しているようだったが、ヘレボルスを入れ終えた私の鍋からはもう、うっすらと銀色の煙が立っていたので、鍋を火からおろし、教授の机へ向かう。
_「よくできとる。後は薬を瓶に詰めてラベルを貼ったら、あなたはもう部屋を出てよろしい。」
ありがとうございます、と言って私はその薬を瓶に詰めてラベルを貼ると、まだ隣で苦戦してる銀時にお疲れ、と言って部屋を出た。
途中、アドバイスを求められたので、杖に魔法をかけるといいよ、とだけ言うことにした。
部屋を出てしばらくすると、高杉に捕まった。
_「オイ、零杏。久しぶりだなァ。
オレを無視するたァ、上出来じゃねェか。」
_「あらおはよう、晋助。無視してるつもりはなかったの。ごめんなさいね、」
と言って、逃げようとしたが、上手くいかなかった。
手首をつかまれて壁に押し付けられる。
いわゆる壁ドンである。
_「お前、学年末のダンス、オレと組まねェか?
ついでに、そのまま結婚しちまおうぜェ、」
と、耳元で囁く。
せっかくならこれを別の、晋助を本命な子にすれば効率的なのに、と心の中で毒づく。
そう、高杉の実家は悪魔族きっての名門であり、純潔のヴァンパイアの家系である。
ほかのキレイな名門悪魔族のお姉さま方を差し置いて、なぜ私にばかりアプローチするのか。
私には理解しがたい。
_「ありがとう、晋助。ちなみにそれをお断りしたらどうなるのかしら?」
と、そろりそろりと後ろに下がりながら冷や汗をかいている。
_「お前に拒否権はねェ。オレは何としてでもお前を嫁にもらうつもりだ。」
_「そう、でもお父様がお許しになるかしら?
こんな素性も分からない娘と結婚だ、なんて。」
そう、私は物心着いた時から「お登勢」という女に連れられて育てられたが、戦争で彼女とはぐれてさまよっていたところを、今は亡き、松陽先生に拾われた。
この学校に入学するまで、松陽の開いていた塾で勉強していた。まぁ、孤児院と塾が一体化した施設だったが。もちろん孤児だけではなく、一般の子も一緒に学んでいた。
その時に出会ったのが、銀時、桂、晋助だった。
私にはそれまで、家族と呼べる家族がいなかったが、彼らと出会ってから私の人生は変わった。
人を信じるようになったし、何より「友達」という存在がどれほど大切なものか、を知ることができた。
_「んなこたァ、どうでもいい。どうせ次期当主はオレだから、心配はいらねェ。」
_「そう、それなら未来は安泰してるじゃない。誰か素敵なお嫁さん(私以外)をもらって幸せになって。私は…自分の未来は自分で切り開くわ。」
と、晋助を何とかかわして、その場を去った。
私もずっと引っかかっていた。なぜ晋助が私にここまで執着するのか。
お登勢や松陽が言っていたこと、そして組み分け帽子が言っていたこと。
_「お前には、2つの寮がふさわしい。グリフィンドールか、スリザリン。
グリフィンドールには、勇気を兼ね備えたもの。そしてスリザリンには偉大になる素質を持っているもの。このタイプは珍しい。君には2つの血が流れているようだ。だが、寮を選ぶのは君次第。
すべては君の頭の中である。」
_「妹君はあんな生活をしているのに…なぜ姫様にはこんな仕打ちをなさるのでしょう?」
「姫様」?
_「あなたは、来るべくしてここに来た。求めなさい、そうすれば与えられん。
零杏、あなたはその幼い体にたくさんのものを背負っている。その血が動き始めた時、あなたは…」
「血」?
このセリフは、お登勢と松陽先生がそれぞれ、私が眠りに落ちるギリギリのところで言っていたものだ。なぜ皆、あのようなことを言っていたのか。
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