銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません
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第八十六話 悪巧みは巧妙に
あけまして、おめでとうございます。
今年こそは良い年でありますように。
久々の悪巧みに筆が進みました。
1日〜5日まで仕事です。
明日の更新は無理だと思います。
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第八十六話 悪巧みは巧妙に
帝国暦480年8月7日
■オーディン 帝国軍士官学校
フリードリヒ四世がエーレンベルク元帥と共に宮中警備隊庁舎に向かいつつあり。
テレーゼがシュザンナに言い訳を考えながら誤魔化しをして居るほぼ同時刻。
士官学校でも朝の運動が始まっていた。
今日は朝から聞こえるはずのオフレッサー大将のだみ声が聞こえなかった為、
事情を知る一部の者達以外は不思議に思いながら運動場で整列を行っていた。
校長や教官は既に今朝の内にオフレッサー大将は会議に出る為と誤魔化して、
今日は士官学校には来ない旨を知らせられていた為動揺はなかった。
又装甲擲弾兵は既に箝口令がひかれており、
また襲撃自体を撃破済みであり何の被害もないと知らせられていた為に動揺は全然無かった。
逆に古参の連中は副総監の家に入る馬鹿が居るのかと笑い話になる始末であった。
嫌々起こされて校庭へ出てきた、フレーゲル一党はオフレッサーが今日居ないと言う事を知ると、自分たちの嫌がらせが効いたと喜んでいた。
「クラーマー、やったようだな」
「フレーゲル殿、オフレッサーが居ないことが証拠ですな」
「校長は会議だと言ってますが、恐らく家に慌てて帰ったのでしょう」
「ヒルデスハイム、そうだな」
「あとは、伯父上に頼んで校長に圧力をかけて装甲擲弾兵には帰って貰おう」
「フレーゲル殿、そうですな是非ブラウンシュヴァイク公へお願いいたします」
「クラーマー、卿の功績は素晴らしいモノだ、近いうちに伯父上に紹介してやろう」
「フレーゲル殿、是非宜しくお願いいたします」
軍隊式体操を適当にやりながら、上機嫌でわが世の春を謳歌している、フレーゲル一党であった。
■オーディン オフレッサー邸
午前6時
昨夜の襲撃を軽く撃退した、オフレッサー家では普通に朝が来て起床し運動を行っていた。
オフレッサー大将がズザンナと共に戦斧を振りながら汗をかいていると、
メイドのイルマがエーレンベルク元帥からTV電話が来たことを伝えに来た。
「旦那様、エーレンベルク元帥閣下よりお電話です」
「うむ、昨日の事であろうな、直ぐに行く」
オフレッサーは汗を拭きながら電話室に向かう。
TV電話には車の中からであった。
「エーレンベルク閣下、おはようございます」
「オフレッサー大将、おはよう」
「元帥閣下、昨夜の事ですかな?」
「そうだ、それに付いて昼から、ノイエ・サンスーシで会議を行うので参加せよ」
「はっ」
そう言って電話は切れた。
オフレッサーは、昼からか準備をせねばなと考えていた。
電話を終えた、エーレンベルク元帥を見ながら陛下が御苦労じゃったと仰っていた。
■オーディン ノイエ・サンスーシ 小部屋
会議前に皇帝、テレーゼ、グリンメルスハウゼン、ケスラー四者による会議の内容についてのレクチャーが行われていた。
「今回のオフレッサー邸襲撃はフレーゲル男爵の言葉を曲解したクラーマー憲兵副総監のスタンドプレーと言う事は明白です。又クラーマーはひたすら、ブラウンシュヴァイク公爵とフレーゲル男爵に示唆されたと言っております」
「ケスラーの言うとおり、録音や録画を見れば判りますね。
フレーゲル達は本来近所の嫌がらせ程度のことをしようとしていたようですが、
クラーマー中将がフレーゲルの頼みをブラウンシュヴァイクの頼みと勘違いし、
得点をあげようと大事件に発展したと言う事ですね」
「そうなると、クラーマーの処罰は勿論じゃが、フレーゲル男爵以下の者達に対する処罰も行わなければ成りませんの、ブラウンシュヴァイク公爵はフレーゲル男爵への監督不行ですかの?」
「そうじゃの、オットーを処罰するとしても、余りしすぎは良くなかろう」
「お父様、宜しいでしょうか?」
「テレーゼ何か考えが有るのか?」
「はい、今回の件を持って憲兵隊を徹底的に清掃する事と共にもう少し利用しましょう」
「利用とはなんじゃな?」
「下手に今回のフレーゲル一党の関与を表沙汰にすれば、喜ぶのはリッテンハイム候でありましょう。そうなりますと、ブラウンシュヴァイク公の勢いが減りすぎてバランスがとれなくなります」
「確かにそうなりますの」
「さらに、今回の憲兵隊の綱紀粛正で門閥貴族の中から反感を持つモノが出てくるでしょう。それをフレーゲルの罪を不問にする代わりに、ブラウンシュヴァイクに協力させるんですよ。そうすれば、リヒテンラーデでも反対出来にくく成るでしょう」
「成るほど、只単に罰してしまえば、恨みが残るだけじゃが、
助けておいて交換条件で協力させると言う訳じゃな」
「お父様、そう言う訳です。さらに貴族がエーレンベルク元帥に対して監督不行が有ると騒いでもブラウンシュヴァイクには何も言えますまえ、精々減給程度で大丈夫でしょう」
「エーレンベルクはようやってくれておる、罪には問いたくないからの」
陛下の言葉に頷く3人。
「フレーゲル一党は精々成績不良で1年ほど余計に士官学校へ居て貰う程度にしておけば良いかと思いますね、その程度の罰は必要でしょう」
「ホホ、確かにそうじゃの」
「後は、フレーゲル一党に対する盗撮盗聴なのですか、それがばれるとその後の行動に悪い影響が出ます。その為、一党の内誰か1人か2人の罪を完全に問わずに無罪放免してその者が盗聴盗撮して密告したと、フレーゲル達に勘違いさせるのが良いでしょうね」
「殿下、良い手ですそれなら疑心暗鬼になり気がつかない可能性が高くなります」
「憲兵隊の綱紀粛正した後で、悪事を暴いて広く臣民に発表致しましょう」
「しかしその様な事、軍の威信の低下につながるのでは?」
「威信の低下は、戦果で戻せます。それより評判の悪い憲兵隊をお父様が厳格に処罰したことを知れば臣民や下級貴族の支持を更に受けられるでしょう」
「儂の威信か、若き頃は欲しいとは思っていなかったが、
テレーゼが儂を担ぎあげまくるの」
「ですの陛下」
にこやかなフリードリヒ四世とニヤニヤ顔のグリンメルスハウゼンである。
「所でクラーマー一家は騒乱罪や反逆罪で極刑が行われる事になります」
淡々とケスラーが言う。皆がそうだなと頷くがテレーゼだけは違った。
「クラーマーですが、態と処刑前に脱獄させてフェザーン経由で叛徒に亡命させましょう」
「はっ?それじゃと厳罰にならんぞ?」
「お父様、私は別にクラーマーが気の毒だと言って逃がすのではないのです」
「どう言うことじゃ?」
「クラーマーは旧悪の為に処刑されるところを、憲兵隊残党によって脱走。
その後、フェザーン経由で叛徒共の所へ亡命した。
帝国で臣民を虐待していたクラーマーを護民軍を自称する叛徒共が受け入れれば、臣民はどう思うでしょうか?臣民は叛徒を更に信用しなく成るはずでは?」
「うむ、その考えはなかったの」
「確かに殿下のお考えは理にかなっております」
「廃品の有効活用ですな」
グリンメルスハウゼンの言葉に思わず、笑みが溢れてきたのは。死者が1名も出ずにいたからであろう。
「無論、旧残党にはアウリスの部下を紛れ込まして、叛徒へのスパイとして潜入させます」
「此処でスパイを入れるわけですね」
「ケスラーそう言う事です、命からがら逃げてきた連中にスパイが居るとは余り考えないでしょう」
まあ駄目なら駄目だけどねと思うテレーゼだった。
「して憲兵隊の今後じゃが、人事をどうするかじゃな、余り貴族の紐付きはいかんの」
「お父様、それなら、憲兵総監にグリンメルスハウゼンを、副官にケスラーを、副総監にモルト少将を、査閲官にケーフェンヒラーをそして実戦部隊をブレンターノに武装憲兵隊には装甲擲弾兵上がりの者を、充てるのが良いと思います」
いきなりの指名に驚く2人。
「私がですかな?」
「小官がですか?」
「そうです、貴族や軍人はこう思うでしょう。憲兵隊総監は70歳の惚け老人、
査閲官は俘虜上がりで心臓病の老人、副総監も爺さんとあれば油断するでしょう。
憲兵隊内部をアウリスの部下達で固めてしまえば、
サイオキシン麻薬の際でも更に動きやすくなるでしょう。
無論秘密諜報員や今の位置にいた方が良い者達はそのままで行けばOKでしょうね」
「確かに面白いかもしれんな、どうじゃグリンメルスハウゼン、やってみよ」
「はあ、判りました、この老骨に鞭を打って勤めましょうぞ」
「ふふ、アウリスは総監室で居眠りするんでしょ、
それで仕事をするのがケスラーで書類仕事はモルトなんだよね」
「ハハハ、グリンメルスハウゼン、そうなるかのー」
「閣下ではそうなりますな」
「そうだよね。ケスラー頑張ってね」
「テレーゼがケスラーに仕事を押し付けるのであろうに」
「お父様、酷いですね」
みんなが笑ってる。
「陛下そろそろお時間になります、既に会議室へエーレンベルク元帥以下関係者が集まっております」
「お父様、会議では襲撃のこととクラーマーと憲兵隊綱紀粛正についてのみでお願いしますね」
「ケスラーが付いて居るから大丈夫じゃ」
「お父様行ってらっしゃい」
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