少年は魔人になるようです
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第117話 修業は順調のようです?
Side 愁磨
「漸く来たか、超 凜音!!」
「主役は遅れて来ると言うだろウ、愁磨・P・S・織原!!」
「ちゃ、超さん……!?」
轟音に気を取られ、ネギが超の登場に驚く。フェイトを相手にしながら。
超の登場もそうだろうが、一番有り得ないのはネギなんだよなぁ・・・。何故よそ見しながら
互角に渡り合えているのか。
とは言え、まずは超なのだが、この状況で一人で来られても―――
バリバリリッ!
「ぐぅっ!!」
「横入りはいけないよ。順番は守らないと。」
「レディの扱いが色んな意味でなってないヨ!」
心配もそこそこに、自発的に動いてくれた新人神・トルメリアが超を引き離す。
あとこの場に来る可能性があるのは、あの二人。その為には・・・埒を開けないとだ。
「ファントム、用意しておけ。フェイト、代われ。」
「おぉお、漸く舞台袖に上がれますか!!」
「……仕方ないね。」
事態を動かさざるを得なくなった俺は、フェイトと交代し、ネギと相対する。
支援はそのままに≪救世主≫と≪崇神魔縁≫を起動、『アトロポスの剣』をバビロンから
取り出す。
と、隙と見たネギが融合魔法の雷槍を武装魔法として装備して先手を取って来る。
確か『巨神ころし』・・・だったか?
「中々槍の扱いが上手くなったじゃないか。まぁ、武器の才能が微妙なのは変わらんけど。」
「ぐ…!『解放 術式装填』!!」
ガシュンッ!!
遅延させていた『千の雷』を『巨神ころし』に装填し、速度と火力を上げて追撃して来る。
闘技場で見せた物よりは規模が小さくとも一対一の為の武装としては悪くはない。が、本来は
『雷の投擲』の効果で拘束し、そこに収束させる使い方だったのだろう。
・・・何と言うか、自分で追い込んでおいてなんだが、良く言えば臨機応変、率直に言うなら
器用貧乏すぎるのが、主人公らしくも主人公らしくない。
バチュンッ
「なぁネギよ、お前は本当に俺達を止められると思っているのか?」
「あ……当たり前です!その為に僕達はここに来たんです!!」
・・・・・・ん?これは、いや、まさかな?
「あぁ、そう言う事を聞いた訳じゃなくてだな。俺達をどうやったら止められるか分かって
いるのか、と、そう聞いたんだよ。」
「…え………?」
俺の今更な問いを、本気で分からないと怪訝な顔になってしまった。
本気か、マジなのか。ここに来て問答しないといけないのか。どこまで理解してくれている?
「お前ら、ここが火星を基盤とした仮想世界なのは理解しているんだよな?」
「………え、ええ。」
「それを創ったのがツェラ……『造物主』なのも把握しているんだよな?」
「わ、分かっています!!」
「ではこの世界を維持しているのが誰かも、分かっているんだな?」
「っ、それは……!」
「で、あるならば―――だ。」
ブゥン――
俺達の話に気を取られたネギパーティが動きを封じられたのを確認し、こちらの映像を
外に映し出す。
「管理者たる『造物主』や俺を殺せば、この世界は魔力切れで直ぐにも崩壊を始めるのも
知っていて、我々に挑んだんだろうな?」
「……ッ!」
苦虫を噛み潰したような表情のネギ、含め数名。流石に理解はしていたらしいのは一安心。
となれば、代案を用意をして対話する気ではいたんだろうか?
その割にはホイホイ戦争に乗っかって来て、今も戦闘一択なんだよな。まぁ嗾けた本人が
ツッコミ入れる所じゃないんだが。
「さてどうする。俺達は死ぬまで戦いをやめない。しかし俺達が死ねば世界は滅びる。
お前達は何をどうして、この世界を救おうと言うんだ?」
問いにハッと顔を上げるネギ。俺が問答する気であるのを察したようで、途端に元気になる。
俺としては、外の連中全員にも状況を把握して貰って士気下げるのが目的なんだけど。
「……この世界の管理者である貴方達を倒した場合の問題は、今発動しかかっている『初期化
魔法』と『世界を存続させ得る魔力量』だけ。そうですよね。」
「ああ、お前達が回避すべき最優先の問題はそうだな。」
「なら、僕達が憂う事は何もありません!既に解決策は携えて来ました!」
その目的を悟ってか、自信たっぷりに笑って、話を切り上げにかかるネギ。
反応が思ったのとまるで違うから少々戸惑ったが、無駄な問答をしなくて済んだと思えば、
悪くないだろう。とは言え、既にチェックメイトになって久しい訳だが。
「そうか、それは何より。だがそれも、第一条件をクリア出来てのものだぞ。」
「今からクリアしてみせます!!」
バチッ!
有言実行、『巨神ころし』を再装填し、至近戦闘の為に距離を詰めて来る。
この状況で絶望していないのは流石と言うべきか、最早周りが見えていないのか。
とは言え・・・久しぶりだ。
「採点してやろう、来い。」
「"ラステル・マスキル・マギステル! 貫け雷光!覆え暗雲!吹け疾火! 咲き誇るは
汝らが王の息吹!失意の希望 栄光の敗戦 闇の中に光持て 陽の下に影よあれ! 叶え、
彼方に!『祈れ真理の連奏・固定掌握』!!"」
ガキュンッ!
初手、ネギが選んだのは最上級強化魔法。身体強化をしつつ六属性付与するが、戦術魔法並に
魔力を喰う上に効果時間も短い。が、それを『闇の魔法』でカバーしたようだ。
それも、六属性を扱えるネギであるが故に可能な事。効果は何だったか・・・?
「"ラステル・マスキル・マギステル! 『天壌歌舞する天上の拳』!!"」
ドゴォン!!
「ああ、関連属性魔法の詠唱破棄のデメリット無効か。だが落第、使い方が違う。」
「くっ……!"『熾使よりの天剣』!『解放・術式融合』!!"」
中距離から雷拳で動きを止め、近接に持ち込みたかったようだが、失敗するやいなや距離を
取り、巨剣と巨雷槍を融合させ、投げつけて来る。
・・・こ奴、器用で頭も回るのに、ガンドルフィーニ並に頭が硬い。
「"天器『神も射殺す大いなる牙』!!"」
ガウンッ!
その魔力を馬鹿食いする戦術魔法二発分を使った超威力の武装魔法を、惜しげもなく投げる。
そう、俺が、"武装魔法"として作ったのをまんまと使いながら、誤った使用法で。
何故だ、何故そこまで行きながら俺の考えが理解出来ないんだ・・・!!
ガシッ!
「な「こんの戯けがぁ!!」どぅぶは!?」
自慢の魔法を鷲掴みにされて動きが止まった所に、槍の横薙ぎを食らって吹っ飛んで行く。
全くなっていない。今の一撃を受けたのも、魔法の二つや三つが利かなかっただけで、容易く
心を揺すぶられる。
「お前は俺と修業している間、なーにを見ていたんだ!寝てたのか!?普通、数か月もいたら
師匠の思考の方向性くらい分かんだろ!?」
槍を肩でトントンしながら近づくと、色々開いた口が塞がらないようで、アホ面引っ提げて
こっちを見ている。くそ、何故こんなにイラつくのか。だが今はぶつけずにいられん!
「まずは『天壌歌舞する天上の拳』と『熾使よりの天剣』!分類は!?」
ダン!
「は、はい!?せ、戦術級武装魔法……でしたけど……。」
「では戦術級魔法、及び武装魔法とは!?」
ダンダン!
「はい!三個中隊以上、若しくは戦艦を落とす、一発で戦況の優位性を上げられる魔法です!
武装魔法とは、鎧や武器のように自分に装備させ、強化魔法程ではありませんが持続力のある
魔法です!」
「ならこの二つの魔法の運用方法は!?」
「ま、魔力を注ぎ続けて持続させるのが基本運用ですが、戦術級なだけあって消費が――」
「オォンドゥルアァ!どうしてそこで諦める!?」
「すいません!?」
なんだか何時かの様な態度にすっかり戻ったネギと俺。
しかしそんな事を全く気にせず授業は続く。
「お前は何の為に『闇の魔法』を習得したんだ!『術式兵装』すればそんな問題解決するとは
考えなかったのか?」
「し、しましたけど、そもそも武装魔法は"兵装"も"装填"しても大した効果は――」
「お前は無駄に限界を決めるのが悪い癖だなぁ!何故『術式兵装』を"武装"しようと思わん!」
「じゅ、『術式兵装』を武装する……って、そんな無茶な「事が出来ずに何が主人公か!」
「そもそもお前は片腕に"装填"してんだろうが。同じ要領で、体の一部のみに『術式兵装』を
施すって考えには………至らなかったみたいだな。」
何を言っているのか僕には分からないよって感じで反論を考えてる顔をしている。
何故だろう、ここまで来ると俺の方がおかしいと思えて来たぞ。
「まぁいい、実践だ。」
Side out
Side ネギ
「"バル・ボル・ベルグ・バルホルス 『固定 右腕掌握』"!」
当たり前のように僕の魔法――即ち、魔法陣も構築せずに敵弾吸収の魔法を使われた僕は
笑うしかなかった。そして、自分が使う術とは違う現象を見る。
通常、掌に渦巻く『固定』された魔法が右腕に絡みついているのだ。
ガシュンッ!
「"右腕兵装『神殺し』"って所か。」
巨槍を装填して現出したのは、右手全てを覆う『天剣』を意匠とした鉄の腕甲と、光と雷が
螺旋に絡まった二又の槍。
僕の見てくれだけは派手な魔法と違う。破壊力を凝縮させた、本当に一撃必殺を目的とした
技だ。・・・凄い、やっぱりこの人は凄い!
「まぁこれは今アレンジしたからどうとは言わんが、これと同じ事をやる魔法を、お前は
間違って使用していた訳だ。ほら、やってみろ。」
「や、やってみろ…!?」
そんな事を急に言われても、今まで無理だと思ってたのに?
その前に魔法理論とかそう言う所から教えて貰わないと・・・なんて言い訳が通用する人じゃ
無いのは分かってる。
・・・使うのは間違いなく"天剣"と"天拳"だ。でも、どうやって片腕に・・・片腕だけに
二つ"兵装化"すればいいんだ?さっきみたいに融合しても、いきなり愁磨さんみたいに上手く
出来ないのは確実だ。僕に出来る事は―――
「ヒント。」
「へっ?」
「大層な技術だと思ってる奴が大半だが、『闇の魔法』なんてのは遅延させた魔法を強化に
使っているにすぎない。」
・・・びっくりした。
これまでの修業の中で、愁磨さんが"ヒント"なんて態々伝えて教えてくれたことはなかった。
僕らが気付くか、それらしい事を言ったり言わなかったりして惑わせて来ただけだったのに、
この最終局面で―――って、そうだ、ゆっくり修業してる暇じゃない!
せめて同じ技術を手に入れるんだ。
遅延魔法、遅延魔法だ。何がある?遅延、装填、魔力充填もそれに当たる。いや、少し見方を
変えれば『固定』もだ。僕に出来るのはこれだけ。
組合わせて、かつ同時に『掌握』する為には―――!
「"ラステル・マスキル・マギステル! 『天壌歌舞する天上の拳 固定』"!!」
ガンッ!
まずはこれからだ。
いつも通り『固定』してからが問題なんだ。ただ『掌握』したら『術式兵装』に
なるだけ。片腕に出来る装填でも魔力充填でも"魔法"のまま。
なんだ、簡単な事じゃないか!!
「"掌握装填"………!!」
なら、同時にやればいいだけ。右手に『固定』していた魔法を左手に持ち替え、何も捻りも
無い、急造の魔法で右手に巻きつけるイメージで叩き込む。
なんだ、これ・・・!今まで使って来た魔法の中で一番難しい!少しでも気を抜けば『掌握』
してしまいそうになるし、力を入れれば『固定』が不安定になる。
ダメか、一回体勢を整えた方がいいのか?
「戯け、この程度で及び腰になる奴があるか。」
「え……。」
「魔法を使う上で重要なのは"素質"・"研鑽"・"経験"だ。だがそれは必要なだけであって必須
じゃあない。いいか!魔法を使えて当たり前と思え!『前は無理だったけど』とか『きっと
今度こそは』なんて曖昧で弱気でウゼェ前振りはいらん!!」
呆然となる僕を鼓舞するかのように、愁磨さんが語り出し、叫んだ。
「『今なら出来る!!』だ!自分を信じろ!!」
「ぅ、う、おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
ギュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル!!!
発破を受け、僕は考える事をやめた。
戦いに直面すれば全力で当たってはいたけど、修業とか研究になると最初から力を加減して、
調整して、ってやり方しかしていなかった。
それは確かに失敗しても小さい。徐々に正解に近づけはするし、して来た。
そうだ、今はそんな時間は無い。だったら、初めから全力で立ち向かうしかなかったんだ!
"今の僕なら出来る"!!
「だからッッ!!!」
ガシュンッッ!!
右腕に絡まっていた締め付けが消えた。違う、今は僕の右腕がそれになった。
「"右腕兵装『掴む天拳』"……!!」
Side out
後書き
MHW発売より約一ヵ月、案の定遅れて申し訳ありません。
ガンランスとランスが楽しいのが悪い(殴)
まぁHRまだ15なんですけどね。碌にプレイ出来ていないのに何故更新まで遅くなるのかと。
インフル流行ってるので皆様もお気をつけて。アリヴェデ。
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