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レーヴァティン

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第四十二話 山伏その八

「そうなっているであります」
「まあ本来はです」
「こうしたでありますな」
「肉食妻帯も構わないというのが」
「仏教本来の考えでありますな」
「そう思います、拙僧は」
 こう峰夫に答えた。
「自分が食べる為の殺生や乱倫はもっての他ですが」
「頂いたり普通の愛情ならば」
「いいのです」
「そうでありますな」
「そもそも古来から寺の子はありましたし」
 つまり僧侶の隠し子である、実は幡随院長兵衛も実はそうした出生であるという説があったりする。
「無闇に禁じるのは偽善かも知れません」
「そうした考えもあるでありますか」
「そうも思いますし」
 だからだというのだ。
「こちらの世界や明治以降の我が国の様にです」
「肉食妻帯もいいことは」
「いいかも知れません」
「では」
「はい、般若湯をです」
「そして鯉も」
「頂きます」
 謙二は峰夫に楽しみにしている笑顔で答えた、そうして実際に買った大きな二匹の鯉を凍らせてその氷が溶けてからだった。
 店で調理してもらい食った、峰夫は鯉の刺身を食ってから言った。
「いや、まことに」
「美味いな」
「そうであります」
 英雄ににこにことして答えた。
「これは実に」
「この味ならな」
「いいでござるな」
「俺もそう思う、しかしな」
「しかしとは」
「もう季節からは外れているか」 
 鯉のそれとはとだ、英雄は刺身を食いつつこうも言った。
「味が微妙にな」
「落ちているでありますか」
「そう思った」
 食べてみてというのだ。
「その様にな」
「そうでありますか」
「俺はこう思ったが」
 それでもというのだ。
「鯉も旬がある」
「その旬でござるが」
 智は唐揚げを食べつつ英雄に述べた。
「今が」
「その旬の中でもだ」
「僅かにでござるか」
「旬が外れたのか」
「その外れた分だけ味が落ちる」
「そうなのかもな」 
 こう智にも話した。
「旬といってもその間全て最高に美味いとは限らない」
「その為に今の鯉は味が落ちる」
「僅かでもな」
「そこまでの違いはわからないでござるが」
「どうも英勇君はかなりの味覚を持っていますね」
 良太はこう指摘した。
「それぞれの食べものについて。前から思っていましたが」
「味覚が鋭いか」
「そうかと」
「自分ではそうは思わないが」
「いえ、ここまでおわかりとは」
 それでというのだ。
「もうです」
「味覚が鋭いか」
「そして味をご存知です」
「俺は美食家のつもりはない、むしろな」
「美食家はですか」
「それぶって何がまずいこれはまずいと言い回る奴は嫌いだ」
「それはある漫画の様ですね」
「新聞記者が主人公の料理漫画だが」
 彼等の本来の世界での話だった。 
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