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儚き想い、されど永遠の想い

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353部分:第二十七話 このうえない喜びの後でその五


第二十七話 このうえない喜びの後でその五

「ですから文化を広めるうえでも」
「カレーのお店を」
「考えたのですが」
「念入りに検討しようか」
 義正はそのカレーを食べながら真剣な顔で妹に述べた。
「それならね」
「そうして頂けますか」
「面白い考えだからね。カレーは皆が好きだからね」
「支那そばと同じく嫌いな人は少ないでしょう」
「確かに。皆食べるからね」
「カレーには独特の魔力があります」
 義美はこうまで言った。カレーに対して。
「癖が強いですがその癖がです」
「かえって楽しみになるね」
「はい。ハヤシライスやオムライスもいいですが」
 しかしだ。それ以上にだというのだ。
「カレーにはです」
「可能性があるね」
「無限の可能性があります」
 そこまでのものだというのだ。カレーは。
「日本人に馴染んでいますから」
「洋食の中で」
 カレーを洋食に区分して。そのうえでの言葉だった。
「カレーが一番日本人に馴染んでいるかな」
「そうですね。ハンバーグやエビフライよりも」
「まずはカレーだね」
「はい、カレーです」
 それが第一だというのだ。カレー以上にだ。
「日本人に最も馴染んでいると思います」
「海軍でも食べているしね」
 義正はこのことも話した。
「だから余計にね」
「海軍の存在が大きいと思います」
「カレーについては」
「他の洋食もそうですが」
 海軍士官の食事は洋食だ。そのことも大きかったのだ。
 そしてカレーはだ。海軍では曜日を教える為にも一週間に一度食べられていたのだ。それ以上に栄養をかなり摂れるからだ。それでなのだ。
 カレーを食べる。それが臣民の間にも広まりだったのだ。
「カレーはとりわけですね」
「それでそのカレーを軸にした店をだね」
「考えています」
「いいと思うよ。ただ」
「ただ?」
「カレーだけじゃなくて」
「それだけでなくですか」
 義美は兄のその言葉に応えた。その兄が言うことは。
「珈琲も用意したらどうかな」
「珈琲もですか」
「海軍は確かにカレーだね」
 このことは絶対だった。カレーはだ。
 しかしそれと共にだというのである。珈琲の存在もどうかというのだ。
「けれどそれと一緒にね。海軍では珈琲も飲んでいるからね」
「カレーに珈琲ですか」
「丁度デザートだし」
 カレーも食べ終えた。それならばだった。
「そのついでにね」
「珈琲を頼んで、ですか」
「飲んでみようか。珈琲を」
「それでは」
 こう話してだった。実際にカレーの後で珈琲を飲んでみる。その味は。
 普通に飲む珈琲とはまた違った美味しさがあった。その美味しさを味わってだ。
 義美はだ。満足した笑みを浮かべてこう言った。
「いいですね」
「そう。カレーの後の珈琲はね」
「喫茶店で飲む珈琲とはまた違った味がありますね」
「どうかな、それで」
 義正はあらためて妹に尋ねた。
 
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