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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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崩される四天王

 
前書き
大魔闘演武並みに長くなりそうな今ストーリー。
やりたいことが多すぎて、どれだけの長編になるのか皆目検討もつきません。 

 
フィオーレ北部、ここでは剣咬の虎(セイバートゥース)のグラシアンの快進撃が続いていた。

「幻竜の・・・鉄拳!!」

ドラゴンフォースにより竜の力を手に入れた彼の重たい一撃。それはすでにアザだらけとなっている敵に容赦なく突き刺さっていく。

「そんなことをしても、彼女は帰ってきませんよ」

挑発のつもりなのか、はたまた何か意図があるのかはわからない。それでも、その言葉は彼の怒りを増幅させることには間違いない。

「そんなことはわかってる!!俺がやりたいことはたった1つだけだ!!」

地面に落ちていく青年に馬乗りになる。彼は胸ぐらを掴み彼の上体を起こさせると、額をぶつけ自分のやりたいこと伝えた。

「あいつの墓の前で土下座させてやる!!俺と一緒にな!!」

あの爆発の後、グラシアンは彼女の墓をある場所に作った。そこは以前彼が彼女と・・・その仲間たちと出会った思い出の地。

「そんなことで彼女が喜んでくれればいいですが、どうでしょうね?」
「喜ばなくてもいいよ。ただ、笑って見ててほしい」

目を閉じれば思い出す彼女の笑顔。二度と見ることができないそれは、彼の胸の奥底に仕舞い込む。

「そんなことのために、バカみたいになれる俺を」

自己満足なのは彼にもわかっていた。それでも止めることができないこの感情。ホッパーの意識がなくなるのも、時間の問題だった。

パチパチパチパチ

常軌を逸した彼の猛攻に多くの者の手が止まっている中、突然響き渡ってくる拍手。それが何なのかグラシアンたちにはわからず、彼は手を止めそちらを見上げる。

「実に感動的ですね、グラシアン・カイザー」

その男が登場してきた瞬間、グラシアンの背中に鳥肌が立った。いや、彼だけではない。近くにいた魔導士たちも、そこから離れたところにいた者たちも全員が恐怖した。

「ティオス様!!」
「来てくださったのですね!?」

ティオスと呼ばれた男の登場に沸き立つアルバレス軍。彼はそれを無視してホッパーとグラシアンの元へと歩いていく。

(なんだ?こいつ・・・匂いが・・・)

近付いてくる男が通常の人間と違うことを察したグラシアンはホッパーを離し距離を取る。黒装束で顔を隠している彼は上体を起こすのがやっとのホッパーの前に立った。

「ティオス様、すみません・・・醜態を晒してしまって・・・」

申し訳なさそうに謝罪するホッパーだが、彼のことを無視してティオスと呼ばれた男はグラシアンに話しかける。

「グラシアン、君はこいつに謝罪させたいと言ったね?」
「あ・・・あぁ・・・」

額から吹き出してくる汗が止まらない。今まで戦ってきたどの魔導士よりも遥かに高い魔力を持っている敵を前にして、グラシアンは恐怖を感じつつあった。

「そう、じゃあさ・・・」

わずかに見えている口元から、青年が何かを企んでいるのを察した。グラシアンは身構えるように体勢を整えたが、それは必要がない行為だった。

「こうすると、君はどうなるのかな?」

人差し指をホッパーへと向けるティオス。そこから放たれた黒い水が、男の体を貫いた。

「がはっ・・・」

胸元を貫かれたことで吐血するホッパー。グラシアンやその場にいた魔導士たちは何が起きているのかわからず、呆然としていた。

「ティオス様・・・これは一体―――」

意味がわからず上長を見上げたホッパー、隙間から見えた表情に固まった。口元は笑っているのに、目は決して笑っていない。まるで人を殺しすぎた大量殺人犯のような、冷徹な目をしていた。

グサッ

人差し指から再度放たれた魔力が青年の頭部を突き抜ける。その瞬間、それを見ていた連合軍、アルバレス軍が目を見開いた。

「これで謝罪させることはできなくなったけど、どう?気分は?」

周りが引いていることに気が付いていないのか、冷静な様子のティオスが面白そうに問い掛ける。が、グラシアンはそれに答えない。

「お前・・・仲間じゃなかったのかよ」

恐怖し萎縮していたはずの幻竜は怒りの眼差しを向ける。それを見せられたティオスは呆れたような雰囲気を醸し出す。

「仲間?これが?随分面白いことをいうね?」

血の海に沈んでいるかつての部下に視線を落とすこともせず、彼は胸に手を当て言葉を紡いだ。

「こいつらは“道具”だ。俺が目的を果たすためのね」

その瞬間、グラシアンの魔力が最大限まで高まる。ティオスはそれを待っていたかのように舌なめずりする。

「仲間を大切にできねぇ奴に、俺は負けねぇよ」
「さぁ?それはどうかな?」

ターゲットを修正し格上とのバトルに挑むグラシアン。雪が舞い降るその地の気温は、さらに低くなっていった。















「え?・・・生きてる?あの子が?」

拓けた平野で戦いを繰り広げていたリュシーとイシュガルの四天王withジュラ。その内の1人、ウォーロッドの口から発せられた言葉に、リュシーは動揺していた。

「そうじゃ」

リュシーの問いにうなずくウォーロッド。それを聞いた瞬間、彼女の目から涙が零れ落ちる。

「どこに!?あの子はどこに・・・」

興奮して詰め寄ろうとした彼女は一歩踏み出したところでその足を止める。彼女は思い出していた、あの時起きた惨劇を。

「・・・なるはど、そういうことね」

涙を拭い、木のような姿の老人を睨み付ける。その目はついさっき見せたばかりの優しげなものとは違っていた。

「騙されないわよ、そんなウソには」

彼女はこう考えた。彼は冷静さを欠いた自分を誘き出して、その一瞬の隙をついて仕留めようとしているのだと。

「待て!!本当に生きておるんじゃ!!」
「その手には・・・」

上体を捻り、右手に魔力を溜める。彼女はそれを払うように目の前の男に放出した。

「乗らないわよ!!」

その手から放たれた強烈な一撃がウォーロッドを襲う。あまりの攻撃力に防御体勢を取ることもできなかった老人は地面を転がり、動けなくなっていた。

「私がどれだけあの子のことを愛していたか・・・それを利用するなんて・・・」

怒りで顔が赤くなっているリュシーはウォーロッドの元へと歩み寄る。彼女の痛烈な一撃に寄って動けない彼は荒い呼吸の中、ある少女のことが脳裏を過っていた。

「メイビス・・・」

天狼島で出会ってから共に冒険し、妖精の尻尾(フェアリーテイル)を立ち上げたギルドマスター。彼女の妖精のような笑顔を思い出し、彼は目を閉じる。

「もう一度お前の笑顔が見たかった」
「私もあの子の笑顔が見たかった。でも見れないのよ。あなたたちのせいで」

ウォーロッドの頭に手をかけ魔力を解放する。その時老人の脳内に浮かんできたのは、これまで共に歩んできた仲間たちの姿だった。

(ユーリ・・・プレヒト・・・(ワッシ)もお前らの元に・・・)

トレジャーハンターだった頃からずっと行動を共にしてきた2人。先に旅立った彼らのことを思い出し笑みを浮かべるウォーロッド。その首は、怒りを滲ませた女性の一撃により、跡形もなく吹き飛んだ。












「!!」

その時、メイビスは思わず東の方角を振り向いた。彼女は胸騒ぎの中、大好きだった仲間のことを頭に浮かべていた。














「ウォ・・・ロッ・・・ド・・・」

肩から先がなくなった体を見て地に伏しているハイベリオンは体を震わせた。共に戦争を回避しようと尽力してきた同士が落ちたことは、心を抉るような苦しみだったに違いない。

「貴様・・・許さんぞ・・・」

動けないハイベリオンの横でゆっくりと立ち上がったのは体を貫かれたはずのウルフヘイム。彼は再度接収(テイクオーバー)し、リュシーに襲いかかった。

「私もあなたたちを許すことはできない。そしてそれは・・・」

ウォーロッドの体に正面を向けていた彼女は腕だけを敵に向ける。強大な魔力を小さく集約した球体を打ち出すと、今度はウルフヘイムの体全てを飲み込み、一瞬で彼を消し去る。

「ウルフヘイム様!!」

彼女の足元で偉大な四天王の名前を叫ぶジュラ。リュシーは彼を見下すような目を向けると、僧のような頭を踏みつける。

「ジュラ・・・本当はあなたを見逃してあげたいけど、それはできないみたい」
「リュシー殿・・・」

聖十大魔道の中で2人は年齢が比較的近かったこともありよく話をしていた。そんな仲の良かった友人を殺すのはやはり勇気がいる。

「でも、ごめんね。私はこの大陸を滅ぼさなければならないの。あの子のために」

そう言い残し、頭を踏みつけていた足を大きく振り上げる。それを最速で彼の体に振り下ろすと、ジュラは深く地面に突き刺さり、絶命した。

「さぁ、後はあなただけよ、ハイベリオン」

残された最後の1人の元へ歩み寄るリュシー。彼女は虫の息である彼の体を持ち上げる。

「リュシー・・・最後にこれだけ言わせてほしい・・・」
「命乞いなら聞かないわよ?」

彼女の言葉に首を振る。口を開くのも辛いはずのハイベリオンは最後の力を振り絞り、彼女にこう告げた。

「君の妹は、元気に生きている」

その言葉を聞いた瞬間、リュシーは強く歯を噛み締める。

「あなたたちにあの子の何がわかるって言うのよ!!」

激しい怒号により大地が割ける。リュシーはウォーロッドと同じ言葉を繰り返すハイベリオンの心臓を一突きにした。

「ゴハッ・・・」

血を吐き出し動かなくなる聖十の男。リュシーは彼を地面に落とすと、亡骸の存在を隠すかのように情け容赦なく魔力を打ち込み、彼を消滅させた。

「やった・・・ついにやったわ・・・」

小刻みに震える黒髪の女性。閉幕した戦いを見届けたオーガストとジェイコブは彼女の元へと歩み寄る。

「涙を拭け、リュシー」

そう言ってジェイコブがハンカチを差し出したのを見て初めて気が付いた。自分が涙を流していることに。

「あら・・・私、そんなに嬉しかったのね・・・涙を流すくらい・・・」

受け取ったハンカチで目元を押さえるリュシー。彼女はわかっていた。自分のやったことがどれだけ無意味で、残忍な行為だったか。こんなことをしても亡くなった妹は帰ってこない。目の前の失われた命が、その時の絶望を鮮明に呼び起こしていた。

「リュシー。一度陛下の元に帰還せよ。心臓は我々が奪い取る」
「いいえ。それはできないわ」

顔を上げ深呼吸をする。彼女はオーガストとジェイコブ、二人の顔を見ると、小さく微笑んだ。

「行きましょう。私たちで彼に心臓を届けるのよ」

もう後悔はない。後戻りもできない。やってしまった罪の重さは消えることは決してありえない。彼女は全ての不安を封じ込め、二人の男たちと共に妖精の尻尾(フェアリーテイル)へと急いだ。

















東方の戦いが終幕を迎えた頃、ハルジオン解放戦は街の前まで来ていた。

「ソフィア!!どこだ!!」

先陣を切って進んでいくのは剣を携えた人魚。彼女は連れ去られた仲間を探そうと懸命に呼び掛けるが返事はなく、連れ去ったお団子ヘアの少女の姿もない。

「カグラ!!後ろ!!」
「わかっている!!」

彼女は仲間を探すことに必死になっていることもあり周りに気を配ることができていない。アルバレス軍はそんな彼女を倒そうと向かってくるが、実力に差がありすぎた。

「!!」

このまま街の中に入っていくのも時間の問題かと思われたその時、彼女は迫ってくる巨大な魔力に気付き、振り返る。

キィィィィン

「おおっ、いい反応速度だ」

ぶつかり合う剣と剣。奇襲を仕掛けてきた金髪の女はカグラの反応の良さに感心すると、後方へと下がり距離を取る。

「東洋の着物か、美しいな」

カグラの身を包む着物を見て感嘆の声を上げる。まさしく剣士と思われる彼女の姿に、戦乙女も羨ましく感じているようだ。

「だが私が血染めにしてやろう」

そう言って剣を振るった瞬間、彼女の高い魔力がさらに上がった。それに気が付いたラミアとマーメイドの連合軍は、体を震わせる。

(な・・・何だ・・・この魔力・・・は・・・戦場が凍りつく・・・圧倒的な魔力・・・こいつが噂のスプリガン16(セーズ)・・・)

先程レオンに倒された男も、ソフィアを連れ去った少女も高い魔力を持っていた。しかし、全開になったディマリアの魔力を目の当たりにし、カグラは汗が止まらない。

「前髪がランディと同じだ。いじめがいがありそ」

そう彼女が呟いた瞬間、カグラの着物が散り散りに破れていく。

「!!いつの間に・・・」

距離を取っていたはずなのに破れていく衣服に驚愕するカグラ。しかし、それだけで終わることはなかったのだった。


















「氷神の・・・」
「天神の・・・」
「「怒号!!」」

その少し前、カグラたちと行動を共にしている蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のメンバーであるレオンとシェリアは幼馴染みパワーを爆発させていた。

「ほらこっちこっちぃ」
「待てぇ!!」
「逃げるな貴様!!」

その後ろではラウルが猫の姿で飛び回り兵士たちを連れ回す。その無防備な兵隊を横から狙うのは最年少の魔導士。

「はい、お疲れ様です」
「「「「「ぎゃああああああ!!」」」」」

書き上げた魔法陣から打ち出される強大な魔法。それに飲み込まれた兵隊たちは白目を向き、ラウルとサクラはハイタッチを交わす。

「アイスメイク・・・スノータイガー!!」

その二人に襲いかかろうとしていた兵隊に対し氷の虎を向かわせるリオン。彼のおかげでサクラとラウルへの攻撃は届かなかった。

「油断するな!!敵はまだいるんだぞ!!」
「すみません!!」
「頑張るぞぉ!!」

このままハルジオン奪還するのも時間の問題かと思われたその時、砂煙が舞い上がっている戦場の喧騒に紛れ、氷の魔導士の背後を取った者がいた。

「!!」
「リオン後ろ!!」
「!?」

それにいち早く気付いたのはレオンとシェリア。リオンはその声で後ろを向こうとしたがその前に、彼の体に何者かの足が突き刺さった。

「がはっ・・・」
「リオン!!」
「リオンさん!!」

完全に体に突き刺さっている足が引き抜かれると、支えを失った体は前に倒れる。その姿を見ても無表情を貫いているのは、足に血痕が付いた眠たげな目をした青年。

「随分でしゃばっているが、貴様が周りに気を・・・ん?」

リオンの体を貫いた天海は彼の不用心さに怪訝そうな顔をしていたが、あるものに気が付きそこで視線を止める。
一瞬で絶命させるはずの勢いで蹴りを放ったはずなのに、倒れた青年は辛うじてではあるが息をしている。その理由は、自分と青年の間に薄い黒色の氷の壁が張っていたから。

「この魔法・・・まさか・・・」

天海は顔を上げると青年に駆け寄ってきている二人の人物に気が付く。そのうちの一人、金色の髪をした少年が目を細め、彼を見据える。

「お前がこの氷を張ったのか?」
「あぁ、そうだ」

ギリギリで気が付いたはずなのに致命傷を回避するほどの強度の氷を、それも離れたところに作り出した氷の神のポテンシャルに
思わず笑みを浮かべる。

「やはり、貴様がスプリガンの言っていた者か」
「そいつが何者か知らねぇ。けどなぁ・・・」

羽織っていた上着に手をかけるレオン。彼はそれを勢いよく脱ぎ捨てた。

「俺の仲間に手を出して、生きて帰れると思うなよ!!」

怒れる氷の神が全身全霊をかけて戦いに挑む。両軍最強の戦士の戦いが、今ここに開幕する!!




 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
この序盤でイシュガルの四天王withジュラ全滅です。彼らが好きだった方いらっしゃいましたら申し訳ありませんm(__)m
次のメインはレオンvs天海の予定です。そしてレオンが投げた上着が、後々面倒な事態を招くことになります。 
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