レーヴァティン
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第四十二話 山伏その五
「それそれの島に十二人を集めて」
「そしてあんたもだな」
「間違いないであります」
自分自身もとだ、峰夫は英雄に述べた。
「そのことを確信しているであります」
「外の世界から来ているからこそな」
「そうであります、では宜しくお願いするであります」
今は仮初と言っていい段階でもとだ、峰夫は英雄に言った。そして英勇も認めて彼も仲間になった。
一行は峰夫を迎えてそのうえで賊達のものだった館の中にあった車、大八車に銭や宝を積め込んだ。かなりの量があり数台分あったが。
その全てを積んでだ、一行は転移の術で都に戻った。そうして都の者達に対して車の銭や宝を見せて言った。
「あんた達が奪われたものを取り戻してきた」
「あの大江山の賊達から」
「そうしたんですか」
「何百人もいたのに」
「連中も」
「そうだ、しかしだ」
英雄はここで都の者達に問うた。
「攫われた者はいなかったな」
「はい、何か賊の頭が人攫いは嫌いで」
「人は攫いませんでした」
「ものは奪って歯向かえば容赦なく殺されましたが」
「逃げたり隠れれば何もしてきませんでした」
「それより盗みに専念していました」
「何でもです」
都の者達は賊の頭だった者の話をした。英雄達はその頭も成敗した筈だがどの者かは把握していない。
「ガキの頃攫われて賊になったとか」
「そうらしいです」
「それでその攫った賊に盗みを優先しろと言われたとか」
「そう聞いています」
「自分が攫われたから攫わない、か」
英雄は都の者達の話からこう考えた。
「そして教わったことを守った」
「そうらしいです」
「ですからわし等もものは奪われましたが」
「家族は奪われてません」
「逃げた者や隠れた者は無事でした」
「そうか、外道共だったが」
気からすぐにわかるまでのだ、英雄は彼等のことも思い出していた。
「しかし守るものは守っていたか」
「その様でござるな」
智が英雄の言葉に頷いてきた。
「どうやら」
「外道にも守るものがあるか」
「そういうことでござるな」
「そうか、その賊の頭も攫われなければな」
「賊になることもなかったでござるし」
智はこうも言った。
「人を殺めることもなかったやも知れぬでござるな」
「そうだな、そう思うと賊の頭も哀れだ」
「守るべきと考えているものを守るだけの考えがあったなら」
「賊に攫われなければ真っ当に暮らしていた」
「そうでござるな」
「しかし賊は賊だ」
側の頭に哀しいものを感じつつもだ、英雄はこうも言った。
「それならばな」
「成敗するしかないであります」
今度は峰夫が応えた。
「人に害を為す外道達ならば」
「そうだな、しかし外道でないならな」
「賊でもでありますか」
「出来ることなら降らせてな」
「そのうえで」
「普通の暮らしに戻らせるべきだ」
「田畑を与えるなりして」
峰夫は具体的にどうするのかも言った。
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