名探偵と料理人
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原作21巻~
第二十五話 -結婚前夜の密室事件-
前書き
このお話は 原作第21、22巻 が元になっています。
「うわあ、えらいひとやなぁ。お祭りでもやってんのん?」
「普通だよ……」
「土日の渋谷はいつもこんなものよ」
「まあ、わからんでもないですなあ。ウチも龍斗とデートに来たときは驚いたもんです」
「……にしてもホント人がぎょーさんおんねぇ…天神祭と変わらへんやん……」
「ホンマや、造幣局の桜の通り抜けと…ええ勝負やで」
「……それで?突然電話で「今日東京きとるから毛利のおっちゃんと一緒に迎えに来てや」って。たまたま暇だったからよかったものの事前に電話くらいして欲しかったよ?」
「悪い悪い。毛利のオッチャンはともかく龍斗には言うとくべきやったな」
「…ったく。なーにが毛利のオッチャンはともかくだ。俺だって忙しいっつうの」
「ええやんか。来れたっちゅうことはヒマしとったって事やろ?丁度こっちに来る予定もあったし、たまにはちゃんと東京をみなアカンと思ってな」
「用事?」
週末の土曜日、俺も紅葉もオフということでデートにでも行こうとしてた朝、突然平ちゃんから電話が来た。東京に来たから会おうと。そもそも東京に来たのは平ちゃんのお母さんである静華さんの同級生の息子さんが明日結婚式を挙げるのだが静華さんが怪我をしてしまい、その代理として平ちゃんが来たという事らしい。和葉ちゃんはまあお目付け役……らしい。本人にいわく。でも……
「よういうわ。渋谷で服買えるいうて騒いどったくせに」
「じゃー私が知っている店行ってみる?」
「気ぃ遣わんでもええよ。もう行く決めてあんねん…」
「あ、そう……」
「なあ龍斗。あの二人…というか蘭ちゃんに冷たない?あの娘」
「多分、平ちゃんにコナかけてるって勘違いしてるんじゃないかなぁ。違うって言ってるんだけどね。多分ここから別れて行動すると思うからそれとなくフォロー頼むよ」
「任せて。ウチもウチの知らない龍斗のこと知っとるあの子の事気になるし」
「そういえば、紅葉は高校生になって初めてか。和葉ちゃんに会うの」
「あれ?以前に会うてましたっけ?」
「……ああ、うん。まあ和葉ちゃんに聞いてみて。まだちゃんと紅葉の事紹介してないし」
「??ならこっちで自己紹介済ませときますね」
結局、男性陣と女性陣に別れて観光する事となった。紅葉はあの時にあってるんだけどな。それに俺と紅葉が会えたのは……
「わー、可愛い!ねえねえ、これ似合うと思う?」
「似合うんちゃう?あんた可愛いし。気に入ったらはよ買わんと取られてまうよ!」
「そ、そうだね…」
これは、龍斗が言ってた通りやな。平次君や龍斗がおった時は彼らが緩衝剤になっとったけど三人になった途端えらいつんけんするようになったなぁ。せっかくいい洋服屋に来とるのに。欲を言えば龍斗に選んでもらいたかったけど。
「そうです、遠山さんとウチとは初対面やったよね?」
「ん?ああ、そういえばそやったね。ウチは遠山和葉。平次とは前に会うてたみたいやけど、平次とウチは龍斗君と幼馴染や。よろしゅうな」
平次君にあったことがある、という所で視線を厳しくする遠山さん。……ああ、ウチも最初蘭ちゃんや園子ちゃんにあんな目をしとったんやろなあ。
「よろしくお願いします。ウチは大岡紅葉いいます。出身は京都やけど今年の1月から京都泉心高校から龍斗たちの帝丹高校に編入して龍斗の家にお世話になってます。龍斗の未来の伴侶です」
「……?…ッ!?え?!?!は、伴侶!?伴侶っていうたら…」
「お嫁さん、です」
「え?≪あの≫龍斗君に!?彼女をすっ飛ばしてお嫁さん!?うっそーーーー!?」
……龍斗。幼馴染みの反応がみな同じなんやけど。
その後、混乱する遠山さん…もとい和葉ちゃん(龍斗君の恋人に余所余所しく呼ばれるのは嫌や!と言われた)を落ち着けて無事服を購入することができた。ウチの事に対する刺々しさは消えたけど…
今は龍斗達と合流するために毛利ハンの運転する車の中。右から和葉ちゃん、蘭ちゃん、ウチの順で後部座席に座ってる。
「はあ、今頃平次何しとるんやろ?買い物はよすませぇ言うとったのは向こうなのに」
「ねえ…」
「ん?なに?」
「何怒っているの?」
「え?」
流石に蘭ちゃんも今日の和葉ちゃんの態度はわかっとったか。
和葉ちゃんは怒っている原因を教えてくれた。どうやら以前大阪に遊びに行った時もそして今日も蘭ちゃんと平次君の服装が似たりよったり、つまりペアルック(に見えた)だったそうだ。確かに言われてみれば今日の二人の服装はにとるなあ。そのことを聞いた蘭ちゃんはためらいもなく今日来ていたボーダーの服を脱ぎ、さっき買った服に着替えた。…ええ度胸しとるな…
「ホラ!これでおそろいじゃないでしょ?」
「…あんた、ええ子やなあ」
「そーお?」
「それはウチも同意です。和葉ちゃんもようやっと誤解が解けたようで。蘭ちゃんはこの…新一君って彼氏がおるんですよ?」
そういって、以前カラオケに行った際に店員さんにとってもらった写真を見せた。
「ちょ、ちょっと!彼氏なんかじゃないって!!」
「へー、この子が工藤新一君?ホンマに男やったんやね。…この茶髪の子は?」
「この子は鈴木園子ちゃんって言うて、龍斗の幼馴染みの子です。この子もめっちゃええ子ですよ」
「そうなんや。今度会ってみたいなあ」
「絶対気に入ると思うで?」
今日会った時とは打って変わってなかようなれてよかったわあ。龍斗もウチになんか頼まんでも蘭ちゃんなら自力でなんとかできたで?まだまだ過保護やねえ。
道中の車の中で話はこの3人の共通点である龍斗の話で盛り上がった。なんや、まだまだ色んなことやらかしとったんやな龍斗……その中で和葉ちゃんがウチと龍斗のなれ初めの話を振ってきた。
「せやね。あれは6年前の小学4年生の頃、ウチは京都で開かれとったかるたの大会にでとったんよ。そこでな、龍斗と決勝で当たって。それはひどい負け方をしたんや」
「ふむふむ…ん?かるた大会?」
なんか、和葉ちゃんの様子が変?まあええか。
「そんでな、泣いてたウチを龍斗が慰めてくれてん。そんでウチの事めっちゃ褒めてきてな。キレーや、可愛いって。そんでまあ色々あって…ね?」
「その色々が聞きたいんだけどなー。ねえ和葉ちゃん。…和葉ちゃん?」
「…なあ紅葉ちゃん。それって○○カルタ大会?」
「え?ええ。せやけどなんで知っとるです?」
「それな、ウチが平次のお母さんから大会の事聞いて平次を焚き付けて龍斗君に参加させた大会なんや。平次は龍斗君にいっつも世話になっとってな。一回くらい勝ちたい言うてて。なら平次の得意なカルタなら勝てるんやない?って言ってっ…紅葉ちゃん!?」
「ちょっと紅葉ちゃん!?」
ウチは真ん中にいる蘭ちゃんを覆うように体を伸ばし、和葉ちゃんの手を取った。
「その話が本当ならウチが龍斗に会えたのは和葉ちゃんのお蔭です!ありがとう、ありがとう!」
「え、えっと。そない感謝せーへんでも」
「いいえ!これはウチにとってとっても重要なことです!!」
「紅葉ちゃんが暴走してる……」
ああ、ウチは和葉ちゃんの事が大好きになりました!龍斗!龍斗の幼馴染みはええ子ばっかや!
明治神宮で合流した女性陣は買い物で交流を深めたのか、和葉ちゃんのほか2人への隔意も消えとても仲睦ましい……仲良いというか、紅葉が和葉ちゃんにぐいぐい迫って和葉ちゃんが戸惑ってるな。何があったかを聞いてみるとさもありなん。まあ俺にとってもキューピッドになるわけだしね。
お参りをし、各々がお願いをしていると平ちゃんに話しかける中老の男性がいた。どうやら彼は重松明男さんといい、明日の結婚式の新郎の家に仕える執事さんだそうだ。今日は花嫁になる片桐楓さんの東京案内をしているそうだ。楓さんは子宝に恵まれるようにとお願いしていたと言っていたが……
「なあ、楓さんの様子、どーみても子宝をーって感じやなかったよな?」
「……」
「んー、確かにちょっと気になるかな」
「全く男どもは!嫁入り前には色々あんねん!」
「そーそー、マリッジブルーっていうし!」
「逆に感極まって真面目な顔になるってこともあるんやない?」
「「「ねー!」」」
「なにゃ、急に仲ようなって。気色悪ぅー…」
重松さんの提案で平ちゃんと和葉ちゃんだけではなく俺達全員が森園家にお邪魔することになった。今更だが静華さんの同級生が嫁いだのって結構大きなとこだな。だけどたしかあそこって2代目の森園…菊人さん?はあまりいいうわさは聞かないんだよな…
重松さんの案内で屋敷に向かって歩いていると突然木から人が飛び降りてきた。彼は桜庭祐司さんといい、使用人をしているそうだ。木から飛び降りてきた彼の胸には猫が抱えられていた。どうやらご当主の命令で捕まえていたそうだ。
「わー可愛い!」
「ちょっと見せてーな!」
「はい、どう…ぞ!?あ!おい、コラ!」
女性陣に見せようとしたらするりと抜けだし、また桜庭さんはあの猫との追いかけっこを再開してしまった。そんな光景を見せられた俺達は微笑ましい雰囲気になっていた。そんな俺達の後ろから新たな登場人物が現れた。
「あら、あなたね!我が弟の姫君は。…大会社の社長令嬢だかなんだか知らないけど。覚悟しときなさいよ!今日から私がこの家のしきたりを骨の髄までみっちりと仕込んであげるから!」
「は、はい!」
「……なーんてね!冗談よ冗談!私は姉の百合江!普段は外国に行っててうるさくしないから安心してね!」
「は、はあ」
「それにしてもやるわね貴女!プレイボーイの弟をここに通い詰めて落としたんですってね!」
「え?」
「い、いえ。お嬢様。一目ぼれしたのはお坊ちゃまの方でして」
「あら、前に貴方そう言ってなかったかしら?まあいいわ。今回の縁談をまとめたのは貴方だったわね。お父様から何か褒美がもらえるかもよ?」
「はあ…」
そういうと百合江さんは屋敷の方に向かっていった。
「ねえ平ちゃん。やっぱり楓さんなんか変だね」
「せやなあ。なんや重松ハンも噛んでそうな感じやな」
「ああ、彼女の婚約をまとめたって言ってたしなんかあるんだろうな」
こそこそと男幼馴染み3人であーだこーだ言い合ったが、まあすべては憶測だ。
―
時が少し経ち、晩餐会となった。ご当主の森園幹雄さんは結構気さくな方で小五郎さんと話は盛り上がっていた。どうやら彼は若いころ探偵にあこがれていたらしい。
「最近は犯罪も巧妙化してましてなあ。第一発見者が殺人犯とかなら探偵なんていらないんですがねえ」
「なるほどなるほど。ですが自分がやったということを誤魔化すトリックを犯人が弄し、それを紐解いていく。それが毛利さんたち探偵でしょう?」
「いやはや、全くもってその通りで!」
そんな歓談が進む中、楓さんの旦那さん、森園菊人さんが現れた。……現れたんだが、
「東京見物は存分に堪能できたかい?マイ・ハニー?」
「は、はいとても…」
「は、はにー?」
「さぶー…」
「うーん、なんかぞわっとしますなぁ」
どうやら百合江さんの言っていたプレイボーイというのは本当の事らしい。……それにしても、ぷれいぼーいなセリフか。俺はこういうの言えないからなあ。気障なのは平ちゃんとか新ちゃんがさらっと吐くからすごいよな。こんな感じかな?
「紅葉紅葉」
「ん?なんや龍斗……そない見つめないで。恥ずかしいです」
「俺は、君のその世界のどんな宝石よりも価値のある瞳に惹かれたんだ。もっと見せておくれ」
「んー……!??んえっ…!?…!?!?」
「ちょ、ちょっと龍斗!おまえなにいうとんねん!?」
「せ、せやせや!突拍子もなくなんてセリフを言うとんねん!」
「も、もう。紅葉ちゃんが真っ赤になって固まったじゃない!」
「龍斗にいちゃん、時と場所を考えて!」
あれ?てっきり「もーそんな寒いセリフ言わんといて!」「おーさぶさぶ!まるで真冬の雪山にいるみたいやわー」「龍斗君に新一みたいな気障なセリフは似合わないよ!」「ウチの事からかってます?」なんて反応が返ってくると思えば。幼馴染み組はみんな真っ赤な顔をして俺をたしなめてくる。大人組は話に夢中でこっちの話には気づいていないようだった。
「いや、ほら菊人さんのぷれいぼーいなセリフに皆引いてたからさ。俺もたまには言ってみようかなって。本心をちょこっとアレンジして」
「……龍斗にいちゃん、その昔からの突拍子もない思いつきで行動するの止めようよ?いっつも結構な大惨事になってるじゃん」
「せやせや、ガキん時からなーんも変わってへん。たまーにどデカイ爆発起こすんやからな」
「…コナン君、昔からって?」
「え?あ!?そ、それは新一にいちゃんに聞いたんだよ!龍斗にいちゃんは普段はしっかりするぐらいしっかりしているけどたまーに人をからかったり、思いつきで行動するって。それで周りの人がすっごい衝撃を受けるって!」
「ふーん。まあ確かにそうよね。それから龍斗君?龍斗君は新一みたいな気障なセリフはいちゃだめよ。紅葉ちゃんがダメになっちゃうから」
「はー。紅葉ちゃんはホント龍斗君のこと好きなんやなあ。さっきからピクリともせーへん」
「……」
「なんかすみません……」
フリーズした紅葉も数分後には復活し、真っ赤になりながらお説教をされた。いやほんとスマン。
―
そんなこんなで晩餐会は無事終わり、明日の結婚式に参加する大阪組は森園家に宿泊するということで俺達は帰ることになった。
「そんならおっちゃん、結婚式終わった帰りに探偵事務所に寄らせてもらうから!」
「オウ!」
「和葉ちゃん、今日はあえてホンマによかった!また明日ね」
「うん!紅葉ちゃん蘭ちゃん、また明日な!」
それぞれで別れを告げ、俺達は帰路につくため門へと向かおうとした。後ろから平ちゃんの安堵するため息が聞こえた『ほっとしたわ。あいつといるといっつも事件に巻き込まれるさかいな』……まあ同意するよ平ちゃん。今回は確かに何事もなく……
――ガシャアン!!
「な、なに!?」
「3階の窓ガラス、誰かが割りよったんや!」
平ちゃんの言う通り、3階の窓ガラスが割られていた。誰かが喧嘩でもしているのか?感覚を広げてみると……これは。部屋の中には一人の男性……これは菊人さんか?それに大量の少し乾いた血液の匂い。…最悪だな。
「蘭ねーちゃん、あの窓見張っといて!」
「え?」
「和葉!念のためや、重松ハン呼んで来てくれ!」
「ちょっと平次!?」
新ちゃんと平ちゃんはそう言って屋敷の方に入って行った。
さてと、じゃあ俺は。
「紅葉。ちょっと携帯で動画を撮ってほしいんだけど」
「え?ええけど。…これでええ?」
「ありがと。それで俺の携帯でも動画を撮り始めて胸ポケットに入れてっと。……うんいい感じにレンズが顔出して撮れてるな。…よし!」
「龍斗?どないするん」
「屋敷からは平ちゃんたちに任せて、俺はあの窓から侵入しようかなって」
「ちょ、ちょっと!あそこ3階よ!どうやって…ああ。龍斗君なら…」
「あんなに手をひっかける所があればどーとでもなるよ。紅葉にはそれを撮っていてほしい」
「わかったわ」
「それじゃあ行ってくる」
そういって俺は窓枠や雨戸に足と手をひっかけするすると三階の窓に到達した。窓には鍵がかかっていたが割れた窓から手を入れて開錠した。
「誰かいますか?……重松さん!?」
中に入ると部屋は暗く、正面にある部屋は明かりがついておりそこには重松さんの遺体があった。近づいて脈をとってみるが脈もなく若干死臭もすることから死んでから時間が経っていることが伺える。
さて、と。流石に屋敷の壁をよじ登って部屋に入ってくるとは思わなかったんだろうな。俺が入った瞬間菊人さんが隠れているカーテンが揺れたのが見えた。結構大きな声を上げたのに出てこないしこれは……どうなんだ?遺体と一緒にいたのに隠れているって状況的には犯人って言えるだろうけど。証拠になるのかな?とりあえず重松さんの遺体がある部屋の隣の部屋の電気をつけてっと。お?
「おい、どないしたんや!?中で何しとんねん?!…くっそ、鍵がかかっとる!」
どうやら平ちゃんたちが到着したらしい。…あ、体当たりし始めた。って!
「待って待って待って!!今鍵を開けるから!ちょっと待って!」
『なんや!なんで龍斗の声が中から聞こえんねん!』
「とにかく…」
俺は鍵を開け、みんなを招き入れた。
「そんで龍斗、お前なんで中に…って血痕!?」
「そうなんだけど、それよりこっちを」
「な、なんなんや?」
俺はそう言ってカーテンに歩いていき思いっきり開けた。
「き、菊人さん!?なんでそないなとこに」
「え、あそれは……」
「きゃああああああああああああああ!!!」
「!?か、和葉どないしたんや?!」
男性陣が菊人さんに事情を聞こうとしていた際に和葉ちゃんがそのまま奥に行ってしまい遺体を発見してしまった。
「し、重松ハン!?大丈夫か、おい!!…あかん、もう死んどる……」
「おいおい!マジかよ」
「何々、一体何なのよ今の悲鳴は」
「なにがあったというのかね」
「なにかあったんですか?」
悲鳴に屋敷の人が集まってきてしまった。
「おい、菊人さん!これどーいうこっちゃ!?」
「あなた、重松さんが刺されてなくなっているのになんでなにもしないで…これは貴方が犯人のようですなあ」
そこから、彼は俺に罪をかぶせようとしてきたが(窓が割れた時俺は外にいたんだがなあ)用心として撮っていた動画が無実の証明となり菊人さんは連行されていった。
彼の犯行計画だと、桜庭さんに罪をかぶせるために彼にしかできない脱出方法で密室にしたようだった。そこに俺が三階なのに窓から入ってくるという想定外の行動をとったために俺に罪をかぶせようとしてしまったと。
後の警察の調査で凶器は屋敷の外の森の木の上に引っかかっているのが見つかった。菊人さんが言っていた通り、桜庭さんの血まみれのYシャツも一緒に。ただ、警察が調べたところ菊人さんが着ていた衣服から桜庭さんの血まみれのYシャツと同じ繊維片がついていたことから菊人さんがそのYシャツを着ていたことが分かりそれが証拠となった。
動機は今回の結婚について。重松さんが結婚の話を詰めてくれたのにいきなり取りやめないと会社の不正を父にばらすと言われたそうだ。それを聞いた幹雄さんはすべてを察したのか彼と面会をしたそうだ。その内容は俺も教えてはもらえなかった。
―
「じゃあおっちゃん、お世話様!」
「ったく、これで大阪の時の借りはチャラだぞ!」
「今度はもっとゆっくり遊びにおいで。今度は俺の家に泊まりなよ?」
「おう!なんだかんだで遊びに行く機会がなかったからな!楽しみにしとるで!…それにしても和葉の奴おっそいなあ。なにしてんやろ」
「ちょっと蘭ちゃん紅葉ちゃん!恥ずかしいて死にそーや!」
「もぉ!ここまで来て何言ってるの。さあ、ほら!」
「そおです、ウチも大恩人のためなら心を鬼にする所存です!」
んー?なにやら姦しい声が聞こえてくるな。それにしても紅葉。心を鬼にするって言う割にはとても楽しそうだぞ?
「わわっ!」
「なんや和葉、お前も俺と同じ縦縞か?」
「ちゃ、ちゃうねん。これ蘭ちゃんの服やねんけどなんやしらんけど無理やりきていけって。紅葉ちゃんと一緒になって剥かれて…ああもう!やっぱトイレで着替えてくる!」
ああ、蘭ちゃん睨んでた理由がペアルックだしな。意趣返し…なんていじわるはしないだろうから恋の応援かな?紅葉もそれに乗ったと。
「ちょー待ち!オレはそのまんまでもかまへんで。それになんやこうしてると」
「こ、こうしてると?」
「兄妹みたいでおもろいやん?」
ははは…はぁ。なんでこう俺の幼馴染み連中ってこうなんだ。和葉ちゃんもご愁傷様。
後書き
ちょっと後書きが長いです。事件が起きても推理が起きない…
21~22巻の事件って証拠がないので犯人を嵌めて自供をとるという警察がしたらバッシングものの事件ですよね。今回は紅葉と和葉の顔合わせのつもりだったのでさらっと解決しました。あれ、廊下で人が陣取っていたらアウトな策ですしね。
それと、証拠はないと言っていますが原作の菊人はシャツをインナーなしで着てましたし、外で見つかったのは①桜庭さんのYシャツ②凶器の包丁③血の付いた手袋の三つでインナーの類はなく、菊人が着たなら確実に彼の汗とかがYシャツに染みてると思うですけどね。もしくは今回みたいに自分のシャツの上からYシャツを着ていたにしろ、普通に来ていたにしろ、繊維片が発見できたと思います。
繊維片云々は痴漢冤罪でも使える…らしいです。触っていたなら手や爪に残っていることもあるそうなので。なので袋で自分の手をかぶせて警察に調べて冤罪を晴らして名誉棄損の慰謝料をふんだくる…みたいな対処法を妄想してみたりw
シャロンさんについては原作を読んで「神様なんているのかしら?」「天使は微笑んでくれなかった」というセリフがあったので
銀の弾丸→絶対的な正義、「新一」
天使→無償の愛、「蘭」
神様→救済を求めるものに救いの手を、「龍斗」
みたいな感じをイメージしてみました。多分、ベルモットのイメージする神様って言うのは上のように救済を求められたとき施しをしてくれる存在かなあと思いました。彼女の人生は描かれていないので何とも言えませんが、誰も彼女に手を差し伸べてくれなかったのではないかなと。そこに小さいながらも何かを感じさせる主人公にああ言われて彼女の「特別」になった。という感じです。蘭と被らないようにするのが結構難儀しました。作者の頭じゃこんな感じが限界です。
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