儚き想い、されど永遠の想い
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312部分:第二十四話 告げる真実その一
第二十四話 告げる真実その一
第二十四話 告げる真実
義正と真理はだ。二人のそれぞれの家族に真実を告げる前にだ。
今回も伊上の屋敷に行きだ。そこでだ。
伊上にだ。その告げるべき二つの真実のことを話した。
屋敷の欧風の応接まで話を聞いてだ。伊上は。
まずは瞑目した。それからだ。
静かに口を開いてだ。こう二人に述べた。
「幸せはあるが」
「それでもですか」
「悲しいな」
目を開けた。ここで。
そして真理を見てだ。無念の顔で言った。
「まだ若いのに。二人になったばかりなのに」
「それでもだというのですね」
「そうだ。残念だ」
真理に応えてだ。今言った。
「その病になるとは」
「労咳ですか」
「労咳はこれまで多く見てきた」
伊上も長く生きてきた訳ではない。それだけ多くのものを見てきたということなのだ。
それでだ。その労咳についてもだ。彼は言うのだった。
「私が長州出身なのは知っているな」
「はい」
その言葉にはだ。義正が応えた。
「そうでしたね。それでは」
「高杉さんだ」
高杉晋作だ。幕末の志士の一人であり奇兵隊を組織したことで知られている。
その彼のことをだ。伊上は和服の下で腕を組んで二人に話した。
「あの方もそうだった」
「そうして労咳で」
「咳をされ血を吐かれ」
労咳の症状そのものだ。
「そして痩せ細っていかれ」
「そのうえで、ですか」
「亡くなられた。わしはあの方のお側にもいた」
だからだ。余計にだというのだ。
「残念だった。生きておられればと今でも思う」
「労咳でなければ」
「労咳は死ぬ」
今は一言だった。
「忌まわしい病だ」
「ですか」
「その病に貴女が罹ってしまうとは」
また無念の顔になりだ。真理を見てだ。
「因果な話だ。だが」
「だが?」
「生きられるのですな」
真理を見続けている。そのうえでの問いだった。
「貴女は」
「決めました」
真理の顔は白い。まるで雪の様だ。
何故白くなっているのかは言うまでもなかった。だがその白い顔にだ。
毅然としたものを宿らせてだ。彼女は今言うのだった。
「義正さんと共に」
「生きられるのですな」
「はい」
まさにだ。そうだと答える真理だった。
「そしてこの子を産んで」
己の腹をだ。いとしげに擦った。
そうしてだ。また言うのであった。
「この病のことも」
「家族の方に言われますか」
「そうします」
それもだ。決めたというのだ。
「そのことまで決めました」
「私もです」
そしてだ。義正もだった。
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