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名探偵と料理人

作者:げんじー
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幼少期~少年期
  第一話

「おはよう、龍斗。よく眠れたかい?」
「うん、ぐっすり。おはよう父さん。母さんは?」
「今はお化粧をしているところさ。今日は龍斗の保育園の入園式があるからね」

朝起きてリビングにしている和室に入るとテレビのニュースを聞きながら新聞を読んでいる優しげな風貌をした男性がいた。彼が、今生の父親である緋勇龍麻である。彼は料理人であり、20代でありながら「料理の神」と呼ばれるほどの腕を持ち、自分の店を持たずに依頼を受けて料理を作りに行くという珍しいスタイルをとっていた。普段は世界中を飛び回っているのだが母さんが「寂しすぎて死んじゃう!」とのこともあって、俺が保育園を卒園するまで日本中心で仕事をすることにしたらしい。

「そっかー。じゃあ今日の朝ごはんは父さん?」
「そうだぞ。朝から父さんの料理を食べられる龍斗は世界一幸せな子供なんだから。残さず食べるんだぞ?」
「もちろんだよ。それじゃあいただきます!」
「はい、召し上がれ」

俺は用意された朝ごはんに手を付ける。シンプルな和食だが子供が食べやすく味付けされており、かつ栄養バランスをしっかり考えられていてトリコ世界で料理人として生きてきた俺の目からも素晴らしい出来のものだ。うん、うまい。

「今日から行く保育園だけど、龍斗もすぐにお友達ができるから何も心配しなくてもいいからな」
「??それってどういうこと?」
「それは行ってからのお楽しみさ」

そう言うと父さんは新聞を片付け、支度のために和室から出ていこうとしていた。

「……おっと」
「きゃ!」

ふすまを開けた瞬間、化粧を終えて和室に入ろうとしていた母さんとはちあわせになってしまったらしい。父さんは流れるような身のこなしで母さんをお姫様だっこしていた。……おい、朝から三歳児の前でいちゃつくなよ。いや、仲がいいのはいいんだけどさ。

「大丈夫かい、葵?」
「……え、ええ、大丈夫よあなた。今日も素敵ね」
「葵もいつも以上に綺麗だよ。ずっとこうしていたいな」
「私もよ……」

あー、なんかピンク色の空間ができてハートが飛びまくってるけど無視だ無視。しっかりご飯を味わおう。
結局、10分くらいいちゃついていたが、俺の「ごちそうさまでした!」で我に返ったらしく、父さんも支度に戻ったみたいだ。

「お、おはよう、たっくん。今日もしっかり全部食べて偉いわね」
「おはよー、母さん。母さんこそ、今日も朝から父さんとラブラブだね」
「あらー、やっぱり龍斗の目から見ても私達ラブラブに見える?」
「う、うん。とっても。母さんも早く朝ごはん食べた方がいいよ?出かける時間って8の数字と12の数字に針が来た時なんでしょ?」
「あ、あら確かにあと20分位しかないわね。お父さんの料理だからゆっくり味わいたいけれど急いだ方がよさそうね」
「じゃあ、ぼくも準備するー。」

くそう、いつものことだけど皮肉も通じやしない。あと、時間がないのは出会い頭に朝からいちゃついてたからで自業自得だ。
そう思いながら、俺はそのままパジャマを脱ぎテレビの前に用意してあった制服に着替えた(途中母さんが無理やり手伝ってきたけど)。青いシャツに短パン、そして黄色の帽子。どこからどうみても立派な保育園児だ。
そして、8時になり親子3人で家を出た。


「おはよう、緋勇さん」
「あ、おはようございます阿笠博士」
「おはようございます。ほら、たっくんも」
「うん、おはよーございます。阿笠博士」
「うん、おはよう龍斗君」

家の門扉を出ると道路の前で掃き掃除をしている40代前後の男性が挨拶をしてきた。名前からも分かる通り、彼は原作では屈指のお助けキャラである「阿笠博士」だ。なんと、我が家は工藤邸と阿笠邸の真ん前に建っているのだ。しかも周りの家からしてみれば浮いている純和風のお屋敷だ。Fateの衛宮邸を想像してもらえれば分かりやすいと思う。

「今日は朝からお出かけですか?」
「ええ、今日から龍斗を保育園に預けることになってまして。その入園式が今日なんです」
「おお、今日から保育園ですか!確かに、小さいころにできた友人というものが一生の友になることもありますからなあ」
「ええ、たっくんにも同じ年頃の友達を作ってほしくて。それに、保育園にたっくんを預ければ私も龍麻と一緒にお仕事ができますから」
「それでは、「お菓子の女神」も復活ですか!それはまた、世間をにぎわすことになりますのう!!」

そう、俺の母さんも父さんに負けない二つ名を持っていた。それが「お菓子の女神」。母さんは優勝すれば世界一のパティシエとよばれる世界大会に出場し、そこで史上最年少となる17歳で優勝したのだ。(ちなみにそこでは料理人世界一を決める大会も同時に行われており、そこが父さんとのなれ初めの場だったということを絵本のかわりに耳にタコができる程聞かされた。)
俺を妊娠してから今まで育児に専念していたが、俺が保育園に入ることで多少なりとも時間ができるので仕事復帰となったらしい。……まあ、父さんと片時も離れたくないのが本音なんだろうけど。

「それでは、そろそろ保育園に向かいますので。ああ、もしよかったら今日入園式のお祝いを家でするのですが一緒にどうですか?」
「それは……いいですかいのう。わしは嬉しいのじゃが、せっかくの記念日。家族水入らずの方が」
「いえいえ、私たちは料理人夫婦。やっぱり誰かに作ったものを食べてもらいたいですし。なあ、葵?」
「ええ、それに今日はすでに二組お呼びしてますから。おもてなしする人が増えるのは大歓迎ですわ。それに、今日は龍斗のお披露目をしようか……と」
「お披露目?」
「はい。それでどうでしょうか?皆さん気の良い方ばかりですので阿笠博士も気に入ってもらえると思いますわ」
「それではご相伴に預かりするとしようかのう。しかし、なんと贅沢なことか。世界中のセレブや要人がこぞって依頼するお二人の料理を食べられるとは」
「あまりほめると照れてしまいます。それでは今日の六時ごろに」
「分かりました。おなかをすかして待っております」

お披露目?お祝いは分かるけど。それに二組って誰の事だ?

「それじゃあ行くぞ、龍斗、葵」
「はい」
「うん」

そんなことを考えていると、父さんが手を引き保育園に出発したので途中で考えるのをやめてとりあえずこれからの入園式と保育園生活をどう乗り切るかに思いをはせた。 
 

 
後書き
料理についての描写は自分があまり料理をしないのでほとんどできません。

なんでそれで料理人設定にしたかと疑問に思われるでしょうが、理由は原作キャラと絡めやすそうだったからです。 
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