儚き想い、されど永遠の想い
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308部分:第二十三話 告白その九
第二十三話 告白その九
それを知っているからだ。義正も今はこう言うのだった。
「私は賛成できません」
「このことを公にすることには」
「はい、できません」
こう言うのだった。
「とても」
「左様ですか」
「私は誰にも言いません」
強い声でだ。義正は言った。
そのうえで席を立ちだ。窓を見た。
白い壁にある白い窓からは淡い黄金の光が差し込めている。それは白いカーテンを照らしそのうえで義正も照らしていた。
その光に包まれた外の青い海を見ながらだ。真理に話すのだった。
「若し言えば」
「その時は」
「もうこうしたものは見られません」
こう言うのであった。
「決してです」
「外には出られなくなりですね」
「はい、そうなります」
また言う義正だった。
「ですからそうしたことはです」
「言わないでおくべきですか」
「決して」
「そうですか」
「若し私の他の者にお話すれば」
その時こそだ。まさにだというのだ。
「貴方はここからいられなくなります」
「私は」
「はい、今は座敷牢はありません」
それはなかった。流石に時代が違う。
だがだ。今でもだった。
「療養所に入りそこで」
「サナトリウムですね」
「そこに入りです」
「出られない」
「そうなりますので」
決してだ。言わないようにというのだ。
「ですがそれは」
「それはですか」
「私は貴女にそこに行って欲しくはありません」
そうだとだ。義正は己の考えを真理に述べた。
「ここで養生してもらい」
「そうしてですね」
「ずっと二人で」
そしてこの言葉を出したのだった。
「いたいのです」
「そうですね。私も」
そしてだ。真理もだった。
義正に対してだ。こう述べたのだった。
「ここで。義正さんと」
「私と」
「いたいです」
切実な顔になってだ。真理は答えた。
「是非共」
「そうですね。ではこの屋敷にいて」
「そうしてですね」
「幸いこの屋敷は落ち着いていて空気もいいですから」
「養生になりますね」
「労咳には空気です」
よい空気が養生になるのは知られていた。既にだ。
それでだ。義正はさらにだった。
真理にだ。述べたのだった。
「二人でいましょう」
「最後の最後まで」
「そうしましょう」
こう言ってだった。真理のその白い手を取ってだ。
それで彼女のその白い両手を自分の両手で握ってだ。
そしてだ。こう言ったのだった。
「では、です」
「それではですね」
「二人でずっと」
微笑み合っていた。自然に。
その微笑みをそのままにして。二人でだった。
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