提督はBarにいる。
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時期外れの餅リメイクレシピ特集・その3
「はいお待ち、『餅ラザニア』だよ」
じゅうじゅう、グツグツと湯気を上げるグラタン皿。しかし中身はカレーではなくトマトたっぷりのミートソース。流石に1人1皿だと食べ過ぎだろうと思い、3人で1皿にしておいた。
フォークをくるくると回して餅にたっぷりとミートソースとチーズを絡め取り、取り皿へと移す。今度こそは火傷しないようにとしっかりと冷まして頬張れば、トマトの酸味と肉の旨味がチーズの塩気を纏って口に広がる。そこに餅の甘味も加わり絶妙なハーモニーを奏でる。
「「「お、おいひいぃ~……」」」
おいおい、泣くほど美味いかね。そんな3人の様子に苦笑いしながら、俺はゴボウをささがきにしていく。
「あら?提督、今度は何をお作りに?」
「ん?あぁ、これか。お前ら3人にばかり食わせておいて、秋月に何も無しってのもアレだと思ってな。持ち帰り用の土産をな」
あの生真面目そうに見えて食いしん坊な長女が、一人だけ食事会で除け者にされたと聞いたら、間違いなくご機嫌斜めになるからな。勿論、その土産にも餅は使う。作るのは『おこわ風炊き込みご飯』だ。
本来おこわってのは餅米を蒸したり炊いたりした強飯(こわめし)の事なんだが、最近だと餅米と他の具材を炊き上げた物の事だ。広い意味では赤飯もおこわの一種と言えるな。餅米を使っておこわを炊くのは手間が掛かるんだが、餅を使うと普通のうるち米でおこわのような食感を出せるんだな、これが。
《餅を使っておこわ風ご飯2種!》※分量:3~4人前
(鶏ごぼうおこわ風)
・出汁(お好みで濃い目の奴を):360cc
・鶏むね肉:300g
・ゴボウ:1/3本
・ひじき:10g
・しめじ:100g
・醤油:大さじ2
・酒:50cc
・塩、砂糖:少々
・餅:2個
・米:4合
※土鍋で炊く場合には米と具材を半分に減らす。
(中華風おこわ)
・米:4合
・切り餅:2個
・豚バラ肉:120g
・ニンジン:小さめの1本
・椎茸:3本
・筍(水煮):120g
・醤油:大さじ3
・みりん:大さじ2
・酒:大さじ2
・ごま油:大さじ1
・砂糖:大さじ1
・オイスターソース:大さじ1
・鶏ガラスープの素:小さじ2
・塩:小さじ1/2
さて、作ろうか。このレシピは炊くのに使う調理器具によって米の量を加減する必要がある。炊飯器で炊く時は4合でいいが、土鍋等で炊く場合には米と具材をを半分に減らす……あ、餅は2個のままでOKだ。まずは具材の仕込みから。鶏ごぼうおこわの方はゴボウをささがきにして水に浸けて灰汁抜きをし、鶏むね肉を食べやすい大きさに切る。ひじきも水に浸けて戻し、しめじは小房に分けて割いておく。
中華おこわの方は具材を全て1cm角に刻めばOKだ。
中華おこわの方は米を研いで水を切り、炊飯器の釜に移したら具材と調味料を入れ、水を普通のご飯を炊く時の目盛りで4合の所まで入れて炊くだけなんだが、鶏ごぼうおこわの方は具材に味付けをしてから炊き上げるぞ。
鍋に出汁を張り、鶏むね肉、ゴボウ、ひじき、しめじを入れて少し煮る。鶏肉の色が変わってきたら、酒、醤油、塩、砂糖で味付けをする。炊き込みご飯の具だから、少し濃い目を意識するように。
後は研いで水を吸わせておいた米と、1cm角に切っておいた餅を炊飯器の釜に入れ、そこに鶏ごぼうの具材を煮汁ごと入れる。炊飯器の目盛りを確かめて、水の量が足りなければ水を足して普通のご飯を炊き上げる時の水加減にして炊飯開始だ。
※土鍋で炊く場合※
鶏ごぼうは強火で加熱し、沸騰したら2分そのまま、中火と弱火の間まで火を落として15分程放置。火を消して5分蒸らす。
中華おこわは蓋をして中火で加熱。沸騰したら弱火にして7分。お焦げを付ける為に30秒位中火に戻し、火を消して15分蒸らす。
蒸らしが終わったらよく混ぜれば完成だ。こんな感じで具材や味付けを変えればおこわのレパートリーがガンガン増えていくぞ。
「お、美味しそう……」
「おいおい、まだ食うのか照月」
おこわを見て涎を垂らす照月。しかしよく食うなぁコイツも。しかしこのおこわは土産用だ。持って帰って秋月と4人で食うなら文句は無いが、今はダメだ。
「しょうがねぇなぁ。次で最後にしろよ?」
「やった!何を作ってくれるの提督?」
「名付けて『餅チーズタッカルビ』だ」
タッカルビ、という韓国料理がある。『タッ』は鶏を表し、『カルビ』はあばら骨を示す。つまりは、『骨周りの肉を食べる鶏肉料理』の事だ。甘辛いコチュジャンベースのタレを絡めた鶏モモ肉と野菜を鉄板で炒めて食べる料理なんだが、最近だとそこにとろけるチーズを加えて食べるチーズタッカルビが流行りらしい。俺は更に、そこに餅をぶちこんでしまおうと言うワケだ。元々韓国にも『トッポギ』という餅をコチュジャンで炒める料理があるからな、餅とコチュジャンの相性は悪くない。……なに?『トッポギの材料のカレットック(韓国の餅)はうるち米だろ』って?細けぇ事ぁ良いんだよ、美味けりゃ。
《ご飯も酒も進む!餅チーズタッカルビ》※分量2人前
・鶏モモ肉:200g
・餅:好きなだけ
・チーズ:乗っけたいだけ
・キャベツ:100g
・しめじ:100g
・玉ねぎ:1/8個
・甜麺醤:大さじ1/2
・コチュジャン:大さじ1/2
・砂糖:大さじ1/2
・醤油:大さじ1
・酒:大さじ1
・すりおろしにんにく:小さじ1
・唐辛子:少々
※その他、好みの野菜を足したりしよう!
さて、作っていこう。まずは鶏肉を漬け込むタレを作るぞ。上記の調味料を混ぜてタレを作ったら、ぶつ切りにした鶏モモ肉を同じ容器に入れて揉み込み、30分程寝かせる。手を汚したくないならビニール袋なんかオススメだぞ。
キャベツ、玉ねぎ、シメジ等の野菜は焼き肉に使う感じでカットしておく。
深めのフライパンを熱して油を引き、タレを切った鶏肉を焼いていく。残ったタレは後から使うので捨てないように。少し焼き目が付いてきたらキノコを入れ、サッと炒め合わせる。そこにキャベツ、玉ねぎを加えて更に炒める。
全体に油が回ったら蓋をして、しばらく蒸し焼きにする。その間に、餅をトースター等で焼いて柔らかくしておく。
キャベツがしんなりしてきたら、とっておいたタレを回しかけ、全体に絡める。野菜からかなり水分が出るから、味見をして適宜調整。
味が決まったら、焼き餅とピザ用チーズを乗せ、再び蓋をして蒸し焼きにする。
「そういえば、もうすぐバレンタインだよね!」
「バレンタイン……ですか?」
タッカルビを蒸し焼きにしている間に、照月達の会話に耳を傾ける。どうやら、間近に迫ったバレンタインの話のようだ。
「あぁそっか、涼月姉さんは知らないんだったか。バレンタインっていうのは、女の子が好きな相手にチョコを渡して愛を伝える日なんだよ」
不思議そうに首を傾げる涼月に、補足の説明をする初月。まぁ、日本だとそういう日だが、欧米では男が意中の女性にプレゼントをする日なんだが。
「そ、そんな行事があるのですか……!?でも、私お菓子作りはあまり……」
「大丈夫大丈夫!バレンタインデーの前の日に、毎年提督がお菓子作り教室やってくれてるから!」
「あのなぁ……それなんだがよ」
「ん?どしたの提督」
「俺に渡すチョコを俺が指導して作るってのはどうなんだよ。すげぇ複雑なんだが」
「でも、『友チョコ』や『家族チョコ』を作りに来ている娘達もいるだろ?やっぱり必要だよ」
「そういうモンかねぇ」
おっと、こんな話をしている間に、タッカルビの方がいい感じだ。チーズもとろけて肉や野菜に絡んでやがる。仕上げに小口切りにした青ネギなんか散らせば完成だ。
「ハイよ、『餅チーズタッカルビ』だ。これでお開きにしろよ?」
待ちきれなかったのか、猛然と料理に襲いかかる3人。やっぱりよく食うなぁお前ら。
「ま、食えないよりは健康的でいいか」
そんな様子を眺めながら、俺は煙草を咥えて火を点けた。数日後、鎮守府の周りを走る照月達の姿が目撃されたのは、また別の話。
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