ドリトル先生と奈良の三山
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第六幕その五
「いいね」
「そうだよね」
「さっきもお話したけれど愛嬌があってね」
「妙に可愛くて」
「本当にブローチみたいで」
「若し先生が日笠さんにプレゼントしたら」
「あっ、それいいね」
ふと出た言葉に皆が飛びつきました。
「お土産の埴輪とかね」
「造ってあるそれをね」
「日笠さんに贈ったらね」
「かなりいいね」
「そうだね、じゃあ日笠さんに」
先生は皆のお話を聞いてすぐに言いました。
「トミーに王子にそれにお静さんだけにね」
「いや、トミー達には別に」
「いいと思うけれど」
「日笠さんだけにね」
「お土産ならね」
「そうなのかな、僕としてはね」
公平な先生としてはです。
「是非ね」
「だからそうじゃなくてね」
「皆に贈るんじゃないの、こうした時は」
「日笠さんだけでいいの」
「勿論トミ―達にもお土産は必要だけれど」
「贈るべきよ」
「けれどこうした時は」
どうしてもというのです。
「やっぱりね」
「考えて贈るべきでね」
「日笠さんにだけ贈るものがあっていいの」
「ここ物凄く重要だから」
「いや、贔屓したりは絶対に駄目だよ」
こうした時も公平な先生なのですがわかっていないといけないことはわかってはいません。
「皆も贔屓は嫌だよね」
「まあそれはね」
「僕達も先生が誰かを贔屓にするの観たくないよ」
「それで僕達が邪険にされるのも」
「僕達の誰かが贔屓されても」
「そういうのは嫌だよ」
「そうだよね、僕は贔屓はよくないと思っているよ」
このことは絶対にです。
「贔屓も差別も正しい行いじゃないよ」
「そうだね、ただね」
「この場合は贔屓じゃないの」
「その辺りトミーも王子もわかるから」
「特にお静さんはね」
「だからいいのよ」
「そうなのかな」
何もわかっていないまま応えた先生でした。
「やっぱり公平に、それに礼儀としてね」
「だからそういうのじゃないの」
「そういうのとは別のお話だから」
「テキストは万葉集よ」
「この場合はね」
「何でそこで万葉集が出るのかな」
先生は石舞台を観つつ首を傾げさせました。
「一体」
「いや、それはね」
「誰でもわかるち思うよ」
「普通にね」
「それでね」
「いや、わからないよ」
先生の返事は皆が予想した通りでした、ですが。
まあ今はこれ以上お話することは止めてと思ってです。先生にあらためて言ったのでした。
「とにかく埴輪買おうね」
「日笠さんにね」
「他の人には買わないで」
「そうしようね」
「何かよくわからないけれど皆がそこまで言うなら」
それならと返した先生でした。
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