儚き想い、されど永遠の想い
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274部分:第二十話 誰にも言えないその九
第二十話 誰にも言えないその九
「有り得ないな」
「ではどうしてだ?」
「何故そうなっているのか」
「ううむ。どうも」
「わからないな」
「そういえばです」
ここでだ。義正はふと言った。
「妻は前に病院に行ったそうです」
「病院にか」
「そこにか」
「はい、その婆やさんと共にです」
このことを思い出してだ。兄達に話すのだった。
「それで脚気について尋ねたとか」
「脚気!?」
「あの病気にか」
「そうです。脚気についてです」
このことを兄達に話す。するとだ。
二人はだ。怪訝な顔になりこう弟に話した。
「おかしいな」
「そうだ、おかしい」
「おかしいといいますと」
「もう脚気のことはわかっている」
「自明の理の筈だ」
こう話すのだった。義正に対して。
「脚気は栄養の問題でなるものだ」
「そんなことは既によく知られている」
「事実は日露戦争ではっきりした」
「麦に豚肉を食べればいいことだ」
そうしたことで治ることはだ。もうこの時代には知られていた。
それでだ。二人も話すのだった。
「だから特にだ」
「聞くまでもないのではないのか」
「確かに」
兄達の話を聞いてだ。義正もそのことに気付いた。
「前にもう脚気の話を妻としたことがあります」
「それなら余計にだ」
「何故脚気のことをわざわざ聞きにいくのか」
「それがわからない」
「確めるにしても妙だ」
「そうですね。ではどうしてでしょうか」
義正は余計にいぶかしむ顔になってだった。
そのうえでだ。再び兄達に問うたのである。
「これは一体」
「おそらくはです」
ここでだった。これまで黙っていた義美がだ。兄に言ってきた。彼女も兄弟の話し合いに加わってだ。そのうえで話を聞いていたのだ。
そして話が一段落したところでなのだ。義正に言ってきたのだ。
「病のことをお伺いしたことはです」
「それは間違いない?」
「人は理由もなく病院に行ったりはしません」
義美はこのことから考えて話すのだった。
「だからです」
「病気について聞きに行ったのは間違いない」
「はい、それは確かでしょう」
そのことは間違いないというのだ。
そのことを確かとしてからだ。義美はさらに話す。
「そして問題はです」
「どの病気なのか」
「はい、そのことです」
まさにだ。それがだというのだ。
「どうした病なのかです。そして」
「そして?」
「真理義姉様は」
彼女から見て真理はそうなる。その彼女がどうかというと。
「その病にかかっておられるかどうか」
「そのことを気にしていて」
「悩み暗くなっているのでしょう」
こう読んでだ。兄に話をするのだった。
「そうだと思います」
「そうだったのか。病に」
「そしてその病は」
自分で言いながらだ。義美は。
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