真田十勇士
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巻ノ百二十三 山を出てその五
「来ぬ限りはな」
「こうした時はですか」
「わかっておってもな」
幸村は大助の問いにすぐに答えた、妻子は十勇士達が守っている。
「それでもな」
「大坂に行くことをですか」
「優先させるのじゃ」
「気になっていてもですか」
「何時何処におるかは完全にわかっておいてな」
「そのことはですか」
「絶対じゃ」
相手の居場所はというのだ。
「そしてどの者かもな」
「わかっていて」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「先に進むのじゃ」
「倒さずともよいのですか」
「倒していてはきりがないし今はな」
「大坂にですか」
「行った方がよい、大坂で戦になるのは近い」
そうした状況だからだというのだ。
「それでな」
「今はあえて」
「構わずな」
「大坂にですか」
「行こうぞ、そしてな」
「大坂に行く為に」
「伊賀者達に来られる前にな」
攻められない為にもというのだ。
「ここはじゃ」
「真田の忍道にですか」
「入るぞ。よいな」
「わかり申した」
「妻子達が気になるが」
忍道に慣れていないというかはじめて入る彼等も見て言った。
「しかしな」
「それでもですか」
「ここはじゃ」
あえてというのだ。
「あの道に入る」
「そしてすぐに大坂に」
「向かうぞ」
「はい、それでは」
大助が応えた、そしてだった。
不意にだ、一行はというと。
姿を消そうとした、だが。
すぐにだ、十勇士達が幸村に囁いた。
「殿、やはりです」
「波の忍達ならともかく」
「相手が相手です」
「十二神将達が相手では」
「どうにも」
「そうか、ではな」
幸村は彼等の言葉を聞いて言った。
「仕方がない」
「このままですか」
「一戦を覚悟し」
「そのうえで、ですな」
「大坂まで行きますか」
「そうしようぞ」
こう言うのだった。
「今はな」
「はい、では」
「その間我等がです」
「お守りします」
「何があろうとも」
妻子達もというのだ。
「ですからこのままです」
「大坂に向かいましょう」
「それも胸を張って」
「百々と」
「城入りもまた武士の晴れ舞台」
だからと言う幸村だった。
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