インフィニット・ゲスエロス
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11話→放課後②機械の国のアリス
前書き
スマホが壊れ、ショップで直してもらいました。
遅れて申し訳ありません。
一般家庭では見慣れない赤絨毯の上で、お手伝いさんに配膳されながら飯を食う。
これが、金持ちの食事というものか。
なるほど、分からん。
庶民的な食事に慣れているからか、いまいちこの食事の価値が分からない俺は、小声で呟いた。
「ご馳走してもらうのはありがたいが、なんか慣れないんだよなぁ」
外出先での食事も多く、テーブルマナーに関しては特に苦手な訳ではないが、庶民である俺としては、飯を喰う時には箸オンリーの方が落ち着くんだよな。
と、考えを巡らせていると、端と気づいた。
俺、束に今回の一夏の飯の手配頼んだっけ。
少し慌てて、束の方に向き直る。
「束、話は変わるが、一夏に確認の連絡した?」
「話題変換が唐突だね~。で、一夏くんなら、箒ちゃんがちゃんと篠ノ之の家に連れていってるから大丈夫だよ~」
マイペースに皿の肉を片付けた束が、のんびりと返す。
いや、流石にちゃんとしているといっても一夏は小学生。
中身暗黒を自認する俺も、夕飯ちゃんと食べてるかの確認くらいはするわ。
「なら大丈夫だな」
ほっと胸を撫で下ろすと、目の前のジンに水を注いだメイドが、ゆっくりとこちらに向かってくる。
「お水はいかがでしょうか?」
そう伺うのは、金髪のメイド、神千雨(ジンチサメ)さん。
同じ名字だが、ジンとは血が繋がっていない。
クロトと違い、一目で分かるほど、彼女の容姿は日本人離れしていた。
豊かな金髪を後ろに流し、メリハリの利いたと言うには余りにもワガママボディーをメイド服に押し込めている。
その赤い瞳と合わせて、彼女が日本人で無いことは容易に理解できる。
親父さんの話では、10年ほど前に仕事の関係で引き取ったらしい。
「頂くよ。ありがとう」
「どういたしまして。太郎様」
短く感謝の意を表すると、水を注ぎながら返事が返される。
何時ものように礼を言う太郎、その手元には、何時置かれたのか不明のメモ。
フォークを皿の横に置いたときに気づいたそれを、太郎は器用に小指を引っかけて開ける。
メモには短く、こう書かれていた。
『夜12時に、社長室へ。神時法(ジントキノリ)』
あーあ、よりによって、社長呼出かよ。貴重なサボりタイムが……。
表情にでないように、心の中で短く文句を足らしながら、太郎は残りの飯を片付けた。
さて、いよいよ『アリス』とご対面か。
食事を終えて、ジンの部屋のドアを開けると、中から早速、歓迎の声がかけられた。
『いらっしゃいませ!』
一時期世間を賑わせた、電子の歌姫のような声が、歓迎の意を告げる。
電子で構成された、立体的な少女。
金髪のロングヘアに、青と白で彩られた服を着る十代前半の姿は、確かに美しかった。
まあ、俺は抱けない女にあまり興味はないが。
正式名称、自立型試作IS『アリス・リデル』
新型機『白騎士』に乗り換えたことにより余ったプロトタイプIS『白』に、束の知識欲とジンのニーズを乗っけたこの機体は、予想以上のジンの歓迎とコミュニケーションにより、最近では、こちらもびっくりするような反応をするようになった。
『お久しぶりです。束お母様。太郎お父様』
「ああ、アリスも元気そうでよかったよ」
この呼び方も、束が好んだ呼び方を学習し、つい先日から呼び始めたものだ。
全く、母娘揃って優秀だよ。
僅かに心に刺さった嫉妬の針を抜きながら、太郎は笑顔で答えた。
「おおっと、いくら親友とはいえ、アリスちゃんとこれ以上近づくのは無しだぜ太郎~、篠ノ之さんもなあ~」
と、ここでいつものジンのインターセプトが発生する。
いや、気に入っているのはうれしいんだが、執着心やばくね。
もしクラスメイトがこの姿のジンを見たら別人だと思うに違いない。
そう断言できるほど、ジンの変貌は劇的だった。
まあいい、今回は束がシステム上のチェックをしたいだけで俺は特に用はない。
アリスと束、二人と数度話した後、ジンに声をかけて部屋から出た。
廊下を歩きながら、ポケットに入れたメモをもてあそぶ。
それにしても夜中に呼び出すとは。社長はまともなタイプだと思ったが……
ま、深く考えてもドツボにはまるだけ、それよりも問題は、千冬と戦ってからたぎっているこの体の冷まし方である。
表面上冷静を装っていても、千冬との闘争は想像以上の充足感と興奮をくれた。
こいつは一発、いや何発かきめなきゃ収まらねえ。
(約束の12時まで、5時間程度、何ラウンドか千冬とすましてから行くか)
そう一人ごちながら、太郎は客間の方へ向かった。
後書き
太郎は凡才。千冬、束は天才。分かってはいても、納得はできず。
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