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儚き想い、されど永遠の想い

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253部分:第十九話 喀血その五


第十九話 喀血その五

「それはです」
「いや、事故といってもだよ」
「事故といっても?」
「私はそこまで遠くに出るつもりはないし」
「遠くにはですか」
「神戸をドライブするだけで」
 本当にだ。それだけで終わらせるつもりだった。それでだ。
 彼は穏やかにだ。ばあやを説得する様にして話すのだった。
「そんな。危うい道は」
「通らないと」
「だから大丈夫だよ」
「そうはいってもです」
 まだ言う婆やだった。彼女にしてもここは引けなかった。
 それでだ。今度はこう言うのだった。
「ご注意が必要です」
「じゃあやっぱり」
「はい、慎んで下さい」
 こう言って引かない。婆やも。
「楽しまれることはどんなことでもできますから」
「しかしだね」
「あの、婆や」
 義正と交代する形でだ。今度は。
 真理が言ってだ。それでだった。
「私達はです」
「お嬢様、ですが」
「私達はそんなに危険な場所には行きません」
「私もそれはわかっているつもりだから」
 真理の助けを得た形でだ。また言う義正だった。
「速度も出さないしね」
「だからだと仰るのですね」
「別にいいんじゃないかな」
 義正はここでは少しおずおずとした態度になって婆やに言った。
「それは」
「ですがそれは」
「私もです」
 まただ。真理は言った。
「一度義正様の運転される車で、です」
「ドライブを楽しまれたいのですね」
「そうです。ですからどうか」
「しかしです」
 婆やは真理に言われても動こうとしない。しかしだった。
 ここでだ。佐藤がだった。
 考えを軟化させたのか、それでだ。
 婆やにだ。こう言ったのである。
「旦那様がそう言われるのならです」
「いいのではというのですね」
「旦那様も真理様もです」
 義正だけでなくだ。真理もだった。
「子供ではありませんし」
「しかしです」
「今回ばかりはいいではないでしょうか」
 佐藤はまた婆やに言った。
「それは」
「佐藤様はそう言われるのですね」
「最初は違いましたが」
 それでもだというのだ。今は。
「やはり」
「ううむ。どうしたものでしょうか」
「御願いします」
「どうか」
 また頼む二人だった。
「私達も」
「決して危険なことはしませんし」
 それは確かだというのだ。彼等にしても。
「だからここは」
「何とか」
「そうですね」
 あまりにも強く頼まれ。そうしてだった。
 婆やもだ。仕方ないといった顔になりだ。
 
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