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真田十勇士

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巻ノ百二十二 集まる豪傑達その七

「その御仁のお話をです」
「聞くべきか」
「それがしなぞよりも遥かに知恵のある方」
「そうか、わかった」
 一応こう応えた茶々だった。
「ではな」
「真田殿が来られたら」
「その話聞いて」
 そしてというのだ。
「決めようぞ」
「決められますか」
「うむ」
 後藤の剣呑になった問いにそれが何故か気付くことなく答えた。
「そうじゃ」
「そうなのですか」
「何かあるか」
「この戦右大臣様が総大将ですな」
「そうじゃ」
「そうですか」
 後藤は茶々の話を聞いて述べた。
「わかりました」
「何かあるのか」
「いえ、それがしは武士」
 後藤は茶々にこう返した。
「ですから」
「よいのか」
「はい」 
 こう言うだけだった、今は。
「そうであるなら」
「わからぬことを言うのう」
 茶々は気付かぬまま首を傾げるだけだった、そしてだ。
 その話をしてだ、ここでだった。彼は茶々の前から退いてから自身の家臣達に真剣な顔で言ったのだった。
「お主達何かあればな」
「戦に敗れる」
「その時はと言われますか」
「うむ、落ち延びてな」
 そしてというのだ。
「生きよ、よいな」
「やはり敗れますか」
「この戦大坂方は」
「そうなりますか」
「そうならないではな」
 到底、というのだ。
「いられぬわ」
「左様ですか」
「やはり噂通り茶々様が全て決められるので」
「それを誰も止められないので」
「だからですか」
「それで、ですか」
「そうじゃ」
 実際にというのだ。
「わしもそれを今見たわ、これでは大坂がここまでなるのも道理でじゃ」
「そして敗れることも」
「それもですか」
「道理である」
「そう言われますか」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「そしてな」
「敗れた時は」
「その時はですか」
「我等に落ち延びよと」
「そう言われますか」
「うむ、どうせわしは死に場所を求めておった」 
 後藤は家臣達に清々しい笑みで述べた。
「ならばな」
「それではですか」
「殿はここで死なれる」
「そうされますか」
「この城を枕とされて」
「そうされますか」
「うむ、しかしお主達は生きよ」
 こう言うのだった。
「わしに殉じることはない、だからな」
「はい、しかしです」
 一人が後藤に言ってきた。
「我等は殿の家臣です、ですから」
「ここまで来たのです」 
 別の家臣も言ってきた。 
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