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報復

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第四章

 そしてだ、項羽は秦が滅亡してから西楚の覇王となり天下の覇者となったがすぐに漢の劉邦と争い。
 勝ち続けたが垓下の戦いに敗れ最後は二十六人を従えるのみとなった、だが漢軍に囲まれながらも。
 数百人を殺して自ら首を切って果てた、そして冥界に行き自ら白起のところに出向いて彼に言った。
「わしの最期を見たか」
「全てな」
 白起は冥界でも胸を張る項羽に彼も胸を張って応えた。
「見せてもらった」
「これがわしの貴様へしたことの全てだ」
「お主の国の陵墓を焼いたわしのか」
「兵を殺し生き埋めにした貴様へのな」
「わしがしたことを秦にそのまま返してか」
 憎い秦へのだ。
「そしてか」
「そうだ、その死もだ」
「わしの様に一人死ぬのではなくか」
「最後まで戦い多くの敵を倒してだ」
 そのうえでというのだ。
「貴様以上の自害をしてやったわ」
「その首を漢にいた楚の者にくれてやったそうだな」
「手足もな」
 死んだその場で漢の兵達は功績を奪い合い項羽は首だけでなく手足も奪われ五人はそれぞれ功績を分け与えられ諸侯に封じられたのだ。
「貴様は誰を諸侯にした」
「しておらん」
 仕えた秦にその功績と実力を恐れられ一人死んだ、それが白起の結末だった。
「誰もな」
「しかしわしは諸侯を作った」
 その死においてというのだ。
「貴様以上の死を遂げてやったわ」
「だからわしに勝ったというのか」
「貴様がしたことを全て貴様以上にしてやったわ」
 笑って白起に言うのだった。
「その有様を全て見せてやったわ」
「そしてわしを越えたか」
「そうだ、貴様もそう思うな」
「うむ」
 白起は偽らず項羽に答えた。
「わしはお主以上には勝っておらんし最期もそうではなかった」
「墓を焼いたことも生き埋めもだな」
「貴様より派手ではなかった」
 項羽は始皇帝の巨大な陵墓も他の王の陵墓も宮殿も焼いた、秦の王族も皆殺しにした。そして生き埋めも白起は実は四万程だったが項羽は実際に二十万程だった。
「お主は最後は負けたがその最期も見事だった」
「では貴様より遥かに上だな」
「そうだな、わしの名も歴史に残ったが」
 しかしと項羽に言った。
「お主の名はわし以上の伝説になるだろう」
「その戦ぶりでだな」
「西楚の覇王としてな」
 所詮は一将軍であった白起と違いというのだ。
「そうなるであろう」
「ではな、わしは貴様を遥かに超えたことを誇りとしてだ」
「これから冥界で暮らしていくか」
「そうする、しかし亜父には詫びて」 
 話を聞かなかった軍師であった范増にというのだ。
「劉邦めが来たらな」
「また戦をするか」
「今度は勝つわ」
「わしはもう戦うつもりはない」
 死んで尚意気を見せる項羽を前にしてだ、白起は彼に言った。
「その分だけでお主はわしより上だ」
「ははは、そうであろう」
「お主はわし以上の武の者じゃ」
 白起は項羽の報復を完全に受けて敗れたと実感した、そうして項羽を見送った。項羽は今も胸を張っていた。それは西楚の覇王の呼び名に相応しいものだった。


報復   完


              2017・7・16 
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