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馬鹿兄貴の横暴

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第八章

 それでだった、七海は家でその兄に言うのだった。
「何か大輝君がお兄ちゃんの弟子みたいになったわ」
「見所のある奴だ」
 大輝は妹に強い声で返した。
「あいつなら御前を任せられる」
「何だかんだでお兄ちゃんのペースじゃない」
「あいつが乗った」
 その大輝がというのだ。
「だからあいつに言え」
「言ってるわよ、けれどね」
「それでもか」
「全く、お兄ちゃんの言う通りの展開なんて」
「それが嫌か」
「もっと静かに普通に交際していきたいのに」
 七海は平凡な高校生の交際を考えていた、だがそれを兄に乱されて幾分違うものになっていて言うのだった。
「困るわ」
「安心しろ、悪い様にはしないからな」
「もう充分悪いわよ、けれど言ってもよね」
「俺は御前の為なら死ねる!」
 何処かの恋愛漫画のキャラクターみたいなことを言い出した。
「何があってもな!」
「何処の愛と誠よ」
「面白い漫画だぞ」
 伸也の自室兼仕事部屋に全巻ある。
「この台詞言った奴は大好きだ」
「岩清水さんね」
「そうだ、そしてな」
「私の為に死ぬっていうの」
「あいつもそうなった、それが恋愛ってものだ」
 相手の為に死ぬそれもというのだ。
「そこまで想われていいな」
「大輝君の場合はそうよ」
「俺はどうなんだ」
「正直願い下げよ」
 実にあっさりとだ、七海は伸也に醒めた目で返した。
「だからもう私達、私のことは放っておいて」
「まだそう言うのか」
「何度もね、程々にしておいてね」
「程々?」
「そう、ある程度なら許してあげるからね」
 右手で頬杖をついて兄から顔を背けて言った。
「あくまでね」
「程々ならいいのか」
「その気持ちだけは認めてあげるから」
 こう言うのだった、左目は瞑って右目を横目にして兄を見つつ。そのうえでその兄と対しつつ大輝と交際していった。横暴な兄のそれをかわしながら。


馬鹿兄貴の横暴   完


                  2017・7・20 
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