二本足の犬
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第三章
「わかったわ」
「そうしたことでわかるんですか」
「華やかだから」
それでというのだ。
「もう見せるって感じでね」
「それでわかるんですか」
「身近にいつも見せたいと思う相手がいればね」
「メイクや服装も違うんですね」
「見せ方が事務的になるのよ」
「ただそうしているだけで」
「けれどそうした相手がいたらね」
華やか、それになるというのだ。
「そうなるのよ」
「そうなんですね」
「美祐ちゃんはそうした感じだから」
「わかったんですか」
「仲良くしなさいね、私もそうしてるし」
「むしろ博士にそうした人がいることに驚きです」
「あら、私って家庭的なのよ」
吉能は笑って美祐に返した。
「家事はいい気分転換になるしね」
「私も家事はしますけれど」
「私の場合は意外なのね」
「そんな感じに見えないので」
研究一辺倒だと思っていたのだ、むしろマッドサイエンティストだとさえ思っていたのは内緒だ。
「ちょっと」
「けれど私もそうした人いるから」
「そうなんですね」
「結婚して赤ちゃんもね」
「それ私もですよ」
美祐は意外な一面を語った吉能に今は優しい笑顔で返した、そしてその話が終わってからだった。
吉能は論文を書いてそうしてだった。
論文と共にそのクドリャフカを発表した、すると学会だけでなく世界も驚きに包まれ議論にもなった。
「これはいいのか?」
「犬をそうして」
「二本足で歩かせて」
「人間がそこまでしていいのか」
「神への冒涜ではないのか」
「今後悪用されないか」
「悪い風に発展していかないか」
色々な意見が出た。
「これは大丈夫か」
「まずいことにならないか」
「動物の身体をそう改造して」
「していいことなのか」
「どうなのだ」
こう話していた、その議論を聞いてだ。
美祐は困った顔でだ、当の吉能に言った。
「あの、ご存知だと思いますけれど」
「面白いことになってるわね」
「面白いじゃないですよ」
それこそというのだ。
「大騒ぎじゃないですか」
「いいことね」
「何処がいいんですか」
美祐は怒った顔で吉能に返した。
「悪用出来るんじゃないとか」
「言う人もいるわね」
「変な風に進化させて」
「前足を手にしたり喋られる様にしたり」
「実際に博士が言われるみたいに」
「色々考えられるわね」
「実際にそうする話が出たらどうするんですか」
「そこよ、そこ」
吉能はにこりと笑ってだ、美祐を指差す様な仕草で言った。
「まさにね」
「まさに?」
「そう、まさにね」
そこがと言うのだ。
「いところなのよ」
「と、いいますと
「だから、そうしてどう悪用されるか考えるわね」
「考えられていますよ」
「そこがいいんじゃない」
まさにというのだ。
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