同じこと

「交代してそれぞれ大変だったけれど」
「そうだね、慣れていなかったし」
「結局はあれね」
「あれって？」
「同じことね」
　こう言うのだった。
「家事をやったってことは」
「ああ、そのことはなんだ」
「一緒よね」
「そうなるね」
　賢章も天のその言葉に頷いた。
「言われてみれば」
「そうよね」
「結局家事をしないとね」
「お部屋も御庭も奇麗にならないし」
「洗濯もお買いものも出来なくて」
「お料理もね」
　そうしたもの全てがというのだ。
「何も出来ないわね」
「そうだね」
　本当にというのだ。
「家事もしないとね」
「それも夫婦ならね」
「分担しないとね」
　共に住んでいるのならというのだ。
「どうしようもないわね」
「そうだね、仕事を交代してもね」
「やっぱり家事はしないとね」
「どうしようもないね」
「それは同じことなのよ」
「誰がやっても」
「まずは家事をすることよ」
　何といってもというのだ。
「本当にね」
「そういうことだね、それでまだ交代したままでいくのかな」
　賢章は笑って天に尋ねた。
「それで」
「いえ、もうね」
「終わりだね」
「そうしましょう、同じことでもね」
「慣れないとだね」
「どうにも苦しかったわ」
　だからだとだ、天は賢章に答えた。
「だからね」
「もうそれは止めて」
「元に戻りましょう」
「そうだね、やらないと駄目で」
「やるのは同じことでも」
「慣れている、合うことの方がいい」
「そういうことよ」
　御飯を肉じゃがで食べつつだ、天は夫に言ってからだ、今度はこんなことを言ったのだった。
「後ね」
「後？」
「この肉じゃが少しお塩多いわね」
「そうかな」
「そう、お塩がね」
　それがというのだ。
「そんな感じよ」
「そういえばそうかな」
　言われてだ、賢章も否定出来なかった。
「塩辛いかな」
「やっぱりお料理もね」
「慣れている人がやると一番いい」
「同じでも中身が違う」
「そういうことだね」
「じゃあお料理は任せてね」
「こちらはお庭をね」
　二人で笑顔で話した、家事を交代してだった。二人はあらためてわかったのだった。家事のそのことを。


同じこと　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　２０１７・６・２３